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シャネルの最新コレクションでさらに注目。老舗シャツメーカー、シャルベが作る究極のベーシックアイテム

  • 2025.11.3
シャネル 2026年春夏コレクションより。
シャネル 2026年春夏コレクションより。

ダイアン・キートンフラン・レボウィッツパティ・スミスなどのおしゃれ賢者を思うと、いくつかの共通点が浮かび上がってくる。ひとつはシンプルなスタイルを好んだこと。あと、テーラードピースをよく愛用していたこと。そして、仕立ての良いコットンのシャツを着回していたことだ。私は彼女たちのファッションにどうしよもなく惹きつけられた。

そんな私がもうひとつ好きでたまらないのが、2006年に公開されたソフィア・コッポラ監督の映画マリー・アントワネット』だ。そして思いがけずに、コッポラも大のシャツ愛用者だということを知った。撮影期間中は私服をユニフォーム化する彼女は、現場ではシャツしか着ない。おそらく着る物に気をとらわれずに、監督業に徹底的に集中するためだろう。彼女が何枚も所有し、愛用しているのはシャルべ(CHARVET)のシャツだ。上質なベーシックアイテムのためならお金を厭わない人にとっての究極の定番ピースで、私も気づけばその魅力に取り憑かれていた。

2006年、『マリー・アントワネット』の撮影現場でのソフィア・コッポラ。
2006年、『マリー・アントワネット』の撮影現場でのソフィア・コッポラ。

シャルベとはパリのヴァンドーム広場に本店を構える由緒あるシャツメーカーで、1838年の創業以来、さまざまな名士たちにオーダーメイドのシャツを制作してきた。今ではシャツだけでなく、比較的お手頃なカスタムデザインのネクタイやスリッパなど幅広く展開しており、オーダーメイド品を取り入れてみたい人にとっても手が出しやすいアイテムのラインナップを揃えている。

そのあまりの評判から、ファッションインサイダーに熱烈に支持されるブランドとなったシャルベは、今さらに注目を集めている。シャネルCHANEL)の新アーティスティック ディレクターとして手がけた待望の初コレクションで、マチュー・ブレイジーはシャルベとともに制作したシャツをランウェイに送り出した。ひと目でそれとわかるシャルベの書体でシャネルの名を刺繍したサーモンピンクやピンストライプ柄のボクシーなシャツを、フェザーで覆われたスカートなどに合わせたルックを発表。シャルベがカルト的な人気を誇ることを改めて知らしめた。

シャネル 2026年春夏コレクションより。
シャネル 2026年春夏コレクションより。

コッポラ、カトリーヌ・ドヌーヴ、トム・ウルフなど、シャルベが虜にしている人たちは、とてつもなくシックな人たちばかりだ。フォトグラファーのアンジェラ・ヒルもそのひとりで、ブランドのシャツを買う瞬間は、「子どもころ、欲しくてたまらなかったおもちゃがやっと手に入ったとき」に似ていると言う。「結構、労力を伴う買い物です」と彼女は説明する。「まず、選択肢が多いです。そして実際に店に足を運んで試着して、仕上げから襟、サイズから色まで、すべて吟味して理想の1着を作らなければなりません」。なかなかハードルが高いが、既製品のものであれば400ポンド代から購入でき、eBayなどにも状態の良いセカンドハンド品が出回っている。

2013年、『ブリングリング』の撮影現場でのソフィア・コッポラ。
MCDBLRI EC0282013年、『ブリングリング』の撮影現場でのソフィア・コッポラ。

スタイリストのカロリン・フォー曰く、ブランドの背景にある歴史から店員との交流、手書きのレシートに至るまで、あらゆることがシャルベでのショッピング体験を特別なものにする。「こういった店はもうほとんどありません。サイズ感から製作工程に至るまで、カスタマイズサービスは群を抜いています」。スタイリングに関しては、ビジネスシーン以外で着るのがおすすめだと言う。「アイロンをしっかりかける場合は裾を出したまま、ゆったりとしたパンツに合わせたリラックススタイルに取り入れる。あえて少しシワのある状態で着るのならば、袖をまくって、ショート丈のトラックパンツとバレエシューズに合わせるといいです」

シャルベのシャツに身を包んだシャーロット・ランプリング。
シャルベのシャツに身を包んだシャーロット・ランプリング。

ファッション評論家のレイチェル・タシュジャンにとって、シャルベは「ソフィア・コッポラや金融マンに等しく愛される、親しみやすいハイラグジュアリーの象徴」であり、あらゆる人を惹きつけるブランドだ。「シャルベは厳密に言うと“ファッションブランド”ではありません。どちらかというと、素晴らしいクラフツマンシップと確かなクオリティを大切にするパタゴニアPATAGONIA)やビルケンシュトックBIRKENSTOCK)、ロレッタ・カポーニ(LORETTA CAPONI)のようです。ひとたび足を踏み入れれば、そのこだわり抜いた世界観に引き込まれます。ファッション関係者は、そういったブランドが好きなんです」

きちんとした仕立てと、ちょっとした特別感のあるモノグラム刺繍。よくある控えめなベーシックアイテムとは違う、洗練された雰囲気。今の私たちが本当に求めているのは、シャルベのシャツのような、ワンランク上の定番品なのではないだろうか?

Text: Olivia Allen Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK

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