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近隣住民「民泊施設と間違えて」宿泊者が無断で…鎌倉で泥沼化する悪質な“民泊公害”に悲鳴

  • 2025.12.16
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

観光地として人気の高い鎌倉市で、民泊施設が急増しています。

神奈川県所管域の民泊施設のうち35%超が鎌倉市に集中する一方で、宿泊者による騒音やごみ問題など、周辺住民とのトラブルも増加しています。

こうした状況を受け、鎌倉市は2025年12月、「鎌倉市における住宅宿泊事業に関するガイドライン【鎌倉市民泊ガイドライン】」を策定し、公開しました。

鎌倉市で実際に起きている民泊トラブル

鎌倉市によると、市民から寄せられた主なトラブル事例として、深刻な問題が複数報告されています。

「宿泊者が夜遅くまで屋上やデッキ等で大騒ぎしている。標識に掲載されている連絡先へ連絡しても民泊事業者に連絡が付かない」「宿泊者が騒ぐ、施設の照明が明るすぎる。このことを民泊事業者へ連絡したところ営業妨害と事業者に脅迫された」など、騒音に関する苦情が目立ちます。

また、ごみ処理についても「宿泊者がクリーンステーション(ごみ集積所)にごみを捨てている」「民泊施設の前に、ごみを放置(生ごみ混入)しているため、カラスに荒らされごみが散乱している」といった事例が報告されています。

さらに、「宿泊者が民泊施設と間違え、自宅敷地内に無断で侵入してきた」「路上喫煙とたばこのポイ捨てをしている(火災への不安)」など、安全面での不安も寄せられています。

市が2025年3月に実施した自治会町内会長へのアンケートでは、回答率が72.7%と高く、民泊への関心の高さがうかがえました。半数以上が民泊に不安があると回答し、「市内での民泊反対」「事前に周辺住民に対し説明会を開催してほしい」といった意見が出されたといいます。

事業者に求められる配慮事項

ガイドラインの第4章「民泊開業後の遵守事項」では、事業者が配慮すべき具体的な事項が示されています。

騒音防止については、民泊施設および周辺で大声での会話を控えること、夜遅くまでバルコニー等屋外での宴会や室内の話し声が外に聞こえるような宴会は行わないこと、深夜は窓を閉めることなどが求められています。

ごみ処理に関しては、民泊に伴い排出されるごみは「事業系ごみ」として扱われるため、家庭ごみとして地域のクリーンステーション(ごみ集積所)に排出することは適切ではありません。ガイドラインでは、事業者は宿泊者が出したごみをクリーンステーションに排出することのないよう説明することが求められており、廃棄物処理業者に委託するなど、法令等に基づき適切に処理する必要があるとされています。

火災予防については、火気使用器具に関する注意喚起、消火器等の設置場所と使用方法の説明、避難経路や避難方法の周知が求められています。

また、路上喫煙の防止や路上駐車に関する配慮、周辺住民からの苦情への迅速な対応、災害時の備えなども遵守事項として明記されています。

市はガイドラインの中で、「民泊によって市民生活が脅かされることがないよう」と述べ、事業者に対して周辺住民の生活環境に配慮した運営を強く求めています。

地域と共生する民泊運営へ

鎌倉市はこのガイドラインについて、神奈川県に対して条例への位置付けと一部手続きの義務化を要望しているとしています。現時点ではガイドラインという形ですが、市は「地域に受け入れられる民泊」の実現を目指し、事業者への周知徹底を進めていく方針です。

観光客に新たな価値を提供し、地域経済の活性化にも貢献する可能性がある民泊。一方で、適切な運営がなされなければ、住民の生活環境を脅かすことになります。ルールを守った運営こそが、持続可能な民泊事業につながると言えるでしょう。


参考:
「住宅宿泊事業制度(いわゆる民泊)について」(鎌倉市公式サイト)
鎌倉市における住宅宿泊事業に関するガイドライン【鎌倉市民泊ガイドライン】」(鎌倉市)


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