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【黒崎煌代さんインタビュー】「映画『見はらし世代』は、僕にとってひとつのピリオドを打てる作品です」

  • 2025.10.9

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』で、趣里さん演じるヒロインの心優しい弟・六郎役で俳優デビューを果たした黒崎煌代さん。2025年10月10日から公開となる主演映画『見はらし世代』が、カンヌ国際映画祭監督週間に選出されました。日本人史上最年少となる26歳での選出となった団塚唯我監督との仕事、俳優としての夢、黒崎さんに聞きました。

何もしない、ということをしています

『ブギウギ』の六郎、初出演した映画『さよなら ほやマン』での、漫画キャラクターのように無垢でかわいいシゲル、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』で演じた、主人公の風変りな友達……。デビュー以来、個性的な役柄を演じ、鮮烈な印象を残している黒崎煌代さん。最新出演作『見はらし世代』では、東京・渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働く高野蓮を演じています。少ないセリフのなか、ごく普通の青年の心情に寄り添うことが求められる役柄でした。

「六郎、シゲルは、僕のキャリアの最初期で、初々しいパワーで芝居をしていました(笑)。あれから2年ほど経ち、いろいろな現場を経験して、今回は、渋谷の街で生きるごく普通の人を演じます。主演と言われますが、両親と姉と、4人家族のうちのひとりで。団塚監督とは『さよなら ほやマン』(2023年)の現場で出会って以来の知り合いで、その僕に“いいところ”の役を投げてくれたわけです。ですから今回は監督とも話して、余計な役作りはせず、『何もしない』ということをしています」

その日、蓮が胡蝶蘭を運んだ先は、著名なランドスケープデザイナーである父、高野初の回顧展会場でした。母を亡くして以来、疎遠だった初との再会。父親への複雑な思い、バラバラになった家族のこと、渋谷という街に暮らす息苦しさ……。繊細な人間ドラマとファンタジー的要素、渋谷の街を捉えるドキュメンタリーのような描写が、不思議なバランスで成立していて、鮮やかな手触りを残します。そんな映画の中心に立ち、緻密に過不足なく表現していく黒崎さん。俳優としてのバランス感覚に改めて驚かされます。

「確かにそれは難しかったところで。過不足なく、というのがポイントでして(笑)。そこが伝わったのならとても嬉しいです。実は撮影中、軌道修正が必要だと思ったことがあったんです。そうした感覚が監督とはすごく合うんですよね。『なんかちょっと足りないよね?』みたいな話をしようというタイミングがふたり同時で、そこがありがたかったです。渋谷のカフェで話をして」

完成した映画には、確かな手ごたえを感じていると言います。

「日本での最初の試写、カンヌ映画祭、それからもう1回……と、3回目ぐらいでようやく冷静に観られましたが、キレイな映画だな、いい映画だな……と思ったんです」

目指すのは、「アメリカ的なお芝居」!

幼い頃から映画が好きで、映画の1シーンを覚えてマネをするのが習慣だったという黒崎さん。中学・高校では1年間に300本ほど観ていたというからかなりのもの。「大学1年はコロナ禍もあって暇で、いちばん映画を観たかもしれません」と笑います。役に対する演じ方に鋭いセンスを感じさせるのは、たくさんの映画を観てきた、その蓄積のおかげかも?

「それしかないと思います。好きな俳優は5~6人いて、ディカプリオ、ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、それからジム・キャリー……この4人は外国人ですが、僕には、アメリカ的なお芝居を日本語で日本人ができたら、という人生を賭けた目標があって。とてもおもしろいものになる気がするんです」

アメリカ的な芝居――先に挙げた好きな俳優を聞けば、なんとなくわかる気もします。

「もちろんアメリカ人すべての俳優がそうではないし、作品にも、脚本にもよると思うんです。でもフランクで自然ななかで、なぜあんなにおもしろい表情ができるんだろう? それでいて自然さが成り立つなら、絶対にそれはおもしろいよね! って」

この映画の蓮も、奥行きのある人間ドラマで、基調はシリアスですが、ここぞ!というときの蓮の表情に、自然に笑いが生まれていました。的確に狙いを定め、それを実体化する演技力……実は、もとは作り手志望だったというのも納得です。

「でも『見はらし世代』を撮って、しばらくは役者に集中しようと思いました。同世代の監督が、これほどに人生を費やして映画を撮っているのを見ていて、俳優が片手間に出来るものではないなと。もちろん逆もそう。我々俳優もお芝居に集中しないとやれないですから」

50代では、二番手、三番手を務めるイケオジに!

俳優として走り出したばかりの黒崎さんですが、この先の未来をどんなふうにイメージするのでしょうか。

「40代、50代から映画の制作に関われたらありがたいですね。50歳は……生きていたらいいなと(笑)。いや、結婚していて子どももいて、仕事はもうベテランの域ですよね。贅沢な目標としては、主演の方のサポートに回り、二番手、三番手を務めるイケオジになっていたら格好よくないですか?(笑)。そのためにはやはり演技力が備わっていないと。元気なだけじゃダメですよね」

スタートダッシュの勢いを大切に、いくつもの作品を経験した今、『見はらし世代』は「ひとつのピリオドを打てる作品」だと胸を張ります。

「たとえば50代の方なら、遠藤憲一さん、井川遥さん演じる、蓮の父と母に自分を投影するはず。あらゆる世代の方に何かを感じていただけるテーマを持つ作品ですので、全世代の方に観てほしいと思っています」

[映画] 『見はらし世代』

ジャケット¥80,300 、パンツ¥38,500/LAD MUSICIAN(LAD MUSICIAN HARAJUKU tel.03‐3470‐6760)、その他/スタイリスト私物


撮影/本多晃子 スタイリング/能城 匠[TRON] ヘアメイク/TOMOE[artifata] 取材・文/浅見祥子

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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