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【インタビュー】映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』でJO1の豆原一成さんとW主演!市毛良枝さんが語る、「歳を重ねることは、豊かさを増やすこと」とは?

  • 2025.10.23

数々の映画やドラマで、さまざまな人々の心の機微を演じてきた俳優・市毛良枝さん。10月24日(金)に全国公開を控え、さらに11月6日(木)には小説版も刊行される大注目の映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』では、W主演を務めるグローバルボーイズグループ・JO1のメンバーであり、俳優としても実力を伸ばす豆原一成さんとともに、祖母と孫という世代を超えた心の交流を描きます。

44年ぶりの主演作で、大学に通う70歳の女性を演じた市毛良枝さん。長年、多くの人の人生を演じてきた彼女が、いま改めて感じているのは、「年を重ねることは、想像力が豊かになること」。新しい挑戦を恐れず、自分らしく歩み続ける、その軽やかな生き方を聞きました。

若き日の恋人役が、半世紀を経て夫婦に。

「主役だからといって、特別な気持ちはないんです」。44年ぶりの主演について尋ねると、こちらの想像以上に飾らない言葉が返ってきた。

「俳優は“映るスタッフ”。スタッフの思いや、関わっている人たちの気持ちを、私が代わりになって、観る人たちに届けるのが役割だと思っています。もちろん、主演をいただけるのは、ありがたいことです。でもだからといって、主演だとか脇役だとか、そういう区別には昔からあまり意識をしていないんです」

70歳の文子と大学生の拓磨。世代も価値観も異なるふたりが、日々の暮らしをともにするうちに、それぞれの中にあった迷いや寂しさが、やわらかくほどけていくーー。小説版では、文子と拓磨の関係性がさらに丁寧に描かれ、巻頭カラー16ページには主演二人の印象的なシーンを収録。映画の余韻を静かに味わえる一冊となっています。

豆原さんとはじめて会った日のことを尋ねると、「とても素直で、目のきれいな青年だなと思いました」と市毛さん。

最愛の夫・偉志を亡くし、ひとり静かに暮らしていた文子。偉志との思い出がそのまま息づく家で、娘の綾(酒井美紀)の海外出張をきっかけに、孫の拓磨(豆原一成)としばらく暮らすことになります。ある日、拓磨がふと足を踏み入れた偉志の書斎で、一冊の大学案内を見つけます。それは、生前の偉志が文子に贈ったサプライズでした。

「もう一度、夢を追いかけてほしい」。そんな夫からのやさしさ溢れるメッセージに背中を押され、文子の中で止まっていた時間が、ゆっくりと動き出します。

「文子と偉志。本作のもう一つの柱となる夫婦の愛。本当に美しいですよね。文子は幸せ者だなと思います。と同時に、偉志が生きていたら、文子はずっと彼の懐の中で生きていたと思うんですよね。けれど突然の別れをきっかけに、文子は自分らしさを取り戻していく。それはきっと、長い時間をかけて積み重ねてきた偉志の愛に支えられているから。最愛の人を失って初めて、自分の中にあった自由に気づく。その感覚がとても素敵だなと思いました」

市毛さんと、夫・偉志を演じた長塚京三さん。実はふたりが共演するのは今回が初めてではなく、約50年前、若き日には恋人同士の役を演じていたそう。

「長塚さんとは50年ほど前に恋人役でご一緒しているんです。それがまるで、今回の文子と偉志の予行練習みたいで、まるであの頃からすでに物語が始まっていたような。そして今回、約50年ぶりに夫婦として再び共演し、あの若かったふたりが、そのまま時を経て続いていたんだなと。長塚さんも、『僕たちずっと前に、練習してましたもんね』と笑いながらお話くださって。偉志役が長塚さんで、本当に幸せでした」

「もう一度学びたい」から、人生はまた始まる。

亡き夫の残したメッセージに背中を押され、若い頃に抱いていた“大学で学ぶ”という夢を、70歳で叶えた文子。実は、市毛さんご自身も40歳のときに登山を始めたそう。

「50歳くらいの頃に出した書籍のあとがきに、『いつか大学に行って、ちゃんと勉強してみたい』って書いているんですよ。まだ実現できていないけれど、文子がそれを叶えてくれました(笑)。私だけでなく、きっとそういう思いを持っている人は多いのではないでしょうか」

文子の姿を通して、学び直すことの意味を改めて感じたという市毛さん。

「若いころの勉強はひとつも楽しいと思えなかったけれど、大人になってからの勉強って、本当に楽しいんですよ。中学のときの先生に、『いつか勉強したい時が来るけれど、その時には頭が追いつかないから、今やりなさい』って言われたんです。当時は『そんなこと言われてもね』って思っていましたが、今になってみると、あの言葉は正しかったなと思います。今は“老後”と呼ばれる時間が長くなりましたよね。子育てや介護などが一段落して、心が落ち着いたときに、もう一度新しい一歩を踏み出すって、とても素敵なこと。だから私は、いくつになっても遅いことはないと思っています」

劇中では、若い学生たちから“文ちゃん”と呼ばれ、授業で積極的に質問したり、仲間と笑いながらキャンパスを歩いたりと、学生生活を満喫する文子の姿が描かれている。

「私は、年下の友人も多いのですが、こちらが垣根をつくらなければ、若い人たちも気軽に寄ってきてくださる。世代を越えて関わり合える関係って、やっぱりいいですよね。それなのに今は、どこかで世代で分けようとする風潮がありませんか? 若い人たちは“年上のことは分からない”と思い込んでしまったり、逆にこちらは“最近の若い人は行儀が悪い”なんて決めつけてしまったり……。けれど、実際にきちんと話してみると、みんな素直で真面目なんです。世代の壁で距離を置いてしまうのはもったいない気がします」

拓磨の恋人・紗季(八木莉可子)ともすぐに打ち解け、世代の違いを感じさせないほど自然に距離を縮めていく姿も印象的だった。

「拓磨と紗季は恋人同士でしたが、たとえば“嫁と姑”や“家の中での立場”みたいなものは、もうなくなればいいのに、と思います。日本は家制度がなくなって何十年も経つというのに、相変わらずその感覚を抱えているところがありますよね。息子のお嫁さんを、 “年の若いお友達”だと思ってみるとか、気持ちの持ちようを少し変えるだけできっと違ってくるはず」

“老い”ではなく、“豊かさ”としての時間を重ねていく。

文子という女性を通して、人生の深さや豊かさを見つめた本作。市毛さんに、特に心に残っている言葉を尋ねるとーー。

「『本は面白いね。本を読めば、自分が経験してないことでも、まるで経験したみたいに思えてくる』という台詞で、お参りをした帰り道に、文子が拓磨に話す場面です。その言葉は、私自身の実感でもあるんです。普段から本が大好きで、悩んだときに何気なく手に取った一冊を読むと、『なぜこの作家は、私のことをこんなに知っているんだろう?』と思うことがあります。それってつまり、多くの人が抱えている悩みだということなんですよね。そう気づくと、心がすっと軽くなる。

本の魅力って、イメージを固定しないところだと思います。読む人の想像力で、登場人物の姿や風景が自由に広がっていく。情報が少ないからこそ、自分で色づけできる余白がある。そんな最高の遊び、やらなきゃもったいない!」

想像を膨らませる楽しさの先に、市毛さんが語ってくれたのは、“年を重ねること”そのものに宿る豊かさ。

「歳を重ねることって、本当に豊かなことだと思うんです。年齢を重ねるほど経験が増えて、自分の中で“色付け”できることが多くなる。想像力が育まれて、妄想もどんどん豊かになる。たとえば“ベニス”という言葉を本で見たり、ラジオで耳にしたりするだけで、ベニスの風景や思い出がふっと浮かんでくる。それは、経験を重ねてきた人だけが味わえる楽しみ。そう、いちばんの収穫は “記憶”なんです。蓄積された記憶が増えるほど、想像の世界はいくらでも広がっていく。こんなに楽しいことって、なかなかない。ひとりでいくらでも遊べちゃいますよ」

豊かな人生経験を重ねながら、今もなお新しい挑戦を続ける市毛さん。75歳を迎えた今、これからの時間をどう生きていきたいと感じているのか。

「まだまだこの先、どんな人と出会うかもわからないし、自分がどんなふうに変わっていくかも分からない。そう考えると、やっぱり楽しいんですね。これからも、どんどん若い世代の人たちとも仲良くしていきたいです。世間では、年を重ねることに対して否定的に感じる風潮がありますが、どんどんはねのけていきたいですね(笑)。

もちろん、私だって『元気ですね』と言われても、年齢なりの体の変化を感じることはあります。でも、そこばかりに目を向けていても、何も変わらない。これまで生きてきた75年の時間がなくなったわけではないですし、だったら気持ちを前に向けた方がいいですよね」

長年にわたり、女優として多くの作品に出演してきた市毛さん。その穏やかな語り口の奥にあるのは、常に“変化を恐れない”強さ。年齢を重ねた今もなお、自分の可能性を信じて、前を向き続けている。

「私は医者の家系に育ったので、医者の道を選ばなかったことに少し後悔があります。でも今から医者になってもお役には立てませんから、それよりも、これまで自分自身の心と向き合うなかでカウンセリングを学んだ経験があるので、いつか体ではなく心を癒やせるようなことができたらいいですね」

富士山の空気を知り、自然の厳しさも穏やかさも受け入れてきた市毛さん。かつては自ら豆を挽いてコーヒーを淹れる朝を過ごしていたが、親の介護をきっかけに、今はミルクティーを手に静かな時間を楽しむ。誰かを思いやることで生まれた、やさしい習慣の変化。そこにもまた、市毛さんらしい生き方がにじんでいる。

作品情報

映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』
2025年10月24日(金)公開
監督:中西健二 脚本:まなべゆきこ
出演:豆原一成(JO1)、市毛良枝 ほか
(C)2025「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」
配給:ギャガ 『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』
https://gaga.ne.jp/fujisan_and_coffee/ 構成・文/大森奈奈

この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

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