医師「見た目だけじゃありません」→『内臓脂肪』が体に与える“さまざまなリスク”とは

自分のお腹周りを鏡で見て、「ちょっと脂肪が気になるな」と思うことはありませんか？でも、見た目のぽっこりだけが問題じゃないんです。実は「内臓脂肪」と呼ばれる脂肪は、健康に重大なリスクをもたらす恐ろしい存在。外からはほとんどわからないのに、実は心臓病や糖尿病など、さまざまな病気の引き金になっていることをご存じでしょうか？

今回は、内臓脂肪が健康に及ぼす本当のリスクについて、わかりやすく解説していきます。

なぜ内臓脂肪は見た目以上に危険？その正体と健康リスクを解説

まず知っておきたいのは、脂肪には大きく分けて「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類があるということ。皮下脂肪は皮膚のすぐ下につく脂肪で、つまめる脂肪として馴染みがありますよね。一方、内臓脂肪はお腹の中で腸や肝臓などの内臓の周りに蓄積する脂肪です。

この内臓脂肪が問題なのは、その位置と性質です。内臓脂肪は単に脂肪がたまっているだけでなく、活発にホルモンや炎症物質を分泌し、体の代謝バランスを乱します。例えば、内臓脂肪が増えるとインスリンの働きが悪くなり、「インスリン抵抗性」という状態を生み、2型糖尿病のリスクが高まります。

さらに、内臓脂肪は血圧を上げる原因にもなります。高血圧は心臓病や脳卒中などの重篤な疾患の原因にもなり、内臓脂肪の蓄積がこれらの循環器疾患リスクを高めることが多くの研究で明らかになっています。

このように、内臓脂肪は見た目にはわかりにくいですが、体の中でさまざまな悪影響を及ぼし、無自覚のうちに大きな健康リスクを招くことが大きな特徴です。

お腹の脂肪、見た目で判断できない理由と健康習慣のヒント

鏡の前でお腹を触ったときに感じる柔らかさや硬さは、脂肪の種類を区別するのにあまり役立ちません。内臓脂肪は内臓の表面にくっついているため、皮下脂肪よりも柔らかく感じづらいのが特徴。だから、スリムに見えても内臓脂肪がたまっていることもあります。

日本人の「メタボリックシンドローム」の診断基準の中心には「内臓脂肪面積の測定」があります。CTスキャンなどで測定し、内臓脂肪面積が100平方センチメートル以上あると、生活習慣病のリスクが明らかに上昇するとされています。

実際、内臓脂肪が多い人は糖尿病、高血圧、脂質異常症など複数の要因が重なる傾向にあり、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気につながりやすいです。例えば、内臓脂肪がつくと悪玉コレステロール（LDL）が増え、血管の壁に脂肪がたまって動脈硬化が進みやすくなります。

内臓脂肪は不健康な生活習慣、特に食べ過ぎや運動不足によって増えやすいです。また、年齢と共に代謝が落ちることも影響します。だからこそ、若いうちからの予防が重要。食事では野菜や食物繊維を多く摂り、揚げ物や甘いものは控えめに。適度な運動を取り入れ、体を動かす習慣をつけることが、将来の健康を守ることにつながります。

さらに、毎日のちょっとした習慣として、夕食を軽めにする、夜遅くの間食を避ける、よく噛んで食べるなどの工夫が内臓脂肪の蓄積を防ぐ助けになります。健康診断や人間ドックで内臓脂肪の状況をチェックするのも良いでしょう。

参照：健康日本21アクション支援システム健康づくりサポートネット
https://kennet.mhlw.go.jp/home

内臓脂肪を侮らず、健康をキープしよう

内臓脂肪は「見た目だけの問題ではない」ということ、そしてその蓄積が生活習慣病のリスクを大きく高めることを理解することが大切です。もしかすると、まだ自分には関係ないと思っている方もいるかもしれませんが、健康を守るためには気付いたときにすぐ行動することが重要です。

毎日の食生活や運動習慣を見直し、ストレスや睡眠の質にも気を配りながら、健康的な身体づくりを目指しましょう。内臓脂肪は減らせるものであり、改善すれば心臓病や糖尿病のリスクも大幅に下がります。

お腹周りのサイズだけで自分の健康状態を判断せず、内側の脂肪にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

---

監修者：用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック 院長 菊池真大

慶應義塾大学医学部卒業
東海大学医学部客員准教授
米国ペンシルバニア大学消化器内科元博士研究員
日本アルコールアディクション医学会理事

日本総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本人間ドック健診専門医、日本病態栄養学会専門医、日本抗加齢医学会専門医

2024年秋、メタボとロコモを同時予防管理する未来志向型クリニックを東京・用賀の地に開業。

https://www.youga-naika.com/