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『脂肪肝』が悪化するかも…秋にこそ気を付けたい“NGな食習慣”とは?【医師の監修】

  • 2025.9.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

ブドウやカキ、リンゴなど、秋は旬の果物が多く、スーパーの店頭にも鮮やかな色とりどりの果実が並びます。
季節の恵みとして親しまれ、ビタミンや抗酸化成分、食物繊維も豊富なことから、つい「体に良い」と安心して食べてしまう人も多いのではないでしょうか。けれど実は、脂肪肝や中性脂肪が気になる人にとっては、注意すべき季節でもあるのです。今回は医師の解説をもとに詳しく見ていきましょう。

肝臓で直接“脂肪”になる果糖。知られざる代謝の落とし穴

果糖は、ブドウ糖と並ぶ代表的な糖質ですが、その代謝のされ方には大きな違いがあります。ブドウ糖が筋肉や脳でも利用されるのに対し、果糖はほぼすべてが肝臓で代謝されるという特徴も。小腸で吸収された果糖は門脈を通じて肝臓へ直行し、インスリンを介さずに処理されます。この過程で、果糖は脂肪酸の合成を促し、肝臓の中に脂肪として蓄積されやすくなります。

つまり、果糖を摂りすぎると、肝臓の中に「脂肪滴」がたまり、脂肪肝の進行を招くのです。

さらに果糖から生まれた脂肪酸は、グリセロールと結びついて中性脂肪(トリグリセリド)となり、VLDL(超低密度リポタンパク質)血液中に放出されます。これが続くと、血中の中性脂肪濃度が上昇し、動脈硬化や膵炎、インスリン抵抗性といったリスクも。
脂肪肝や高トリグリセリド血症は初期症状が出にくいため、気づいたときには進行していた…というケースも少なくありません。

肝臓にやさしい“果物とのつき合い方”

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

とはいえ、秋の果物をすべて避ける必要はありません。大切なのは「食べる量とタイミングを意識すること」です。

果物の摂取量の目安は、1日およそ100〜150gほど。たとえば中サイズのリンゴなら1個、ブドウなら一房の1/3ほどが適量とされています。

また、果糖はエネルギーとして利用されるタイミングが限られています。摂るなら、朝から昼の時間帯がベスト。体が活動モードにある時間帯にエネルギーとして使われやすく、脂肪として蓄積されにくいのです。逆に、夜遅くに食べる果物は、消費されずに肝臓で脂肪として蓄積されるリスクが高まるため、避けたほうがよいでしょう。

ジュースやスムージーなど、液体で果物を摂取する場合にも注意が必要です。液体状では食物繊維が取り除かれていることが多く、果糖の吸収が非常に早まります。これにより肝臓に急激な負荷がかかり、脂肪の合成が加速してしまうのです。

さらに、果物を選ぶときにも工夫ができます。果糖の含有量が少ないものを選ぶことで、肝臓への負担をやわらげることができるのです。たとえば、レモンやライム、ラズベリー、イチゴ、グレープフルーツなどは、果糖が比較的少なく、酸味と食物繊維が豊富なため、代謝のサポートにも役立ちます。

秋の果物は皮ごと食べることも多いため、農薬や保存料の使用が少ないものを選ぶこともポイント。品質の確かなものを選ぶことは、肝臓へのやさしさにもつながります。

体への“優しい向き合い方”を

秋は、体を整え冬に備える準備の季節。だからこそ、季節の恵みをただ楽しむだけでなく、その“甘さの裏にあるリスク”にも少しだけ目を向けてみましょう。

果糖の代謝が肝臓に与える影響を知っておけば、果物を我慢する必要はありません。1日の適量を守り、エネルギーとして活かしやすい時間帯に食べる。なるべく果糖の少ない果物を選ぶ。たったそれだけで、肝臓にやさしい秋の食卓をつくることができるのです。

ほんの少しの工夫が、脂肪肝や中性脂肪のリスクを防ぎ、長い目で見たときの健康に大きな差を生みます。
秋の果物を「健康の味方」にするために、食べ方を見直してみませんか?


寄稿者:用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック 院長 菊池真大

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慶應義塾大学医学部卒業
東海大学医学部客員准教授
米国ペンシルバニア大学消化器内科元博士研究員
日本アルコールアディクション医学会理事
日本総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本人間ドック健診専門医、日本病態栄養学会専門医、日本抗加齢医学会専門医
2024年秋、メタボとロコモを同時予防管理する未来志向型クリニックを東京・用賀の地に開業。

https://www.youga-naika.com/