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20年前、派手な装飾を排して生まれた“静かな輝き” 「歌う」から「語る」へ表現を変えたワケ

  • 2025.11.16

「20年前の冬、あなたは誰と過ごしていましたか?」

街を歩けば、イルミネーションが窓ガラスに反射して、息が白く揺れる。そんな季節に、ふと流れてきたのがあの旋律だった。冷たい風が吹く中でも、なぜか心の奥が温かくなる。それが、安室奈美恵が2005年に放ったこの冬の名曲だった。

安室奈美恵『White Light』(作詞・作曲:Nao’ymt)――2005年11月16日発売

冬の夜を照らすように響くこの曲は、彼女のキャリアの中でも特に“静かな輝き”を放つ存在だ。華やかなステージとは対照的に、ここでは「優しさ」と「祈り」を纏った声が、まるで雪のようにゆっくりと降り積もっていく。

優しさが降り積もるように

『White Light』が発表された2005年、安室奈美恵はデビューから13年を迎えていた。10代で時代の象徴となり、20代で苦悩と再生を経験し「自分の音」をつかみ始めた頃だ。

作詞・作曲を担当したのはNao’ymt。彼が手がけるサウンドは、R&Bの深みとポップスの透明感を融合させ、安室のボーカルの“繊細な呼吸”を際立たせている。

サウンドと安室の歌声が溶け合う瞬間、世界が一瞬、静まり返るような感覚に包まれる。彼女の声は、派手な装飾を排したまま、まるで手のひらで包み込むようなあたたかさを持っていた。

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安室奈美恵-2006年撮影(C)SANKEI

“歌う”よりも“語る”という表現

この曲の最大の魅力は、安室が“歌う”のではなく、“語りかける”ように声を置いていることだ。息づかいが残るほどの近さで紡がれるフレーズは、リスナーそれぞれの心に直接触れる。声量で押し出すのではなく、音の隙間に「想い」を漂わせるような表現。それが彼女の成熟を感じさせる。

Nao’ymtの手によるミニマルなトラック構成も、この“余白の美学”をより際立たせている。リズムは控えめで、ハーモニーの重なりが穏やかに広がる。まるで、冬の夜空に一つずつ灯りが点いていくようだ。

安室奈美恵がこの曲で見せたのは、力強さではなく“寄り添う強さ”。誰かを励ますでもなく、ただ静かに隣に立ち続ける――そんな優しさが、この曲の核にある。

静けさの中にある、確かな光

今聴いても、『White Light』は決して古びない。むしろ、時を経るごとに深みを増している。その理由は、編曲やトレンドに頼らず、声と旋律だけで“感情の体温”を描いたからだ。

雪が降る街を歩きながら、ふと耳にしたとき、自分でも気づかなかった孤独を優しく撫でてくれる。そんな不思議な力を持つ曲だ。

安室奈美恵が引退した今も、この曲は冬になるたびにそっと再生される。彼女の声が、季節とともに思い出を呼び覚ます。それはまるで、あの頃の自分に「大丈夫」と言ってくれているような、永遠のメッセージだ。

静かな夜に聴くたび、あの灯りが再びともる。『White Light』は、20年前の冬から今もなお、私たちの心に降り積もり続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。