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福を呼び込む「縁起のよい観葉植物」カンノンチクをモダンに楽しむ! 失敗しない栽培の極意

  • 2025.12.19

カンノンチク(観音竹)は、福を呼び込む縁起のよい植物。耐陰性や耐寒性に強く、室内で育てるのに最適な観葉植物です。日本には江戸時代に導入され、古典園芸植物として栽培されてきた歴史がありますが、そのたたずまいはエスニック風や洋風など、現代のインテリアに合わせても新鮮でモダンな印象を与えます。この記事では、室内で美しく、失敗なく育てるための具体的な栽培環境や日常の手入れの極意を栽培のプロが解説します。

カンノンチクの基本情報

カンノンチク
Eny Strawberry/Shutterstock.com

植物名:カンノンチク
学名:Rhapis excelsa
和名:観音竹
英名:レディパーム、バンブーパーム
科名:ヤシ科
属名:カンノンチク属(ラピス属)
原産地:中国南東部
形態:低木

幹や葉が竹類に似ているため竹がつく和名で呼ばれますが、ヤシの仲間の低木です。カンノンチクの日本への導入は江戸時代といわれ、古典園芸植物として栽培されてきました。耐寒性と耐陰性がともに強いので、現在でも室内に最適な和風の観葉植物として親しまれています。また、福を呼び込む縁起のよい植物とされ、祝い事などに鉢植えが贈り物にも利用されています。海外ではヨーロッパをはじめ、アメリカでもインドアプランツとして人気があり、ショッピングモールなどでよく見られます。

主に中型~大型の鉢植えが流通し、品種も豊富で、古典園芸植物でもあることから高値で取引される品種もあります。よく似た仲間にシュロチクがありますが、葉がより細く先端も尖る点で違いがあります。

日本には、昭和22年から続くカンノンチクとシュロチクの愛好家の団体、「日本観棕会」があり、団体では、カンノンチクとシュロチクを合わせて「カンソウチク(観棕竹)」と呼んでいます。日本観棕会は、展示会の開催や新品種の作出、品種保存などを行って観棕竹の普及に尽力しています。

日差しを浴びながら、風にそよぐカンノンチク。ArtBackground/Shutterstock.com

カンノンチクの特徴・性質

カンノンチク
Sakonboon Sansri/Shutterstock.com

園芸分類:観葉植物
樹高:1~3m
耐寒性:やや弱い
耐暑性:強い

山地の木々に覆われた谷沿いなどに自生し、強い直射日光を避けた湿り気のある場所を好みます。雌雄異株で、地下茎から子株が出て株立ちします。葉は6~10裂して掌状になり、常緑で艶があります。

熱帯地域で地植えすると3~4mほどの高さになりますが、鉢植えにすると成長が遅く大きくはならないので、室内で楽しむ観葉植物に適しています。

カンノンチクの仲間

カンノンチクの仲間は、中国南部からインドシナに11種類が知られています。また、カンノンチクは園芸品種が多く、葉に斑が入らない「緑葉系」と、葉に斑が入る「斑入り系」に分けられます。

カンノンチク ‘綾錦’ Rhapis exelsa ‘Aya-nishiki’

カンノンチク ‘綾錦’ Rhapis exelsa ‘Aya-nishiki’

昭和に最もよく流通した斑入りの品種 ‘瑞晃錦(ずいこうにしき)’の芽変わりから作出されました。葉に黄白色の縦斑が安定して入り、性質も丈夫です。

シュロチク(棕櫚竹) Rhapis humilis

シュロチク
nut_foto/Shutterstock.com

カンノンチクと似ていますが葉が細く、スレンダーレディパーム(Slender lady palm)の英名があります。中国南部原産で、カンノンチクと同様に亜熱帯地域の気候が適します。育て方はカンノンチクに準じます。ただし寒さにはカンノンチクより強く、マイナス3℃ほどの低温に耐えます。

品種はカンノンチクほど多くないですが、斑入りの品種などもあります。

カンノンチクの栽培12カ月カレンダー

植え替え:5~7月
肥料:5~10月
入手時期:4~11月

カンノンチクの栽培環境

カンノンチク
Galeh Nur Wihantara/Shutterstock.com

適した環境・置き場所

強い直射日光に当てると葉焼けするので置き場所には気をつけましょう。ただし暗すぎる場所に長期間置くと間延びして育ち、葉も少なくなります。

室内では、春と秋はレースのカーテン越しがよく、特に夏はカーテン越しの日光が当たる場所に置いてください。また夏の窓辺付近は温度が異常に上がることがあるので、窓から離れた場所に置くようにしましょう。

5~10月は屋外に出して育てることができます。春と秋は明るい日陰から半日陰、夏は明るい日陰に置いてください。乾燥を嫌うので、風当りの強い場所は避けましょう。

冬は室内の東向きの窓際など午前中だけ日光が当たる場所、またはレースのカーテン越しの日光が当たる場所に置いてください。屋外で秋に半日陰で管理していた株は、冬は窓越しの日光がよく当たる場所で育てるとよいでしょう。

生育温度

生育温度の目安は、10~30℃です。夏に明るい日陰で育てている場合は、35℃程度の猛暑でも問題なく育ちます。大株はマイナス3℃程度の低温になら耐えることもありますが、一般の鉢植えは3℃以下にならないように管理しましょう。なお、葉を美しく保つには室内で冬越しさせるのが好ましいです。関東地方以南の地域では、室内なら容易に越冬します。

カンノンチクの育て方・日常の手入れ

カンノンチク
porjai kittawornrat/Shutterstock.com

水やり

乾燥を嫌うので、水やりは大切な作業です。水不足になると葉先が枯れこむので注意してください。

春と秋は、鉢土の表面が乾いたらたっぷり与えてください。最も旺盛に発育する夏は、晴れた日は毎日与えてください。冬はやや乾燥気味に管理します。

肥料

5~10月に、3要素が等量の緩効性化成肥料などを規定量与施しましょう。

病害虫

風通しの悪い室内では、カイガラムシが発生することがあります。葉の付け根などに発生しやすいので、見つけ次第早めに防除します。カイガラムシは薬剤が効きにくいので、ブラシ等でこすり落としてから適用のある薬剤を使用するとよいでしょう。

カンノンチクの植え替え・株分け

植え替え
Anshann/Shutterstock.com

用土

水はけのよい清潔な用土が適します。観葉植物用の培養土は手軽に使用することができます。自分で配合する場合は、桐生砂7:赤玉土小粒3などの用土が適します。

真夏に乾燥が激しいと感じた場合は、表面にミズゴケなどを敷き詰めるとよいでしょう。

植え替え

地下茎が発達する性質なので、植え替えを怠ると土の隙間がないくらいひどく根詰まりします。根詰まりすると葉先が枯れこんだり、生育が衰えて葉も少なくなります。2年に1回以上は植え替えてください。

なお、乾燥を嫌うので、植え替えの作業は日陰で行ってください。また作業中は根を乾燥させないよう注意してください。

植え替え後2週間くらいは、乾燥しないように毎日水やりします。また葉水も与えて湿度を保つとよいでしょう。

大きな鉢に植え替える場合

根を切らないので、5~9月の長期間作業を行えます。根鉢を水につけ、古い土を落としてください。1~2回り大きな鉢に新しい用土で植え付けます。

同じサイズの鉢に植え替える場合、株分け

2つに株分けして同じサイズかやや小さい鉢に植え替えます。根を切るので、作業は5月中旬~7月に行います。植え替えと同時に、葉全体の1~2割くらいの古い葉を根元から切るとよいでしょう。

カンノンチクの栽培ポイント

カンノンチク
funny face/Shutterstock.com

水はけのよい用土で植え、強い直射日光を避けた適度に明るい場所で水切れさせないように管理するのがポイントです。江戸時代から栽培されてきた植物なので、栽培は難しくありません。和風のイメージがある観葉植物ですが、エスニックや洋風などのインテリアと合わせても新鮮な印象です。

これまで、カンノンチクはあまり注目されることが少なく、愛好家も減ってきてはいますが、海外では人気がある植物のひとつです。古くて新しい観葉植物「カンノンチク」を、さまざまな飾り方で育ててみてください。

Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

おがわ・やすひろ/1988

年、東京農業大学農学部農学科卒業。千葉県館山市の植物園「南房パラダイス」にて観葉植物、熱帯花木、熱帯果樹、多肉植物、ランなど温室植物全般と花壇や戸外植物の育成管理のほか、園全体のマネジメントなどの業務に

18

年携わる。現在フリーランスとして活動。著書に『わかりやすい観葉植物』(大泉書店)、『ハイビスカス』(

NHK

出版)がある。

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