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地域によって違う乾燥注意報の発令基準!適切な対策で冬を乗り切ろう

  • 2025.11.24

冬から春は、空気が乾燥しやすい季節です。冬によく耳にする「乾燥注意報」は、低温の状況下で火災や健康被害のリスクが増していることを知らせる気象注意報です。

乾燥注意報が発表された際には、火の取り扱いや暖房器具の使用に注意し、室内の湿度管理や静電気対策をとる必要があります。

この記事では、乾燥注意報の意味合い、乾燥時の火災予防や健康管理、そして万が一火災が発生した際の初期対応についてわかりやすく解説します。

乾燥注意報とは

乾燥注意報は、空気の湿度が非常に低くなり、火災が起こりやすい気象条件が予想されるときに発表されます。

乾燥注意報は、「最小湿度」と「実効湿度」という2つの湿度指標が基準値を下回る場合に出され、地域ごとに基準値は異なります。

以下の表にて、地域ごとの乾燥注意報の発表基準をいくつか紹介します。

乾燥注意報の基準に地域差が出る主な理由は、地域ごとに地理的な特性と火災リスクが異なるためです。

例えば、乾燥しやすい山林を多く持つ地域は山火事のリスクを考慮し、乾燥注意報の基準が厳しくなる場合があります。

なお、最小湿度とは1日のうちで最も低い相対湿度のことです。実効湿度は、単にその日の相対湿度だけでなく、過去数日間の湿度の状況も考慮して木材の乾燥度合いを表す指標です。

空気が乾燥している際に強風が重なると火の粉が飛びやすく、延焼が広がる危険が増します。乾燥注意報に加え、強風注意報(風雪注意報)や暴風警報(暴風雪警報)など風に関する注意報や警報が発令されているときには、より一層の警戒が必要です。

ちなみに、雪が降っているときに乾燥注意報が発表されることは珍しくありません。このケースは、主に日本海側で雪が降る場合です。

日本海側で降る雪は、大陸から日本に向かって吹く乾燥した冷たい季節風が、暖かい日本海側を吹き渡る際に発生する雪雲がもたらします。

雪が降るときは一時的に湿度が上がるものの、基本的には乾燥した性質の空気です。雲が途切れたり、雪が弱まったりすると、乾燥した季節風が吹きこんで空気が乾燥します。このため、雪予報でも乾燥注意報が発表されることがあります。

火災警報について

空気が乾燥して強風が吹いている場合は、自治体から「火災警報」が発表されることもあります。

火災警報の基準も自治体で異なり、たとえば東京消防庁の場合は以下の規準で発表されます。

① 実効湿度50%以下、最小湿度25%以下になる見込みの時
② 平均風速13m以上の風が吹く見込みの時
③ 実効湿度が60%以下であって、最小湿度が30%以下となり、平均風速10m以上の風が吹く見込みの時

火災警報の目的は、火災の発生が予想される悪条件下で注意を喚起し、火災の発生を未然に防ぐことです。また、火災が起きた際に被害を最小限に抑えるため、消防機関に警戒体制を敷かせる目的もあります。

定期的に行うべき火災予防点検

火災予防には、定期的な点検が欠かせません。火災が発生しにくい環境を整えるだけでなく、万が一火災が発生した場合に被害を最小限にとどめるための重要な役割を果たします。

ここでは、定期的に行うべき火災予防点検について解説します。

キッチンには消火用ブランケットを

キッチンの火災予防は、調理機器周辺の油汚れやほこりの除去が重要です。調理機器周辺の油汚れやほこりは非常に燃えやすい性質のため、汚れが残っていると通常よりも火災が発生・拡大しやすくなります。換気扇の詰まりや油汚れも火災の原因になりやすく、ともに定期清掃が必要です。

万が一火災が発生した場合、水をかけることは絶対に避けてください。油が原因の火災で水をかけると、油が飛び散って火の勢いが強くなる可能性があります。そのため、消火器や専用の消火用ブランケットを使う方法が有効です。

冷静に迅速な初期対応を心がけ、火災の拡大を防ぎましょう。

石油ファンヒーターのほこりが異常燃焼の原因に!

暖房器具を点検する際には、ストーブの設置位置と使用環境を重点的にチェックしましょう。

ストーブは、壁やカーテンなどの可燃物から最低でも1m以上離して設置します。近くに可燃性の高いものが置いてあると、転倒や熱が伝わった場合に火が燃え移る恐れがあります。

また、石油ストーブにほこりが蓄積すると、燃焼状態が悪くなったり、ほこりに引火したりする恐れがあるので注意が必要です。石油ファンヒーターでも、空気取り込み口がほこりで塞がることで異常燃焼する事故が発生しています。定期的な清掃やメンテナンスを行いましょう。

プラグやコンセントのほこりで火花

電気機器の火災予防は「たこ足配線」を避けることがポイントです。一つのコンセントに複数の機器をつなぐと定格容量を超過しやすく、過熱や発火の原因となります。

また、プラグやコンセントにほこりが溜まると、湿気と混ざりトラッキング現象が発生し、微小な電流が流れ続けて火花や発熱につながります。プラグやコンセントのほこりを定期的に除去しましょう。

就寝前や外出時には電気機器のスイッチを切り、電源プラグを抜きましょう。電気が流れている状態を完全に断つことで、過熱やショート、トラッキング現象などによる火災を防げます。

たばこは必ず消す

屋外で喫煙する場合は、吸い殻を完全に消火しましょう。火が消え切っていない吸い殻は風に飛ばされて燃え広がり、火災の原因となる場合があります。火が消えていることを必ず確認しましょう。

また、焚き火や野焼きは火の管理が難しく、火の粉が風で飛散して延焼するリスクが高いため、避けることが望ましいです。

室内の湿度・健康管理

冬場や乾燥した季節は、風邪やインフルエンザの感染リスクも高まります。その理由は、喉や鼻の粘膜が乾燥すると、ウイルスが体内に侵入しやすくなるためです。

厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、室内の湿度について「40%以上70%以下」を衛生的に良好な範囲としています。

ここでは、乾燥しやすい季節における室内の湿度・健康管理のポイントについて解説します。

加湿器や室内干し

室内の乾燥対策には、加湿器や室内干しが効果的です。

加湿器は、室内の湿度を適正な範囲に保つ役割を果たし、喉や肌の乾燥を防ぎ、風邪やインフルエンザの予防に役立ちます。加湿器を使用する際は、毎日水を交換し、フィルターやタンクを清潔に保つことが重要です。フィルターやタンクを清潔に保つことで、細菌やカビの繁殖を防ぎます。

また、加湿器が無い場合は、洗濯物を室内に干す方法や、湯気を利用して自然な湿度上昇を促すことも効果的です。

天然の繊維は静電気を起こしにくい

冬の乾燥した室内では静電気が起こりやすくなります。

静電気は肌や髪の水分量が少ないと放電しにくくなり、ドアノブなどに触れたときに「バチッ」とした痛みを伴い発生します。静電気を防ぐには、綿や絹など吸湿性の高い天然繊維の衣服を身に着けることが効果的です。

また、手洗い後のハンドクリームなど、こまめに手肌を保湿する習慣をつけることも静電気発生の抑制につながります。

h3:低温やけどに注意

乾燥した室内環境で暖房器具を使う際には、低温やけどに注意が必要です。

低温やけどは、44℃〜50℃程度の比較的低い温度の熱源が皮膚に長時間接触することで発生します。カイロや湯たんぽ、電気毛布、こたつなどを直接肌に触れたまま使用したり、寝ている間も皮膚に密着させ続けたりすることで、起こりやすくなります。

特に高齢者は皮膚が薄く、感覚が鈍くなっている場合も。気づかずに重症化することも考えられます。暖房器具の説明書を守り、直接肌に触れないようにタオルなどを挟んで対策し、寝る前は必ず湯たんぽやカイロを布団から出しましょう。

また、乾燥対策として加湿する際には、室内の空気の流れが悪くなると結露が発生しやすくなる点に注意が必要です。結露した水分は窓や壁に発生し、放置するとカビの原因となり、健康被害につながる恐れがあります。

こまめな換気と室内の温湿度管理、結露予防シートの活用などで結露・カビ対策を徹底しましょう。

万一のときの初期対応

火災発生時には、119番通報を最優先に行いましょう。たとえ小さな火でも油断せず、すぐに消防署へ知らせることで被害の拡大を防止できます。

可能な範囲で隣室や周囲の人へ火災を伝えることも重要です。ただし、呼びかけなどは無理をせず、まず自身の身の安全を優先してください。危険と判断した場合は、ためらわずに自身の命を守ることが大切です。

初期消火の線引き

初期消火は、火災が安全に制御できる範囲を見極めることが重要です。煙が室内に充満して視界が悪い、熱気が強く感じられる状態の場合は自力の消火は危険です。

火が天井まで達し、煙が強くなった場合はすみやかに避難することが大切です。冷静かつ迅速な行動が命を守るポイントとなります。

避難する際は退路を確保しつつ、低い姿勢で濡れタオルやハンカチで鼻と口を押さえて煙を吸い込まないように注意します。また、燃える部屋のドア・窓は閉め、空気の流れを遮断しましょう。

避難後は消防隊到着まで外で待機し、出火状況や逃げ遅れがいる場合などの情報を提供します。

<こちらの記事もよく読まれています!>→冬から春は火災が起こりやすい時期!その理由や備えるポイントを解説

まとめ

乾燥注意報は、空気の乾燥による火災や健康被害のリスクが高まることを知らせる気象注意報の一つです。

注意報を意識することで、火の取り扱いや暖房器具の使用をより慎重に行えるようになり、室内の適切な湿度管理や静電気対策などを意識するきっかけになります。

また、乾燥が続く期間は喉や肌の保湿、こまめな水分補給を心がけ、感染症予防に努めることも大切です。

日常生活での火災予防策と健康管理を強化するためにも、気象庁が発表する気象情報に目を向け、注意報の意味や役割を理解しておきましょう。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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