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【コラム】W杯の出場国枠で、アジア枠を減らしヨーロッパ枠を増やせと叫ぶ浅はかさ

  • 2025.11.22

Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。

「W杯の出場国枠、アジア枠はこんなにいらない。ヨーロッパの枠をもっと増やせ」論

大詰めを迎えた、2026年北中米W杯予選。
その中で、タイトルの通り「アジア枠を減らせ、代わりにヨーロッパの枠をもっと増やせ」という論調がもう20年以上延々と出続けている。
ライトなサッカーファンの世代交代もあり、無限にループしているほどの錯覚を覚える。

この論は毎度思う事ながら、視野狭窄すぎて話にならないと感じているので、改めてその理由について述べていきたい。

アジアより問題のある大陸枠

まず、出場国枠の多さで言うならば最も突っ込みが入るべきはアフリカ(9枠)だ。
前回大会の5枠から9枠に大きく増え、これはアジアの5.5枠→8枠よりも多い。
モロッコがベスト4と大躍進を成し遂げたのは素晴らしいが、アジアよりもグループステージ突破国が少なかったにもかかわらず枠が増えたのは疑問。

南米も、10ヵ国に対して6枠+プレーオフはかなり多い。
予選参加のうち半分以上の国がW杯に出場できてしまうのは予選の意味をなさないほど。
ボリビアは予選で10敗したがそれでもプレーオフに進出した。

画像: 11月18日にキリンチャレンジカップ2025で日本代表と対戦したボリビア代表 (C)Getty Images
11月18日にキリンチャレンジカップ2025で日本代表と対戦したボリビア代表

また、ここ数大会の結果において、出場国枠に対し一番結果が出てないなら北中米カリブ海(6枠)だ。
アメリカ・メキシコの2強が存在するが、それ以外の国でコンスタントに結果を残している国はない。

これらの大陸への言及なく、アジアだけ引き合いに出していることについて、思考が浅いし、視野狭窄だと感じている。

ヨーロッパとアジアしか認識していない人々

おそらく、前述の論調を述べている人は、一番メジャーなヨーロッパしか見ていない。
そして、自分達の所属しているアジアだけしか認識していないので、こんな浅い論調になるのだと思う。
つまり、ハナから北中米カリブ海やアフリカの実績や枠を知らないし、関心がないというファンが、狭い範囲だけ見た低レベルな論調を述べてしまい、それが20年もループしているという現状だ。

それこそ、アジアと南米の対比で言えば2022年W杯における大陸間プレーオフが非常にわかりやすい具体例として挙げられる。
この時、「南米5位ペルー vs アジア5位オーストラリア」という直接対決プレーオフが実現したが、この結果はオーストラリアがPK戦で制し、「南米5位より、アジア5位が上」という形となった。

画像1: (C)Getty Images

このような実態・結果を把握していない単なる印象論や感情論は意味をなさないし、聞くに値しない。

イタリア、スウェーデン、ナイジェリア、カメルーン

今回、最も不満の声が挙がったのは「イタリアが3大会もW杯を逃しかねないなんて、枠の少なさがおかしい」という点。

しかしこれもよくよく結果を確認すれば枠の少なさが真の原因とは言い難い。
何故なら、前回大会予選においてイタリアはプレーオフ一発勝負で北マケドニアに負けるレベルだった。
その勝ち上がった北マケドニアもプレーオフ決勝でポルトガルに負けてW杯出場を逃しているため、ヨーロッパの枠を数枠増やしたところで、イタリアは出られない。

画像2: (C)Getty Images

イタリア同様、他責思考で枠に不満を挙げようとするならば、他にもあり、例えばスウェーデン、ナイジェリア、カメルーン。
これらの3カ国は敗退、もしくは敗退の危機にある。

しかし、スウェーデンはコソボにホーム・アウェイと連敗しているチームなので、いくらなんでもそれはW杯出場に値しないと考える。レギュレーションによりプレーオフに復活できたのは、救済措置が用意されたものに近い。

ナイジェリアについては、1996アトランタ五輪優勝と1998フランスW杯ベスト16の輝かしい実績は賞賛に値するが、それ以降はさほど結果を残せず、90年代のピークを超えていない。

カメルーンも同様で、1990イタリアW杯ベスト8と2000シドニー五輪優勝の輝かしい実績は賞賛に値するが、それ以降はさほど結果を残せていない。

ヨーロッパのビッグクラブに在籍している選手が多いという点や、過去の“スーパーイーグルス”(※ナイジェリア代表の愛称)や“不屈のライオン”(※カメルーン代表の愛称)の大躍進のイメージだけで語り、現状の予選における惨状や、一向に改善しないサッカー協会のゴタゴタを把握せずに語るのは浅はか。

個人的には、アジアの枠が多いこと(しかも多いのはカタールやサウジアラビア、中国救済措置の側面が滲み出ていること)や、ヨーロッパ枠の枠があまり多くないということ、それ自体は理解できる。
ただ、アジアとヨーロッパにだけしか目を向けず、アフリカや北中米カリブ海や南米に言及しないで、短絡的に「アジアを減らしてヨーロッパを増やせ」と語ること自体が視野狭窄だと感じるので、改めて記載した次第。

ただ、今後もこういった論調は無限にループする話だろうと思う。

筆者:中坊

1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2024年終了時点で997試合現地観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米・ヨーロッパ・アジアへの現地観戦も行っている。

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