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『糖尿病』の人は『認知症』になりやすい?! 医師が教える“まさかの関係性”とは

  • 2025.10.1
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「糖尿病の人は認知症になりやすい」という話を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。どちらも高齢者に多い疾患で、人生の質を大きく左右する健康問題。しかし、この2つの病気がどうして関係するのか、詳しく知っている方は意外と少ないものです。この記事では糖尿病と認知症のつながりについて、わかりやすく解説しながら皆さんの疑問にお答えします。

糖尿病が認知症リスクを高める!そのメカニズムとは?

糖尿病は、インスリンの分泌不足や働きの低下によって血糖値が慢性的に高くなる病気です。高血糖状態が続くと、血管内皮が傷つき、炎症や酸化ストレスを通じて大血管症(動脈硬化)や微小血管症(網膜症・腎症・神経障害)を進めます。その結果、脳の血流が悪くなり、神経細胞に十分な酸素や栄養が行き届かなくなるため、記憶や判断力に影響する可能性があります。

さらに、脳においてインスリンは神経細胞の働きを助け、記憶や学習に関与し、アルツハイマー病の病態に深く関与するアミロイドβの処理にも関わっています。糖尿病でインスリンの働きが弱まると、アミロイドβやタウ蛋白が脳にたまりやすくなり、アルツハイマー病の発症・進行に関連すると考えられています。

実際に、国内外の大規模研究(久山町研究など)では、糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べてアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症を含む認知症リスクが約1.5〜2倍に上昇する報告されています。

日常生活に潜むリスクと認知症予防のポイント

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

では、糖尿病がある人はどうすればリスクを減らせるのでしょうか。第一に血糖コントロールが重要です。血糖値が安定すれば、脳や血管への悪影響を減らすことができます。そのためには、食事療法・運動療法、必要に応じた薬物療法が基本です。

さらに、血圧やコレステロールの管理も不可欠です。これらを良好に保つことで脳血管性認知症のリスクを下げられます。加えて、定期的な運動、趣味や人との交流といった生活習慣も認知機能の維持に役立ちます。観察研究では、週数回のウォーキングや社会活動が認知症リスクの低下と関連していることが報告されています。

食事では、地中海食やDASH食を基盤にした「MIND食」が注目されています。野菜、魚、豆類、ナッツ、ベリー類などを積極的に摂ることが、観察研究で認知症リスクの低下や認知機能維持と関連すると示されています。

日々の小さな積み重ねが将来の認知機能を守る鍵になりますので、糖尿病と診断されたらぜひ生活習慣改善にも力を入れてみてください。

今からできる未来のための備えを

糖尿病は認知症のリスクを高めますが、生活習慣改善と適切な治療によりそのリスクを下げることが可能です。医師や専門家のアドバイスに従いながら、血糖・血圧・脂質を総合的に管理し、運動や食生活の工夫を積み重ねることが重要です。

自分の健康状態をしっかり理解し、必要なケアを継続することが何より大切です。未来の自分のためにも、今日からできることを始めてみませんか?


監修者 加藤大也/たいや内科クリニック 院長

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1997年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、同大学院医学研究科内分泌・代謝内科学修了。2003年4月から同大学医学部内分泌・代謝内科助手を務める。2010年5月、JA愛知厚生連豊田厚生病院内分泌代謝科病棟部長などを経て2022年5月、たいや内科クリニックを開院。糖尿病専門医・総合内科専門医・甲状腺専門医 藤田医科大学医学部客員講師。医学博士 糖尿病、生活習慣病を中心に、日々診療に取り組む。患者さん目線で分かり易い説明がモットー

たいや内科クリニック公式サイト https://taiya-naika.com