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六代目尾上菊五郎をはじめとする大歌舞伎一座の全国巡業記録『戦下の歌舞伎巡業記』

  • 2025.9.17

戦下の歌舞伎巡業の記録を読み解いたノンフィクション

戦下の歌舞伎巡業記
戦下の歌舞伎巡業記

歌舞伎ファン、演劇人にぜひ読んで欲しい新刊ノンフィクションが『戦下の歌舞伎巡業記』著・岡﨑成美(河出書房新社)が発売された。

2018年、著者である岡﨑成美氏の自宅から、古い茶封筒に入った冊子『旅行日誌』が見つかった。
それは岡﨑氏の祖父であり、明治~昭和期に歌舞伎狂言作者として活躍した竹柴薪助氏(1883〜1975)が、1932年~1949年の間に記録した、歌舞伎の巡業日誌。
太平洋戦争をはさんだ怒濤の時代を生き抜いた歌舞伎関係者、演劇人たちの克明な記録をまとめたノンフィクション『戦下の歌舞伎巡業記』(河出書房新社)が2025年8月27日に発売された。

所蔵 早稲田大学
所蔵 早稲田大学演劇博物館

『旅行日誌』には、六代目尾上菊五郎、十五代目市村羽左衛門、六代目坂東彦三郎、六代目大谷友右衛門、七代目澤村宗十郎、十六代目市村羽左衛門、七代目坂東彦三郎(十七代目市村羽左衛門)など、名だたる名優たちとともに、太平洋戦争をはさむ17年間、歌舞伎狂言作者として日本列島を巡業公演した日々のことが、克明に記録されていた。
その記録数は北海道から九州までおよそ250の巡業地、移動距離は約4万kmにもなる。

座頭役者、立女形、出演する役者たち、上演演目、一座のスタッフ詳細、興行主、興行劇場、宿泊旅館や施設、鉄道や船など交通手段、食事の内容、収支詳細。役者と深く関わり、興行全体を目配りする狂言作者による唯一無二の記録は、第一級の歌舞伎史料、演劇史料と専門家も評価している。

藤娘
写真出典『六代目菊五郎』六代目菊五郎記念出版委員会 1950年 改造社
狂言作者の竹柴薪助

編集者としてのキャリアを持つ著者が、膨大な周辺調査を基盤とし、当時の全国紙、地方紙、演劇誌、専門書、鉄道ダイヤ、地図(絵図)、演劇チラシ、企業広告を調査、さらには研究者へのインタビューを実施。歌舞伎への造詣も深い岡﨑氏が解説を入ることで、『旅行日誌』の記録がより鮮明な、人々の物語として立ち上がってくる。

本書は史料であると同時に、怒濤の時代を生き抜いた演劇人たちの胸を震わせる物語、歌舞伎に命を懸けた人々の熱情の記録として、破格に面白いノンフィクションだ。

 

岡﨑成美 Shigemi Okazaki

1956年、埼玉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。文化出版局入社後、「ミセス」編集長、出版局書籍事業部長、文化学園大学造形学部講師、文化学園ファッションリソースセンターセンター長、春陽堂書店編集顧問等を歴任。現在、スコーレ家庭教育振興協会刊行の月刊誌『すこ~れ』編集長。

 

戦下の歌舞伎巡業記

【著者】岡﨑成美
【仕様】四六変型判/並製/272頁
【発売⽇】2025年8⽉27日
【定価】3,520円(税込)

※電子書籍の発売予定はありません。


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