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嫌なタスクのせいで脳は苦痛を感じている…MRI検査でわかった「先延ばしグセをやめる唯一で簡単な方法」

  • 2025.12.6

頭のなかに、「あれをやらなきゃ……」とずっと先延ばしにしているタスクはないだろうか。著述家のニルス・ソルツゲバーさんは「MRI検査によると、やるべきことを考えるだけで人の脳は苦痛を感じている。しかし驚くことに、嫌だと思うことでも実際に取りかかると、ストレスや不快感のレベルが下がったのだ」という――。

※本稿は、ニルス・ソルツゲバー著、弓場隆訳『科学的根拠で 先延ばしグセをなくす』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

脳のスキャンのイメージ
※写真はイメージです
「やらなきゃ」と思うこと自体がストレス

あなたが先延ばしにしていることに、共通することはなんだろうか?

それはあなたを不快にし、不安にし、とても面倒だと感じさせることだ。

やらなければならないことを考えるだけで、苦痛を感じているかもしれない。

もしそうだとしても無理はない。面倒なことについて考えるだけで、実際に苦痛を引き起こすからである。

ある研究者たちがMRI装置を使って調べたところ、面倒なことに取り組んでいる様子を想像するように言われたとき、被験者の脳のなかの苦痛を感じる部位が反応し、実際に苦痛を経験していることがわかった。

たとえば、税金の申告について考えると、実際に苦痛を感じる。仕事のあとで運動することについて考えると、実際に苦痛を感じる。論文を書くことについて考えると、実際に苦痛を感じるというのだ。

苦痛を感じるのが好きな人はいないのだから、先延ばしグセのある人がこんなに多いのも納得できるだろう。

考える→苦痛を感じる→先延ばしにする

苦痛を感じることに直面したら、私たちはどういう反応を示すだろうか?

おそらくそれから逃げようとするだろう。

不快な思いをするのは嫌だから、苦痛を感じることを先延ばしにしたくなる。

面倒なことについて考えても苦痛を感じない人がいる一方で、先延ばしグセのある人はなんらかのやるべきことについて考えるとすぐに気分が悪くなる。先延ばしグセのある人はある種のトラウマを抱えていて、それがなんらかのやるべきことに対するネガティブな連想につながるのだ。

面倒なことを苦痛に感じるのは避けられないが、先延ばしに適切に対処する術を身につけるのは自分でできる。

先延ばしグセで苦しんだことのある人なら、とにかくすぐやることが難しいと実感している。これは先延ばしグセのある人に共通する問題である。どんな理由であれ、先延ばしグセのある人はとにかくすぐやることができないのだ。

だが、朗報もある

少し脱線してしまったが、面倒なことについて考えるだけで苦痛を経験するという話に戻そう。あなたはふだんの生活でこの苦痛に気づいていないのかもしれない。

それらはたいてい無意識に起こるからだ。

たとえば、学校から帰ったら勉強しようという計画を立てていたのに、夜、床に就いたときに勉強しなかったことに気づくことがある。何があったのか?

潜在意識の働きが、あなたを苦痛から遠ざけたのだ。あなたを苦痛から逃げさせて快楽を追求させようとしたのだ。

そこで、あなたは快楽を得るために、しばらくテレビを見たり、ゲームをしたり、友人と外出したりしたのかもしれない。先延ばしグセが無意識にあなたを突き動かし、苦痛から逃れて快楽を追求するように促した結果だ。

このパターンが自分の人生で繰り返されているのを知るには、改善すべき行動を自覚するという気づきが必要になる。だが、朗報もある。

ソファに座りポップコーンを食べている男性
※写真はイメージです
「想像」から生まれる「苦痛」というまぼろし

ある研究によると、苦になることを先延ばしにしない簡単な方法があるのだ。

それは、事前にあれこれ考えないで、とにかくやるべきことに取りかかることだ。

やるべきことに取りかかった瞬間、その苦痛はあっさりと消える。

先延ばしの研究で知られるオークランド大学(ニュージーランド)の教育学者バーバラ・オークリー教授はこう言っている。

「私たちは苦痛を感じることを先延ばしにする傾向がある。MRI検査による複数の研究で、数学嫌いの子どもが数学の勉強を避けようとするのは、それについて考えるだけで苦痛を感じるからだとわかった。数学について考えると、苦痛を司る脳の中枢部分が反応するのである。

苦痛を感じるのは、それを想像するからだ。数学嫌いの子どもが実際に数学に取り組むと、その苦痛はすぐに消える」

じつに興味深い指摘である。

苦痛を感じるのは、想像によるものであり、面倒なことを実行することによるものではないということだ。

「やってみると意外に楽しい」は本当だった

嫌だと思うことによって引き起こされるネガティブな感情をやわらげたいなら、やるべきことを先延ばしにするか、さっさとそのことに取りかかるか、どちらかしかない。

とにかく取りかかれば、苦痛はすぐに消える。

さらに苦痛からの解放は、やるべきことに取りかかったことで生じる唯一の効果ではない。他の研究で、やるべきことに取りかかることが、そのこと自体に対する見方を劇的に変えることが指摘されている。

先延ばし研究の第一人者として知られる心理学者のティモシー・ピチル博士(カナダのカールトン大学教授)はこう言っている。

「驚いたことに、やるべきことに取りかかると、それ自体に対する被験者の認識に変化が見られた。月曜日、その課題はストレスのたまる面倒で不快なこととみなされていた。ところが、締め切り日である金曜日の朝、嫌でしかたがなかった課題に取りかかると、彼らの認識は一変した。ストレス、嫌悪感、不快感のレベルが著しく下がったのだ。

実際、多くの被験者は締め切り間際、作業をしているさなかに心境を聞かれると、『やってみると意外と楽しい』『もっと早く取りかかればよかった』『もう少し時間があったら、もっといい出来栄えになっていたと思う』と答えた」

気持ちの「切り替えスイッチ」を手に入れる

いったん取りかかったら、それまで「嫌でしかたがない」という理由で先延ばしにしていたことが、そんなにつらくはないことがわかる。

『科学的根拠で 先延ばしグセをなくす』
ニルス・ソルツゲバー著、弓場隆訳『科学的根拠で 先延ばしグセをなくす』(かんき出版)

先延ばしにしていたことは思っていたほど困難ではなく、面倒でもなく、ストレスのたまるものでもない。それどころか、やってみると意外と楽しくて面白いものだ。つまり、先延ばしグセのある人は思っているほど怠け者でも非生産的でもない。

そのうえ、やるべきことに取り組んで進歩を遂げることができる。進歩を遂げることは気分がいいし、自信がわいてくるし、勢いもついてくる。

取りかかるという小さな行為は波及効果をもたらし、上昇スパイラルを始動させる。いったん取りかかると、苦痛が消え、認識が変わって、ますます勢いがつくのだ。

これはニュートンの第一法則に似ている。すなわち、「静止している物体は静止状態をつづけ、運動している物体は運動をつづける」という慣性の法則だ。

これは「何もしない状態」から「何かをする状態」にスイッチを切り替えるということである。結局、先延ばしを克服するというのは、そういうことだ。

先延ばしグセを改善する最大の秘訣は、切り替えスイッチを入れるのがうまくなることである。すばらしいことに、スイッチの切り替えをするたびにすばやく取りかかれるようになる。

やる気がわかないという問題を克服し、「何もしない状態」から「何かをする状態」にシフトするたびに、それがうまくできるようになる。

面倒なことに取りかかるたびに、心理的抵抗を乗り越えて、気分が乗るかどうかに関係なく、やるべきことをやる勢いをつけることができるのだ。

ニルス・ソルツゲバー
起業家・著述家・ブロガー
かつては「筋金入りの先延ばし屋」だったが、科学的根拠にもとづく方法を何百冊もの自己啓発書から徹底的に学び、ついにその悪習を克服。生産的で満ち足りた人生へと変わる。ポジティブ心理学、睡眠、瞑想に精通し、執筆や心理学研究、そして世界中を旅することをこよなく愛している。

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