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屋内でも注意! 冬に高齢者が低体温症を防ぐポイント

  • 2025.11.21

日本では近年、毎年1,000人以上の方が低温にさらされて亡くなっています。

冬季など気温が低い時期に災害が発生し停電が起きると、低体温症にかかることも考えられます。よって、防災の観点でも低体温症の理解を深めることが大切です。

また、高齢者は加齢による身体機能の低下から低体温症にかかりやすく、特に注意が必要です。

この記事では、低体温症の症状や重症度の見分け方、高齢者が低体温症を防ぐポイントなどを紹介します。

低体温症とは

低体温症とは、体の深部体温が35℃以下まで低下した状態をいいます。寒い環境で動けなくなったときに発生することが多く、山や海で遭難したときに起こるものと思いがちですが、泥酔して路上で眠ってしまった場合や野外でケガをして動けなくなった場合など、身近なところでも起こり得ます。

また、体温調節の機能が低下した高齢者が、自宅で低体温症になるケースも少なくありません。

h3:高齢者は低体温症になりやすい

内閣府の「令和7年版 高齢社会白書」によると、65歳以上の人がいる世帯は49.5%(令和5年現在)と約半数に上ります。

高齢者は加齢に伴い、寒さに適応する力が低下します。

例えば、
⚫︎ 運動不足により熱を生産する筋肉の活動が低下
⚫︎食事量の減少による代謝の低下により低体温リスクの上昇
⚫︎ 皮下脂肪の減少により熱放散を防ぐ遮蔽効果が弱まる
⚫︎ シバリング(体のふるえ)による熱生産が起きにくくなる

といった要因により、低体温症を発症するリスクが高まります。また、甲状腺の病気や脳血管疾患、低血糖や低栄養などが原因で体温調節ができなくなり、発症する場合もあります。

高齢化社会に直面する今、高齢者の低体温症対策が欠かせません。

低体温症の症状

低体温症を発症した際にみられる症状や、症状が悪化しているサインについて解説します。

震えがとまると低体温症が悪化

低体温症になると、最初は「ガタガタ」と体が大きく震えます。これは筋肉を収縮させることで熱を生産しようとする生理的な反応です。

体温が32℃以下になると、体を震わせて熱を生産できなくなります。体が温まっていない中で震えがとまるのは、低体温症が悪化したサインです。

中枢が抑制されると意識障害が起こる場合も

寒い環境で体温が奪われると、中枢神経の働きが抑制されて意識障害が起こる場合があります。

意識障害が起こると判断力が低下したり、錯乱状態に陥ったり、意味不明なことを話したりといった症状がみられ、重症化すると昏睡状態に陥ります。

低体温下の徐脈・不整脈は心臓の動きが弱まっているサイン

体温が30℃以下になると、脈拍が遅くなる徐脈や不整脈が起こります。これは心臓の動きが弱っているサインで、さらに体温が低下するとやがて心肺が停止します。

人体は、生命維持のために脳と脊髄の中枢で、体温・血液循環・呼吸・エネルギー代謝などを調整しています。

低体温症は、これらの生命維持に重要な生理機能の恒常性維持を低下させるため、適切に処置をしないと命に関わります。

<こちらの記事もよく読まれています!>→室温18℃未満は要注意! 屋内にいても起きる冬の低体温症

低体温症を見分ける目安(症状早見)

一般的な体温計の測定範囲は主に32~34℃からとなっていて、それ以下の低体温は測定できません。もし専用の体温計があったとしても、体の深部体温(直腸温や膀胱温、食道温など)を測定するのは簡単ではありません。

そのため、体の震えの有無や意識障害などの症状から重症度を判断するポイントを把握しておきましょう。

軽度(約32~35℃)

・ 激しい体の震え(体がガタガタ震える、歯がカチカチ鳴る)
・ ぎこちない動き(手先が使えない、まっすぐ歩けない)
・ 多呼吸

軽度の低体温症では、熱を生産するために体温調節機能が活発に働きます。体が震えるのは、筋肉を収縮させて熱を生産しようとする反応です。

また、皮膚や血管を収縮させることで体表から熱が放散するのを防ごうとするため、手足の動きがぎこちなくなることがあります。

中等度(約28~32℃)

・ 体の震えがとまる
・ ぼんやりとして反応が悪くなる
・ 意味不明なことを話す
・ 歩くことが難しい
・ 脈拍や呼吸の低下

低体温症が進行すると、体温調節機能が低下して震えがとまります。脳の働きが抑制されて、ぼんやりと無気力になることがあります。

すると筋肉や関節が硬直しはじめ、脈拍は遅くなります。成人の脈拍の正常値は60~80/分が目安です。

脈拍が50/分以下だと徐脈となり、中等度以上の低体温症になっているおそれがあります。

重度(約28℃未満)

・ 意識障害が起こる
・ 昏睡状態になる
・ 心臓の動きが弱くなる

心臓の拍動が不規則になり、死に至るような不整脈が起こりやすい状態です。しかし、低体温症は低温の環境で脳が保護されるため、心肺が停止したとしても蘇生できる可能性があります。諦めずに救急車を呼んでください。

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低体温症への対応は5ステップ

低体温症が軽度であれば、適切な対応によりその場で回復する可能性があります。

①意識を確認する
意識の有無は、低体温症の重症度を知る上で重要です。自分では低体温症のサインに気づかないこともあるので、同行者と確認し合いましょう。

②退避・断熱
同じ気温でも、雨風にさらされていると体温が奪われやすいです。少しでも暖かい場所に退避しましょう。

災害発生時に外へ避難した際には地面にはアルミシートを敷くなどして、冷気を遠ざけます。重ね着をしたり、毛布で体を包んだりして、体の熱が奪われないようにしてください。

③濡れた服は脱ぐ
低体温症は体温が下がりきってしまう前に、体を温めることができれば回復する可能性があります。

濡れた服を着ていると体温が奪われるので、脱ぎましょう。着替えが無い場合は、そのまま乾いた毛布やアルミシートなどにくるまってください。

④温かく、甘い飲み物を飲む
温かい飲み物を飲んで、体を内側から温めるのも効果的です。甘い飲み物でエネルギーを摂取すると、熱の生産にもつながります。パンやおにぎりなどの炭水化物を摂取してもよいでしょう。

⑤体幹を温める
湯たんぽや使い捨てカイロ、お湯を入れた水筒やペットボトルなどを胸の上に乗せて、体を中心から温めます。

湯たんぽは布で包み、カイロは肌着の上から当てるなどして、火傷をしないよう気をつけてください。数があるときはさらに首、わきの下、鼠径部などを温めましょう。

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高齢者が低体温症を予防するために

低体温症は適切に対応することで、予防可能です。高齢者が低体温症を防ぐ4つのポイントをご紹介します。

温かい環境を保つ

寒い部屋で何時間も座っていると、屋内で低体温症を発症することがあります。

また、高齢になると体温調節の機能が低下して寒さを感じにくくなります。「暖房費を節約しよう」と室温を低くせず、気温計を確認しながら室温を18度以上に保ちましょう。
特に、寝室は暖めてください。

冬は空気が乾燥するので、加湿器をつけるなど対策も忘れずに。

衣服での体温調節を

吸湿性や保湿性に優れた肌着を着用し、簡単に羽織れる上着を重ね着して細やかに体温調節しましょう。

外出する際には、頭部・首回り・手首・足首を冷やさないように、帽子・マフラー・手袋・靴下を着用してしっかりと防寒してください。

また、寝る際に湯たんぽや電気毛布を使う場合は、低温やけどを防ぐため布団が温まったら取り出す・スイッチを切る(またはタイマーをかける)などして、長時間の使用を避けましょう。

水分補給を忘れずに

冬は汗をかきにくく、水分補給を怠りがちです。特に高齢者は認知機能が低下し、喉の渇きを感じにくくなります。冬は空気が乾燥しやすいため、脱水を防止するようこまめに水分をとりましょう。

水分をとる際には体を冷やさないよう、常温もしくは温かいものを飲んでください。なお、アルコールは控えましょう。血管が拡張して一時的に温まるように感じますが、実は多くの熱が放散します。

定期的に体を動かそう

運動することで、体内の熱生産量が増加します。屋内で軽い体操やストレッチをするなど、気軽にできる運動をしましょう。

定期的に時間を決めておくと、続けやすくなります。

低体温症に対応する際の注意点

体を温めるときの注意点もあります。

×手足だけをカイロや湯たんぽで急加温しない
×手足をマッサージして温めない
×意識がはっきりしない人をゆさぶらない、無理に自分で歩かせない

末梢の血管が拡張して冷えた血液が体の中心へと急に流れ込むと、深部体温を下げる場合があります。

また、意識や呼吸が低下しているときに刺激を与えると、不整脈を起こす危険があります。暖かい場所へ移動するとき、病院へ搬送するときも体を丁寧に扱う必要があります。

119通報の目安

低体温症になっても軽度であれば「暖かい場所に避難して体を保温する」「食べ物や飲み物を摂取して熱を生産する」などの対処により、回復する可能性があります。

「震えがとまる」「意識がもうろうとしている」など重症化のサインがみられる場合は、命に関わることもあるので速やかに119番しましょう。一人のときは、意識が低下してから救助を呼ぶことが難しくなるので、より早い判断が必要です。

h2:まとめ

深部体温が下がり発症する低体温症は、高齢者なら誰もが発症するリスクがあります。加齢による体内の変化を踏まえて、屋内の温度を18℃以上にしたり、衣服で体温調節したりと対策をとりましょう。また、水分補給や運動も忘れずに。体重増加や生活習慣病を防ぐためにも役立ちます。

もし、体がガタガタと震えている、手足を動かしにくいなどのサインに気づいたら、速やかに体温を上げる対策をとってください。意識がぼんやりとして水分が飲めない、自分で歩けないなどの症状があるときは、速やかに119番をしてください。

<執筆者プロフィル>
山見美穂子
フリーライター・防災士
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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