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なぜクマが大量に出没? クマの被害を減らす方法とは

  • 2025.10.10

クマが人の生活圏に出没することが増えています。この記事では、クマと遭遇するリスクを減らす方法、遭遇したときの対策などを解説します。

クマと遭遇するリスクが高まっている

クマは、ふだんは山の中でドングリや山菜、昆虫などを食べて暮らしている動物です。川を遡上するサケや、弱って死んだシカの肉を食べることもありますが、基本的には警戒心が強く、自分から人に近づくことはありません。

しかし、2000年代になってからクマが市街地に出没することが増え、ここ数年は「大量出没」と言われる事態となっています。これには、いくつかの理由があります。

個体数の増加

クマは戦後の高度経済成長期に、すみかである自然が破壊されたことなどにより一時個体数を減らしましたが、その後、絶滅しないように狩猟や駆除が制限されたことで、また数が増え始めました。

本州に生息しているツキノワグマは多くの県で増加傾向、北海道のヒグマはこの30年で2倍以上に増えていると推測されています。

生息域の拡大

本州では、ツキノワグマの生息域が拡大しているという報告があります。人口が都市に集中し、山間の村などが過疎化したことなどにより、かつてはクマが近寄らなかった低地にも近づくことが増えています。

エサ不足

クマの好きなドングリ(ブナの実)が凶作の年には、エサを求めて山を下りてくることが増えます。クマの生息数が多い東北地方などでは前年の結実度や初夏の開花度、夏の気温などからブナの豊作・凶作を予測し、クマの出没注意報・警報を発令しています。

2025年度の秋は各地で「大凶作」が予測されており、冬眠前にクマがエサを求めて徘徊する危険が高まっています。

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家の外に“ごちそう”を置かない

クマは、人を襲おうとして山から下りてくるわけではありません。しかし、人のいるところには食物を発見すると、繰り返し出没するようになります。そして、人にばったり遭遇したときに、身を守ろうとして襲いかかることがあります。

クマとの遭遇を避けるには、エサになるものを家の外に置かないことが大切です。

ゴミは収集直前に出す+耐動物容器で固定

「クマがゴミ捨て場を漁っていた」という目撃情報も寄せられています。クマはとても鼻の利く動物なので、残飯などの匂いに引き寄せられてくるのです。

クマがよく活動するのは、夕暮れ時や早朝の薄暗い時間帯です。近くでクマの目撃情報があるなら、前日の夜や早朝にゴミを捨てるのはやめましょう。

ゴミ捨て場に頑丈なコンテナや物置型のゴミ箱を設置して、扉に鍵をかけるなどの対策も有効です。クマの出没に悩まされていた長野県軽井沢町では、ゴミの集積方法を変更したことで被害を減らすことができたという報告があります。

果樹・畑の管理

柿などの果物もクマの好物です。クマは木登りが得意なので、収穫しやすい高さまで枝を剪定するなどして、高い所にも実を残さないようにしましょう。住人の高齢化などにより管理しきれなくなった果樹は、伐採することも検討してください。熟して木から落ちた実もクマを引き寄せるので、拾って捨てることが大切です。

トウモロコシ、ニンジン、サツマイモなど、家庭菜園の野菜がクマに狙われることもあります。傷んで食べられない野菜などでも、畑に残しておかないようにしましょう。

ペットとペットのエサは屋内へ

クマが飼っている鳥を襲い、さらに鳥の餌が入ったバケツまで持ち去ったというニュースがありました。庭につないでいた犬が襲われた事例もあります。ペットは屋内で飼うか、鍵のかかる丈夫な飼育小屋に入れて守りましょう。

また、ペットフードは出しっぱなしにせず、匂いが漏れないように保管してください。鳥の餌台にクマが寄ってきたという事例もあり、少量でもクマを引き寄せる原因になります。

BBQの残り物は即片付けを

キャンプ場やバーベキュー場で食材を出しっぱなしにしておくと、クマに荒らされる危険があります。庭でバーベキューをするときも、食材は直前まで屋内または密閉できる容器(フードロッカー)で保管し、調理後は食べ残しやゴミを放置することなく、すぐに片付けましょう。

その他、ペンキなどの塗料、ガソリンなどの燃料の匂いもクマを引き寄せるので、鍵のかかる物置などで保管するようにしてください。

また、ハチミツもクマの好物です。家の軒下などにできた蜂の巣は、早めに駆除しましょう。

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敷地に入らせない仕組み

畑や果樹園には、電気柵を設置する対策が有効です。クマは木登りが得意なので、一般的な柵だと乗り越える危険があります。

また、赤外線センサーやAIカメラでクマの接近を察知して、動物が嫌がる低周波を出し、敷地への侵入を防ぐ装置も実用化されています。

しかし、一般的な住宅はクマを引き寄せるものを家の近くに置かないということが、一番にとるべき対策と言えるでしょう。

もうひとつ有効なのは、周辺の草刈りをすることです。クマは、草木のある河川敷などを通って山から人の生活圏へと侵入します。そして警戒心の強い動物のため、見通しの良い場所には姿を現したがりません。

家の近くに草木の生い茂った雑木林などがある場合でも、下草を刈って見通しを良くすることで、クマが近づきにくくなります。

遭遇リスクのあるエリアでの注意点

クマの出没エリアでは、いつクマとばったり遭遇するか分からないという心構えが必要です。クマとの遭遇を避ける対策の基本は、クマに気づかれないよう静かにするのではなく、音を立ててクマに「ここに人間がいるよ」と知らせることです。

基本的には、人間がクマを恐れているように、クマも人間を恐れているので、人の気配があれば近づいてきません。できるだけ2人以上で会話をしながら行動し、クマ鈴やラジオを鳴らすようにしてください。

「散歩をしていてクマに遭遇したけれど、犬が吠えたら逃げて行った」という話も聞きます。しかし、犬は確かにクマ追いとして古くから利用されてきた動物ですが、訓練された犬でないと、逆にクマの攻撃性を高める危険もあります。たとえクマを追い払うためであっても、公共の場では犬をリードから放さないようにしてください。

クマがよく活動する時間帯は、「薄明薄暮」と言われる明け方と夕方です。近くでクマの目撃情報があるなら、早朝の散歩、夕方のジョギングなども、1人では出かけないなどの対策をしましょう。もしもクマを目撃したときは、近づかないようにするとともに、すれ違う人たちにもクマがいたことを教えて、注意を促してください。

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家の近くで見かけたときの対応

家の近くでクマを見かけたら、落ち着いて速やかに避難しましょう。

屋内退避・施錠

自宅または近くの建物の中、車の中などへ避難してください。クマが侵入してくる恐れのある窓や扉は閉め、しっかりと施錠してください。

ゴミの回収・ペット避難

家の外に生ゴミなどの匂いのするものを出しておくと、クマを引き寄せる恐れがあります。家の中または物置などにしまいましょう。家の外で飼っている動物もクマに襲われる危険があるので、家の中または丈夫な飼育小屋の中へ避難させてください。

通報する

クマを目撃したら、地元の自治体または警察へ通報してください。人が襲われる危険が高いと判断される場合には、自治体が地元の猟友会などに依頼して駆除することもあります。

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山に入るときの心得

山は、クマの生息域です。登山、ハイキング、渓流釣りなどのレジャーで山に行くときは、クマ対策をしましょう。

声や鈴で存在を知らせる

山ではクマ鈴をつける、ラジオをつける、同行者と会話をするなど、音を鳴らしながら進みましょう。渓流釣りでは、川の音で鈴の音が消されてしまうことがあります。1人でじっとしていると鈴が鳴らないので、ラジオなどを併用してください。

特に見通しの悪い曲がり角や草の生い茂った場所では、クマにばったり遭遇するのを避けるためにも音を立てることが大切です。

遭遇時の距離別対応

<クマとの距離が遠いとき>

落ち着いて、クマの進行方向とは別の方向に離れます。急に大声を出すなどして、クマを驚かせないようにしましょう。

<距離が近いとき>

クマがこちらに気づき、近づいては離れるという威嚇行動をとることがあります。このときに背中を見せて走ると、襲われる危険が高くなります。じっと動かないでいるのも、敵対する意思があるとみなされる恐れがあります。クマのようすを見ながら、クマとの間に木などの障害物を挟むようにして、ゆっくりと後ずさりをしてください。

<子クマを見かけたとき>

近くに母クマがいて、子どもを守ろうと襲ってくる恐れがあります。絶対に近づかないようにしてください。

至近距離でばったり遭遇したときは、クマが驚いて襲いかかってくる危険が高くなります。もし襲われたときは、地面に体を伏せて両手で首の後ろを守る防御姿勢をとることで、致命傷を避けるように努めてください。

好奇心が強く人を恐れないクマや、攻撃性の高いクマと遭遇する危険もあります。山に入るときは、襲われたときの最終手段としてクマ撃退スプレーを携行しましょう。

クマ撃退スプレーの携行位置と使い方

クマ撃退スプレーには、唐辛子の成分であるカプサイシンが入っています。クマに襲われたときに、目、鼻、口などの粘膜に焼けつくような刺激を与えて撃退するアイテムです。

携行時にはすぐ取り出せるよう、腰の専用ホルスターなど利き手ですぐに取り出せる位置に入れておくことが大切です。

使用の際にはセーフティ・クリップを外し、クマの顔をよく狙って、風上から一気に全量を噴霧します。刺激物が自分にかからないよう注意してください。クマがスプレーの射程距離に入っていないと効果がないため、使い方と使うタイミングをイメージトレーニングしておきましょう。

クマ撃退スプレーは、テントの周りや近くの草むらに予防として使っても、クマ除けの効果はありません。まずは音を鳴らしてクマとの遭遇を避けるなど、対策をしっかりと行うことが大切です。

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まとめ

気候変動の影響で、クマのエサとなるブナの林そのものが減少しているという報告もあります。クマがエサを求めて人の生活圏に現れる状況は、これからも続いていくと考えた方がよいでしょう。クマに遭遇したときはゆっくりと後退して離れ、車の中や家の中に避難してください。おとなしそうに見えても食べ物を与えたり、写真を撮ろうとして近づいたりするのは、絶対にやめましょう。

<執筆者プロフィル>

山見美穂子

フリーライター・防災士

岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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