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古代の蜂が「哺乳類の遺骨」で子育てした証拠を発見

  • 2025.12.18
古代蜂が哺乳類の遺骨を育房にした証拠を発見 / Credit:Lázaro W. Viñola-López et al., Royal Society Open Science(2025), CC BY 4.0

ハチといえば、六角形の穴があいた巣に子どもを産んで育てるイメージを持っている人も多いでしょう。

しかし実際には、ハチの中には大きな群れを作らず、卵ごとに小さな「育房(いくぼう)」を用意して、そこで幼虫が育つ仕組みを取るものもいます。

アメリカのフロリダ大学(University of Florida)の研究チームは、ドミニカ共和国の洞窟に堆積した化石を調べる中で、古代のハチが哺乳類の遺骨にある空洞を利用して育房を作り、子育てしていた痕跡を報告しました。

研究の詳細は、2025年12月17日付の学術誌『Royal Society Open Science』に掲載されました。

目次

  • フクロウが残した「骨」を古代蜂が育房として使っていた
  • なぜ古代蜂の「育房」だと判断できるのか

フクロウが残した「骨」を古代蜂が育房として使っていた

舞台となったのは、ドミニカ共和国南西部の洞窟「クエバ・デ・モノ(Cueva de Mono)」です。

この地域は石灰岩の地形が広がり、陥没穴)や洞窟が多い一方、地表の土が薄い場所も少なくありません。

洞窟の中からは、齧歯類(げっしるい)を中心に、ナマケモノやトカゲ、カメ、ワニ、鳥などの脊椎動物の化石が大量に見つかっています。

堆積物は粘土層と炭酸塩の層が交互に重なる構造で、動物の骨が何層にもわたって含まれていたといいます。

では、なぜ洞窟の床にここまで骨がたまったのでしょうか。

研究チームが有力視したのは、絶滅した大型フクロウ(Tyto ostologa)の存在です。

このフクロウは約2万年前、この洞窟に生息していたと考えられます。

洞窟堆積物からこのフクロウ自身の化石も多く見つかっており、現生の近縁なフクロウ類が洞窟を隠れ家にする習性も踏まえると、長い期間にわたって「ねぐら」として使われていたのでしょう。

そしてフクロウが消化せず、吐き出されたものが骨の堆積を作った可能性が高いと言えます。

研究者たちは当初、こうした骨を手がかりに、当時の生態系を復元しようとしていました。

ところが、哺乳類の顎骨を洗浄し、歯が抜けた後の歯槽(歯の根元が収まっていた穴)を観察しているうちに、研究者は「普通の堆積ではなさそうだ」と感じる構造に気づきます。

歯槽の内部に詰まった堆積物の表面が、ただ土が入り込んだようには見えないほど滑らかで、わずかに凹んだ均一な形をしていたのです。

しかも同じ特徴が、複数の標本で繰り返し見つかりました。

偶然の詰まり方としては不自然で、むしろ「誰かが内部を整えた」ように見えました。

その直感を後押ししたのが、過去に別の化石調査で目にした、ハチやハチに近い昆虫が作る育房の痕跡です。

形の雰囲気が似ていたため、今回の奇妙な構造も、昆虫の巣に関係するのではないかと考えたのです。

そして調査を進めると、洞窟に堆積していた哺乳類の顎骨などの遺骨の空洞が、古代のハチにとっての育房として利用されていたことが見えてきました。

なぜそう言えるのでしょうか。

なぜ古代蜂の「育房」だと判断できるのか

研究チームは、骨を壊さずに内部構造を確認できるマイクロCTを使い、歯槽などの空洞の中身を立体的に観察しました。

その結果、空洞内には楕円形の小さな部屋があり、内壁が滑らかに整えられていることが確認されました。

さらに、同じ空洞の中に「世代の異なる育房」が重なって残る例もあり、同じ場所が繰り返し使われた可能性が示されました。

研究者は、これを巣場所への「戻り」を示す手がかりの一つとして扱っています。

また、電子顕微鏡などを用いた分析では、育房の内側が多層で、外からの染み込みが起こりにくい低透水性の構造になっていたことが示されました。

これは「ただ土が固まった」だけでは説明しにくい特徴です。

ちなみに、これは骨を削って穴を開けたという話ではなく、遺骨に元からある空洞(歯槽や歯の内部、椎骨の管など)を入れ物として使い、その内部に育房を作ったという行動です。

では、その作り手はどんなハチだったのでしょうか。

研究者は、育房のサイズ、形、内壁の滑らかさなどから、巣穴を掘るタイプの中型のハチが作った可能性が高く、候補としてコハナバチ科(Halictidae)を挙げています。

また、花粉粒はごく少量しか見つからなかったと報告されており、育房が実際に使われ、幼虫が成長して巣を出た結果として、食料として蓄えた花粉が残りにくい状況とも整合します。

この研究の意義は、奇抜な見た目だけにありません。

ハチの行動は、体そのものが化石として残りにくいため、過去を直接たどるのが難しい分野であり、今回のような行動の痕跡は重要な証拠となります。

洞窟で見つかった骨の山は、ただの捕食の残骸ではなく、別の生き物が次の世代を育てるために使い回した生活の舞台でもあったのです。

参考文献

These fossils were the perfect home for ancient baby bees
https://www.eurekalert.org/news-releases/1109802?

元論文

Trace fossils within mammal remains reveal novel bee nesting behaviour
https://doi.org/10.1098/rsos.251748

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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