1. トップ
  2. 「わずか10日で“新幹線ホームの発車メロディ”終了」なぜJRは中止を決断したのか。異例の事態のワケ

「わずか10日で“新幹線ホームの発車メロディ”終了」なぜJRは中止を決断したのか。異例の事態のワケ

  • 2025.10.15
undefined
出典:Photo AC ※画像はイメージです

駅のホームに響く発車メロディ。近年では、人気アーティストの楽曲が採用されるケースも増え、駅を訪れる楽しみの一つになっています。

しかし2025年10月、新幹線ホームで始まったばかりのある発車メロディが、わずか10日で中止されるという異例の事態が発生しました。人気グループ・SixTONESの新曲が半年間流れる予定だったところ、なぜこれほど早く終了することになったのでしょうか。

好評のスタートにもかかわらず10日での中止に

2025年10月1日、東京駅・上野駅・大宮駅の新幹線ホームで、SixTONESによる新曲「Shine with U」が発車メロディとして流れ始めました。こちらは、新幹線で行く東北の旅の魅力を伝えることを目的とした「Enjoy! SixTONES, Enjoy! ShinKANSEN.」キャンペーンの一環で、3月31日まで使用される予定でした。

利用客からは「旅行気分が高まる」「前向きな気持ちになれる」といった好意的な声が多数寄せられ、JR側も大変好評だったと報告。ところが10月10日、東京駅と上野駅での使用中止が発表されました。大宮駅についても順次中止するとのことです。

中止の理由としてJR東日本が挙げたのは、「ホーム上で柄の長い集音マイクを使用して録音を試みる方が目立つようになり、安全面での懸念が生じた」というもの。

発表文には「新幹線の運行には高圧電流が使用されており、架線に触れなくても近づくだけで感電する恐れがある」との説明も添えられています。

「集音マイク」がなぜ問題に?

では、中止の引き金となった「柄の長い集音マイク」とは何なのでしょうか。

集音マイクとは、近くの音や遠くの音など、周囲の音をクリアに拾うためのマイクのこと。小さな音や遠くの音を拾うために、ポール(柄)が長く伸びたり、指向性マイクが付いていたりするものもあります。

しかし、駅のホームという公共空間では、長い柄のついた機材を使うことで、設備に接触したり、他の乗客の邪魔になったりするリスクが生じます。

特に危険なのは、新幹線の運行には高圧電流が使用されていること。架線に触れなくても近づくだけで感電する恐れがあります。

「柄の長い集音マイク」を伸ばす行為は、人自身が線に近づくだけでなく、マイクの先端が架線や電線系に接近する可能性があり、それが安全上の懸念につながるのです。

JR東日本は注意喚起の案内放送や巡回警備などの対策を講じたものの、状況が改善されなかったため、最終的に発車メロディ自体の中止という判断に至りました。

以前も、2015年にJR西日本では、ホームでの「自撮り棒」を伸ばしての使用は、列車との接触や架線に近づくことによる感電等の危険性があるため、一律禁止すると発表しています。

新幹線や駅のホームで長い棒状のものを使用することは大変危険なので、行わないようにしましょう。

新幹線発車メロディの事例

新幹線ホームで有名楽曲が発車メロディとして使われるのは、今回が初めてではありません。

例えば、JR西日本の山陽新幹線で採用された「銀河鉄道999」。2016年3月から新神戸・岡山・広島・小倉・博多の5駅で発車メロディとして導入されました。

また、東北新幹線水沢江刺駅ホームの発車メロディは、岩手県奥州市出身の大滝詠一さんの代表曲「君は天然色」を採用。郡山駅の発車メロディに採用されたのは、地元出身メンバーで結成された音楽グループGReeeeN(現・GRe4N BOYZ)のヒット曲「キセキ」。このように、地元ゆかりのアーティストの人気楽曲を採用するケースもあります。

このように「鉄道×有名楽曲」の組み合わせは決して珍しくありません。むしろ、駅を訪れる楽しみの一つとして、多くの人に親しまれてきました。それだけに、今回のSixTONESとのコラボが短期間で中止されたことは、旅好きにとってもアーティストのファンにとっても、非常に残念な事態だったでしょう。

安全があってこその楽しい旅

今回の発車メロディ中止は、好評だった企画が短期間で終了するという異例の事態でした。SixTONESのファンにとっても、鉄道ファンにとっても、旅を楽しみにしていた人たちにとっても、残念な結果となったことは確かです。

SNSでも「このためだけに新幹線に乗りに行こうと思っていたのに残念」「悲しいけど、事故が起こる前でよかった」といったコメントが見られました。

一方で、JR東日本が安全面での懸念から中止を決断したことは、公共交通機関としての責任を果たす判断だったといえます。新幹線の架線には高圧電流が流れており、駅のホームは常に安全管理が求められる場所です。

発車メロディという音の演出は、駅を訪れる楽しみの一つとして多くの人に親しまれてきました。今後も音楽と鉄道のコラボレーションが続いていくためには、利用者一人一人が駅のルールを守り、安全に配慮することが欠かせません。

録音を楽しみたい気持ちも、音楽を記憶に残したい思いもあるでしょう。しかし、駅のホームは多くの人が利用する公共空間であり、何よりも安全が最優先される場所です。基本的なルールを守ることが、新幹線の旅を楽しむための大前提となるでしょう。


参考:
Enjoy! SixTONES, Enjoy! ShinKANSEN.(JR東日本)
「Enjoy! SixTONES, Enjoy! ShinKANSEN.」キャンペーンの実施について(JR東日本)
ホーム上での自撮り棒の使用禁止について(JR西日本)
山陽新幹線 主要5駅の「発車予告音」に「銀河鉄道999」の音色を導入します(JR西日本)
GReeeeN「キセキ」と「扉」が JR郡山駅の新幹線・在来線の発車メロディに決定!(GReeeeN Official Website)