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地方民たちを不快にさせた【東京在住者たちの驕り】まいばすけっと論争が浮き彫りにした、都会人の「自虐風ぜいたく」とは

  • 2025.10.20

“都会暮らしの象徴” めぐる議論

都市部に相次いで出店している小型スーパー「まいばすけっと」
都市部に相次いで出店している小型スーパー「まいばすけっと」

ソーシャルメディアX(旧ツイッター)では2025年、「まいばすけっと」をめぐる議論がかつてないほど活発化しました。売り場面積の限られた狭小型という特徴から、自身の食生活の単調化を自虐する「まいばすユーザー」が続々。一方で、都市部への集中出店という拡大戦略から“都会暮らしの象徴”に位置付けられ、地方在住者らには「ぜいたくな悩み」と冷ややかな目線が。都市部 対 地方の構図を浮き彫りにしたとも捉えられる状況です。

まいばすけっとはイオン系列の小型スーパー。狭小物件を活用した居抜き出店戦略により、マイカー率の低い東京23区や横浜などの都市部を中心に急増しています。このドミナント戦略はコンビニ並みの面積でスーパー機能を提供し、鉄道中心の徒歩圏生活を支えることで、その秀逸な適応力が分析されています。

X上で議論となったのは、“狭小スーパー”というかつてない店舗形態と、出店が都市部に集中している点にフォーカスしたものが中心。東京在住のユーザーらは、生活圏内でのまいばすけっと増加が大型スーパーや専門店を追いやり、食生活の多様性を失わせていると嘆く向きが大勢で、10月15日に注目された投稿は「まいばすの出店により(中略)食文化が貧しくなっている」と指摘。これに対しリプライでは「時代の流れ」といった意見が交錯するなど、議論が拡大しました。

まいばすけっとを“都民への罰”と揶揄(やゆ)するトピックは、ユーモアが際立ち大規模な拡散に発展しました。

8月のバズ投稿「まいばすけっとは都民への罰だ」は、利便性とスケールメリットを享受する代わりに食材選択の機会を失った東京都民の“悲哀”を表すもので、7万5000件以上の“いいね”を記録。リプライ(返信)や引用欄でジョークが連鎖し「イオンが東京都に天に至る高さを持つイオンモールを作ろうとして神の怒りを買って……都内にまいばすけっととして散らばった」と神話風に風刺するものまで登場し、笑いを誘いました。

都市部の狭小物件活用という戦略の裏側で、買い物の楽しさが失われる点を強調していますが、自虐的な表現の裏には、東京の利便性を当然視した“おごり”が透けて見え、地方ユーザーからは「罰なんて大げさだ」「自意識過剰」との指摘も相次ぎました。自身の置かれた環境をジョークにできるというのは、それだけでも“強者側の振る舞い”と捉えられるのかもしれません。

地方在住者の目に映るのは、そもそもの選択肢が多い東京において「“身近な”選択肢がまいばすけっとしかない(つまり、少し足を伸ばせば他のスーパーもある)」という都市部在住者の(言うなれば)悠長さや傲慢(ごうまん)さ。まいばすけっとをめぐる議論自体が「地方の現実を知らない証拠」と批判的に受け止める声が多数を占めました。

都市部在住者に共通する、都心の利便性と引き換えに豊かな食生活を手放すジレンマの意識。外食に頼りがちな都会暮らしにおいて、まいばすけっとは貴重な生活インフラとして機能していますが、その品ぞろえの単調さに対する不満は、一方の地方在住者からすれば、東京の交通網や多様な外食・購買オプションを当然視した「ぜいたくな悩み」にしか過ぎません。

Xにおける“まいばす議論”は、忙しい日常を送る都会人の間でささやかな不満を共有するコミュニティーを形成しエンゲージメントを高めましたが、地方在住者には「東京中心主義の典型」との印象を与えたようです。

都市部在住者の悲哀あふれる自虐・自嘲と、悠長な悩みに向けられる地方在住者らの冷ややかな目線。これが、X上の議論が浮き彫りにした都市部と地方の対立構造です。まいばすけっとで日々の食材を調達するか、地方に住み巨大スーパーや地場の商店を活用するか。あなたなら、そのどちらを選びますか――?

(山嵐冬子)

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