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30年前、“城天”からメジャーへ駆け上がった“関西ロックの風” 主張しすぎない心地よさ

  • 2025.11.17
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「30年前の秋、どんな音が街を走り抜けていたか、覚えている?」

1995年。人々は“派手さよりも心地よさ”を求め始めていた。ラジオから流れるメロディも、どこか肩の力が抜け、やさしい響きが増えていった頃。そんな時代に、秋の風のようにすっと現れた1曲がある。

RAZZ MA TAZZ『Season Train』(作詞:阿久延博・作曲:三木拓次)――1995年10月25日発売

ブルボン「ピックルEX」のCMソングとしてオンエアされ、サビのファルセットが耳に残った人も多いだろう。一度聴けば、どこか懐かしく、それでいて新鮮。そんな感覚を呼び起こす楽曲だ。

“城天”から生まれた関西ポップロックの風

RAZZ MA TAZZは、大阪発のポップロックバンド。シャ乱Qらとともに「すっぽんファミリー」を結成し、大阪城公園駅前ストリート、通称“城天”で路上ライブを行っていた。彼らは地元ファンを中心に人気を集め、関西のライブシーンで頭角を現していく。

1994年に佐久間正英のプロデュースで『Private Eyes』でメジャーデビュー。「美しいメロディーと甘い言語感覚」で注目され、派手な話題よりも、耳に残る旋律で聴かせるタイプのバンドとして、確かな存在感を放っていた。

ファルセットが抜ける瞬間、風が通り抜ける

『Season Train』は、RAZZ MA TAZZの6枚目のシングルとしてリリースされた。イントロから軽やかなギターが駆け抜け、リズム隊が描くタイトなビートが全体を包む。ボーカルの阿久延博の澄んだ声が、季節の移ろいをそのまま音にしたように響く。

特に印象的なのは、サビでふわりと舞い上がるファルセット。その瞬間、音の隙間に“風”が流れ込むような清涼感が生まれる。過度に盛り上がらず、それでいてしっかりと心を掴む。“軽やかで強い”――その絶妙なバランスこそ、RAZZ MA TAZZらしさだった。

CMソングから広がった共感

ブルボン「ピックルEX」のCMソングとしてテレビから流れたことで、『Season Train』は多くのリスナーに届いた。タイアップの影響というよりも、“何度聴いても気持ちが晴れるメロディ”が静かに支持を集めていった

当時のJ-POPがサビで大きく盛り上げる構成を主流としていた中で、この曲は全体を通して自然体。リズムもメロディも控えめで、どこまでも伸びやか。「主張しすぎない心地よさ」が、聴く人の生活の中に溶け込んでいった。

季節を描く、“映像のような音”

タイトルの『Season Train』が示すように、この曲は季節の移り変わりそのものを音で描いている。

ギターのアルペジオは陽だまりのように柔らかく、ドラムの刻みは軽快。どこか遠くの景色を眺めているような開放感がある。夕暮れの駅ホーム、車窓を流れる街の灯り、ふと浮かぶ過去の記憶――そんな“誰にでもある風景”を思い出させるのが、この曲の不思議な力だ。

RAZZ MA TAZZは、時代のスピードに寄りかからず、自分たちのペースで音を紡いでいた。その音楽には、90年代の喧騒の中でも確かに息づく“日常のリアル”があった。30年経った今も、この曲を聴くと胸の奥に風が吹く。

それは、あの頃の秋の空気かもしれないし、忘れかけていた誰かの笑顔かもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。