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「クマがかわいそうだろ!」2時間超の電話も…自治体への“過度な苦情”に「これでは仕事にならない」弁護士の見解は?

  • 2025.11.21
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

近年、全国的にクマによる人身被害が増加しており、社会問題となっています。クマが出没すれば駆除が行われることも多いですが、その際、自治体には「かわいそう」といった抗議が寄せられるケースが少なくないようです。

はたして、長時間の苦情電話をかけることは法的にどのように扱われるのでしょうか?気になる疑問について、弁護士に詳しく話を伺いました。

「これでは仕事にならない」

2025年7月、北海道福島町で新聞配達員の男性がヒグマに襲われて死亡し、その後ヒグマが駆除されました。この件を巡り、北海道庁に「ヒグマを殺すのはかわいそうだからやめてほしい」といった抗議の電話などが相次いでいると、鈴木直道知事が記者会見で明らかにしました。1人の電話が2時間以上続くケースもあったといい、「これでは仕事にならない」と苦言を呈しました。

また、10月にも秋田県横手市役所の公式X(旧Twitter)アカウントで、「誹謗・中傷と思われる電話などに対しては、横手市職員カスタマーハラスメント対策基本方針に基づき、毅然とした対応をする」との旨を投稿。幼児施設や小学校、病院などが目の前にある場所に居座っていたツキノワグマへの緊急銃猟について、理解を求めるよう呼びかけました。

長時間の苦情電話、法的にはどう扱われる?弁護士が詳しく解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

過度な苦情電話…これってどんな罪になり得る?

---クマの件に限らず、企業や役所に長時間苦情の電話をする、何度も同じ件で電話をする、電話口で罵倒をするといった行為は、法的にどう扱われますか?

寺林弁護士:

長時間の苦情電話や罵倒行為は、内容や態様によっては「威力業務妨害罪」や「脅迫罪」「侮辱罪」などに該当する可能性があります。以下に、法的な観点から詳しく解説します。

1. 長時間・執拗な苦情電話

該当する可能性のある罪名:威力業務妨害罪(刑法234条)

業務の正常な遂行を妨げるような行為が対象です。電話を繰り返しかけることで業務が滞る場合、威力を用いた妨害とみなされることがあります。3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に科される可能性があります。

2. 同じ内容で何度も電話をかける

該当する可能性のある罪名:偽計業務妨害罪(刑法233条)

虚偽の情報や不当な手段で業務を妨害する行為です。執拗な電話が業務妨害の手段と認定されれば該当する可能性があります。3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に科される可能性があります。

3. 電話口で罵倒・暴言を吐く

該当する可能性のある罪名:侮辱罪(刑法231条)、脅迫罪(刑法222条)、名誉毀損罪(刑法230条)、威力業務妨害罪(刑法234条)

  • 侮辱罪:社会的評価を傷つけるような発言
  • 脅迫罪:「殺してやる」など、相手に恐怖を与える発言
  • 名誉毀損罪:事実を摘示して相手の名誉を傷つける
  • 業務妨害罪:暴言によって業務が妨げられた場合

刑罰:罪状により異なりますが、拘留・科料から拘禁刑まで幅広く科される可能性があります。

---企業や役所側に非がある件でのクレームの場合、ない場合で罪は変わりますか?

寺林弁護士:

企業や役所に非があるかどうかは、クレームの「内容の正当性」には影響しますが、苦情の手段が違法であれば罪に問われる可能性は変わりません。つまり、企業や役所に落ち度があっても、度を超えた苦情行為(執拗な電話、罵倒、脅迫など)は法的に処罰対象となる可能性があります。

クレーム電話での裁判例は?

---今までクレーム電話で裁判になった例があれば教えてください。

寺林弁護士:

以下のような例があります。

1. 保険会社への執拗な電話(東京高裁 2008年7月1日決定)

保険契約者が保険会社の対応に不満を持ち、弁護士委任後も1日最大19回、最長90分の電話を繰り返したという事例です。

この行為は「業務遂行権」に対する違法な妨害として、保険会社側が電話応対の禁止を求める仮処分を申し立てました。裁判所は、一定限度を超えた電話は違法とされ、企業側の申し立てを認めました。

2. 自治体(愛知県美浜町)が住民を提訴(2024年11月提訴)

住民が役所に対して約5年にわたり電話で執拗な苦情を繰り返し、職員の業務に支障が出たという事例です。自治体が住民に対して業務妨害として損害賠償を求める訴訟を提起することが町議会で全会一致で可決されました。

苦情の伝え方にも配慮を、行き過ぎた行為は法的リスクも

長時間の苦情電話や罵倒は、その内容や態様によって威力業務妨害罪などに該当する可能性があるとのことです。企業や自治体に落ち度があったとしても、度を超えた苦情行為は法的に問題となります。

クマ駆除のケースでは、人命が失われた痛ましい事件の後、住民の安全を守るために行われた駆除に対して、該当の都道府県外からも多数の抗議が寄せられました。人によってさまざまな考えはありますが、長時間の電話によって職員の業務を妨げれば、それは別の問題となります。

意見や要望を伝えることは大切な権利ですが、その方法には配慮が必要です。相手を罵倒したり、執拗に電話をかけ続けたりする行為は、自分自身が法的なリスクを負うことにもなりかねません。

冷静で建設的なコミュニケーションこそが、より良い社会をつくる第一歩なのではないでしょうか。


参考:
知事定例記者会見(令和7年7月25日)(北海道)
【横手市からのお願い】(横手市役所(秋田県横手市公式)@Yokote_city)

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