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“デコスニーカー”が人気の理由とは? 足もとに宿る新装飾主義

  • 2025.10.31

スニーカーカスタムにトライ!

スニーカー ¥16,500/ADIDAS ORIGINALS(アディダスお客様窓口) その他/スタイリスト私物
スニーカー ¥16,500/ADIDAS ORIGINALS(アディダスお客様窓口) その他/スタイリスト私物

デコラティブなスニーカーで、差をつけるなら自らで作り上げるのも手。今回は担当スタイリスト鈴木美沙紀さんの手腕によって、ヴィンテージのパーツやオリジナルで制作した花のモチーフ、異素材のシューレースなどを掛け合わせ、ポップでパワフルでボリュームたっぷりなシューズが完成。ベースモデルはシンプルなスニーカーを選ぶと、デザインがより際立ってくれる。

スタイリストに制作プロセスについて尋ねると「好みのビーズを見つけるため、普段は行かない場所へ足を運ぶという体験も、カスタム制作の面白味のひとつだなと思いました」とコメント。「このシューズには、このために用意したもの以外にも、子供の時に使ってたヘアゴムや出番の少ないピアスを分解してカニカン(留め具)につけたピースも混じっているんです。自分の思い入れのあるものを使えますし、ただ取り付けるだけなので、初心者にもおすすめですよ」

デコトレンドの理由を探る

ジェーン・バーキン Photo_ Getty Images
Jane Birkin Press Conferenceジェーン・バーキン Photo: Getty Images

昨年の11月に公開された『VOGUE BUSINESS』の記事では、トレンド予測機関であるWGSNが名付けた『カオティック・カスタマイゼーション』、つまり「パーソナライゼーションを極限まで突き詰めること」がより大きなムーブメントになることが2025年に予測されると報じられていた。

その兆しは、Getty Images で“street style”と検索すると数ページを読み込むうちに必ずといっていいほど視界に飛び込んでくるバッグチャームの重ねづけスタイルにも如実に表れている。とはいえ、この装飾の感覚は決して目新しいものではない。数十年前には、永遠のファッションアイコンである故ジェーン・バーキンが自身のエルメス(HERMÈS)の「バーキン」に多数のスカーフやチャームを無造作にあしらい愛用していたことが知られている。その後、バッグをデコレーションするカルチャーは、形を変えながら幾度となくリバイバルを繰り返している。

Photo_ Getty Images
Photo: Getty Images

昨今のトレンドに立ち戻ると、ファッション検索プラットフォームLystのトレンドレポートによれば、2024年のQ4(2024年10~12月)において「bag charm」の検索数が四半期で77%急増した。この「アクセサリーのためのアクセサリー」とも言い換えられるトレンドを象徴するコーチ(COACH)のさくらんぼ形のチャームは、Z世代を中心に人気を集め、TikTokでバイラル化。ブラックの「バーキン」をチャームでマキシマイズしたデュア・リパや、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)×村上隆のコラボバッグにポップマートのクライベイビーを掛け合わせたLISAらセレブのスタイルも脚光を浴びた。世界中がラグジュアリーブランドのバッグとチャームに、キッチュで身近なキャラクターモチーフをミックスするような、手軽に独自性を演出できるこの新たな装飾主義を愛している。

Photo_ Getty Images
Photo: Getty Images

そこに、スニーカーへの装飾が頭角を現しつつある。2017-20年頃の“ハイプ”なスニーカーの全盛期には、より特別な一足を手に入れるため、プロフェッショナルにオーダーし、スペシャルな改造やペイントを施すショップが隆盛を極めた。しかし近年では、パールやビーズ、リボン、チャームを取り付けるような誰でも気軽に取り入れ可能で、自らバランスを考えながら手を動かすプロセスまでも楽しむアプローチが、存在感を増している。

チョポヴァ ロウェナ 2025年春夏コレクション Photo_ Gorunway.com
チョポヴァ ロウェナ 2025年春夏コレクション Photo: Gorunway.com

そして今年の春夏シーズンには、ミュウミュウ(MIU MIU)やコーチがフットウェア向けにチャームを提案し、イギリスとブルガリアの文化に根差すデザイナーデュオによるチョポヴァ ロウェナ(CHOPOVA LOWENA)アシックス(ASICS)と協業し蝶などの形のメタルパーツを大量にあしらったスニーカーをランウェイに送り出す一方、この2年間で、アディダス(ADIDAS)プーマ(PUMA)はチャームやシューレースでスニーカーへのカスタマイズを体験できるポップアップイベントを実施し、盛況を博した。

いまや、数年にわたって人気のバッグチャームへの視線はそのままに、スニーカーにまで波及。一過性のトレンドというよりも、ある種の定番的なスタイルの地位を築きつつあるといえるほど、各国の『VOGUE』でも多彩な切り口でチャームを取り上げ続けている。無数のマイクロトレンドが生まれ、加速度的な消費サイクルによってトレンドが均質化し、影響が減退している現代において、既存のアイテムにそれぞれの個別な豊かな表情や意味をもたらすことで、他者と異なるデザインを生み出す“盛り”の潮流は、「トレンドに対するアンチテーゼ・トレンド」と呼ぶにふさわしいかもしれない。

それぞれの個性が本領発揮 チャームやブローチなどによる自由自在なアプローチを要チェック。〈上から〉スニーカー ¥138,600 〈左から時計回りに〉マイクロトリックチャーム(ブルー&ホワイト) ¥35,200 (バール&ダークオレンジ) ¥35,200 レザーピンウィールブローチ ¥31,900 ロゴブローチ ¥29,700 マイクロトリックチャーム(マスタードイエロー) ¥31,900 (サンド&レッド) ¥31,900 ダイスチャーム ¥22,000(すべて予定価格)/すべてMIU MIU(ミュウミュウ クライアントサービス) スニーカー ¥68,200/COMME DES GARÇONS GIRL × MIZUNO(コム デ ギャルソン) スニーカー ¥170,500(予定価格)/BALENCIAGA(バレンシアガ クライアントサービス) スニーカー ¥28,600 〈左から〉チェーン ストラップ ¥25,300 キャロット バッグチャーム ¥33,000/すべてCOACH(コーチ・カスタマーサービス・ジャパン) 〈左から時計回りに〉ダイスバッグチャーム ¥3,300 スターバッグチャーム ¥3,300 レッドチェリーバッグチャーム ¥3,300 ベアバッグチャーム ¥3,300/すべてCOACHTOPIA(コーチ・カスタマーサービス・ジャパン)
それぞれの個性が本領発揮 チャームやブローチなどによる自由自在なアプローチを要チェック。〈上から〉スニーカー ¥138,600 〈左から時計回りに〉マイクロトリックチャーム(ブルー&ホワイト) ¥35,200 (バール&ダークオレンジ) ¥35,200 レザーピンウィールブローチ ¥31,900 ロゴブローチ ¥29,700 マイクロトリックチャーム(マスタードイエロー) ¥31,900 (サンド&レッド) ¥31,900 ダイスチャーム ¥22,000(すべて予定価格)/すべてMIU MIU(ミュウミュウ クライアントサービス) スニーカー ¥68,200/COMME DES GARÇONS GIRL × MIZUNO(コム デ ギャルソン) スニーカー ¥170,500(予定価格)/BALENCIAGA(バレンシアガ クライアントサービス) スニーカー ¥28,600 〈左から〉チェーン ストラップ ¥25,300 キャロット バッグチャーム ¥33,000/すべてCOACH(コーチ・カスタマーサービス・ジャパン) 〈左から時計回りに〉ダイスバッグチャーム ¥3,300 スターバッグチャーム ¥3,300 レッドチェリーバッグチャーム ¥3,300 ベアバッグチャーム ¥3,300/すべてCOACHTOPIA(コーチ・カスタマーサービス・ジャパン)

Photos: FISH ZHANG Styled: MISAKI SUZUKI Editor: REONA KONDO

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