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「指が変だ」スペインで発覚。画材メーカーの販促物が…浮上した“疑惑”に公式が謝罪「心よりお詫び申しあげます」

  • 2025.12.15
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

近年、生成AIの進歩は目覚ましく、企業の広告制作やデザインの現場でもAIツールを使った業務の効率化が広まりつつあります。

そんな中、スペイン・バルセロナで開かれたマンガイベントに掲出されたサクラクレパスの販促ポスターが、「AIで作られたのでは」とSNSで指摘され、波紋が広がりました。

同社はすぐに社内調査を行い、グループ会社傘下の販売子会社が生成AI画像を含む素材を使っていたことが判明。二度にわたり経緯の説明と謝罪を行いました。

今回、問題視されたのは、“手で描くことの楽しさ”を伝えてきた画材メーカーがAI画像を採用していた点です。

AI活用が進む今、企業はどのようにAIとものづくりのバランスを取るのか…その問いをあらためて考えるきっかけとなったようです。

スペインでのポスター掲示が炎上のきっかけに

騒動のきっかけは、サクラクレパスが出展したスペイン・バルセロナのマンガイベントです。会場で展示された販促ポスターを見た現地の参加者から「画材の会社がAIでポスターを作るなんて…」と非難するコメントがSNS上に投稿され、瞬く間に拡散されました。

この反応を受け、同社は12月9日に公式ウェブサイトで「社内で事実確認を進めている」と報告。公式SNSでも「ご不信を招く結果となりましたことを、心よりお詫び申しあげます」と謝罪しました。

その後の第二報として、12月11日、問題のポスターに描かれたイラストが、グループ会社傘下の販売子会社によって制作されたものであり、生成AI画像を含む素材が使用されていたことを公表しました。

“画材メーカーとしてどうなのか”不信の声が続々

SNSの投稿では、「指の形が不自然で完全にAI画像に見える」「画材メーカーがAIを使って広告を作るって、クリエイターを軽視してない?」と指摘する声が見られました。

文化庁によると、生成AIを使った画像はそれだけで著作権侵害になるわけではありません。ただし、生成された画像によっては抵触するケースもあります。既存の作品に「類似」し、なおかつその作品を「依拠(既存作品を知った上で利用したか)」していると認められる場合は、侵害にあたるとされています。

今回問題になった画像そのものはただちに違法とはいえないものの、AIの「他者の作品を無断で学習データとして利用する点」自体を問題視する声もあります。著作権者の許諾なく利益を生み出す構造は「ただ乗り」ではないかとの指摘もあり、クリエイターの努力や経済的価値を軽視しているとして、たびたび批判されています。

一方で、AI画像の使用を認めた第二報の発表後は、「すぐに確認して謝罪した姿勢は誠実だと思う」「詳細を明かしたのは評価できる」「AIについて言及が少ないのは気になるが、対応としては妥当」など、企業の対応を評価する声もあがっていました。

AIとものづくり、問われるバランス感覚

今回の件は、企業が広告や販促物に生成AIを使う際、「法的に問題があるかどうか」だけでなく「企業の理念やブランドイメージとしてふさわしいか」が重要であることを示した出来事でした。

サクラクレパスも「今後も画材の提供を通じて皆様の創作に寄り添い、“創作の源泉”を支えることを大切にしてまいります」とコメントしており、画材メーカーのように、クリエイターが“自らの手で描く価値”を扱う企業の場合は特に、より慎重な姿勢を求めるユーザーが多いことがわかりました。

今回の一件は、技術の進化と向き合う中で、「便利さ」と「その企業らしさ」のバランスをどう保っていくべきか、改めて考える一つのきっかけになったのではないでしょうか。


参考:
第一報 該当販促物についての正式見解(株式会社サクラクレパス)
第二報 当該販促物に関する事実確認の結果(株式会社サクラクレパス)
AIと著作権について(文化庁)
AI と著作権に関する考え方について(文化審議会著作権分科会法制度小委員会 )