1. トップ
  2. timeleszメンバー“初主演ドラマ”初回放送「ものすごく良くて驚いた」“偏見”とのたたかいと家庭の再定義

timeleszメンバー“初主演ドラマ”初回放送「ものすごく良くて驚いた」“偏見”とのたたかいと家庭の再定義

  • 2025.10.10

ふたりのシングルファーザーが共同生活を送りながら子育てに奮闘するテレビ朝日系ドラマ、オシドラサタデー『パパと親父のウチご飯』。第1話から、まっすぐで不器用で、けれど温かな“家族”の姿が、視聴者の心をじんわりと包んでくれた。原作は豊田悠による同名漫画で、主演は松島聡(timelesz)と白洲迅。まったくタイプの違う父親ふたりが、それぞれの子どもと一緒に暮らすという設定自体に新しさがありつつ、その日常は驚くほどリアルで、まるで隣の家から聞こえてきそうな台詞と空気感で満ちている。SNS上でも初回放送後から「あったかい気持ちで観られる、泣ける」「次回も楽しみ」「ものすごく良くて驚いた」と評判だ。

※【ご注意下さい】本記事はネタバレを含みます。

変な家って誰が決めた?偏見を跳ね返す家族のかたち

初回で印象的だったのは、千石哲(松島聡)の娘・愛梨(棚橋乃望)が保育園で友達を叩いてしまったという出来事だ。その原因は「パパしかいない変な家」と言われたこと。シングルファーザー同士がルームシェアをしながら、娘と息子を育てる……そんな家庭に、あからさまに周囲の偏見の目が向けられているのだ。

親ふたりで保育園に迎えに来たり、子どもたちの好き嫌いに悩みながら料理教室にまで通ったり、むしろ丁寧なケアをしているように見えるこの家庭。それでもなお“普通じゃない”と見なされる現実に、ドラマは静かに、しかし確かな意思をもって一石を投じているように見受けられる。

「うちは変だ。よそから見たらすっごく変だ。だけど、よそに負けねえくらい俺たちがめっちゃ楽しい家にしてやる」。松島演じる千石のこの台詞は、あらゆる“違い”や“異質さ”に悩む人たちにとって、大きなエールとなるはずだ。

辛さと甘さを煮込んだ“おうちカレー”が教えてくれること

好き嫌いが多く、まともにご飯を食べようとしない愛梨と清一郎(櫻)にご飯を食べさせるため、千石と晴海昌弘(白洲迅)は壇ゆかり(蓮佛美沙子)が主催している料理教室に参加し、おうちカレーを作る。甘口とスパイスのバランス、具材の工夫、そしてなにより愛情をもってつくることで、子どもたちの食欲を引き出すことに成功する。

この“おうちカレー”は、千石と晴海というふたりの父親の関係性そのものを象徴しているように思える。元ヤン風で感情的、短気で言葉が荒くなりがちな千石と、優しく人あたりも穏やかだが、どこか内に悩みを抱えた静かな晴海。辛口と甘口、叱責と優しさ、陽と陰……ふたりのバランスがあるからこそ、子どもたちは健やかに育つ。

一方で、叱られることや偏見による孤立も描かれるが、それでも最終的に“一緒に食卓を囲む”ことで、家族がもう一度つながっていく。食べること、つくること、そして分かち合うこと。それらが家庭という共同体の“再構築”を支えているのだ。

声高ではない“優しさ”が胸を打つ:白洲迅の静かな存在感

undefined
白洲迅 (C)SANKEI

そんななかで静かに心を打つのが、白洲迅演じる晴海の“声なき演技”だ。劇中では、彼が包丁を握る手が少し震える描写もあり、過去の何かしらのトラウマや事情を感じさせる。しかし、まだそれに対して詳しくは語られない。だからこそ、その沈黙が雄弁に響く。

子どもに向けるまなざし、カレーをつくる手つき、愛梨に声をかけるときの柔らかなトーン。大げさな演技ではなく、息づくような所作で優しさを表現する白洲迅の演技は、日常の延長線上にあるリアリティをしっかり支えていた。

彼はこれまでも多彩な役をこなしてきたが、今回のように静かな役どころでじんわりと印象を残すのはまさに適任。派手ではない代わりに、視聴後にふと胸に残る演技を見せてくれる俳優であると、あらためて感じさせてくれた。

“再構築”されていく暮らしのディテール

壁に貼られた子どもの絵、落書きOKの部屋、親子4人で食卓を囲む時間。そこには、血縁や法律に縛られない“家族”のかたちが描かれていた。

親がふたり、子どもがふたり。血はつながっていたり、いなかったり。だけど、一緒にご飯を食べて、笑って、怒って、話を聞くことで、家族は少しずつ、時間をかけて育まれていく。その過程を丁寧に描く本作は、今後も“家庭”や“親”という言葉の意味を柔らかく問いかけてくれるだろう。

『パパと親父のウチご飯』は、第1話から涙腺をそっと刺激する温かい家庭劇だった。現代社会の偏見や、親としての葛藤をリアルに描きつつも、最終的には“ご飯を囲むこと”の喜びに着地する構成が秀逸である。

白洲迅と松島聡、それぞれの持ち味が活かされたW主演も、今後ますます深みを増していくことだろう。愛梨や清一郎の成長とともに、この“変な家族”は今後、どんな物語を紡いでいくのだろうか。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧・Twitter):@yuu_uu_