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大きな川より小さな川の方が危険? その理由や「バックウォーター現象」を解説

  • 2025.8.1

川幅が狭く、川の長さが短い中小河川では、大雨が降ると一気に水かさが増します。そのため、洪水のリスクが高まりやすい特徴があります。

また、本流の増水によって支流の中小河川の水がせき止められ、逆流して氾濫を引き起こす「バックウォーター現象」も起こりやすいため、注意が必要です。

今回は、中小河川で水害リスクが高い理由やバックウォーター現象について解説します。

中小河川は水害リスクが高い

まず、大雨の際の急激な増水や氾濫など、中小河川の水害リスクが高い理由について解説します。

急に水位が上昇しやすい

中小河川は、大雨が降ると急激に水位が上昇しやすい特徴があります。川の流域面積が小さく川幅も狭いため、降った雨が短時間で集まりやすくなるためです。

また、都市部では、アスファルトなどで地面が覆われているために雨水が地中にしみ込まず、降った雨が短時間で川に流れやすくなります。

そのため、大雨のピークから川が増水するまでの時間が非常に短く、避難する時間的な余裕が少ないことから、注意が必要です。

ハザードマップが完備されていない

中小河川では、洪水ハザードマップが十分に整備されていない地域が多いのが現状です。
2021年の水防法改正により、中小河川も洪水浸水想定区域の指定対象となり、ハザードマップの作成が進められています。

国土交通省によると、中小河川の洪水浸水想定区域は7198河川が指定されていますが、2024年3月末時点で洪水ハザードマップ(想定最大規模)の公表率は約69%(対象となる980市区町村のうち679市区町村が公表)という現状です。

そのため、ハザードマップを見ても、自分の住む地域の水害リスクを十分に把握できず、災害発生時に適切な避難行動がとれない可能性があります。

バックウォーター現象が起こりやすい

バックウォーター現象は、大雨などで本流の水位が急上昇した際に、支流である中小河川の水が本流に流れ込めず、行き場を失うことで逆流や氾濫を引き起こす現象です。

中小河川はバックウォーター現象が発生しやすく、これが水害リスクが高い要因の一つです。
特に本流と支流の合流地点では、本流の増水によって支流の水がせき止められ、水位が急激に上がります。このため、わずかな時間で川があふれてしまい、周辺に浸水被害が広がります。

集中豪雨が増えている

今後もこの傾向は続くことが予想されており、中小河川は集中豪雨による水害リスクが一層高まります。

バックウォーター現象による被害事例

バックウォーター現象による被害事例として、2018年の西日本豪雨で発生した岡山県倉敷市真備地区の水害 が挙げられます。

この災害では、本流の高梁(たかはし)川の水位が急上昇したことで、支流である小田川の水が本流に流れ込めずにバックウォーター現象が発生 しました。

この影響で、小田川やその支流の水位が高い状態が続き、堤防が複数箇所で決壊。倉敷市内の真備地区の約3割にあたる1200ヘクタールが浸水しました。さらに、浸水の深さは約5メートルとなるなど甚大な被害をもたらしています。

なお、この災害によって倉敷市では以下の被害 が発生しました。

・ 死者:52名
・ 家屋全壊:4646棟
・ 家屋半壊:846棟
・ 家屋一部損壊:369棟
・ 床上浸水:116棟
※死者は災害関連死を除く(2020年2月13日現在)
※その他の被害状況は(2019年7月5日現在)

家屋被害の中でも、特に全壊が多いという特徴があります。これは短時間で大量の水が流入し、長時間にわたり深い浸水を被ったことが原因の一つと考えられます。

中小河川の水害で気をつけるポイント

中小河川の水害は急激な増水が起こりやすく、避難する時間の余裕がないことも考えられます。

避難情報が出てからの避難では間に合わない可能性があるため、洪水警報が発表された段階や、雨が強く降り始めた時点で不安を感じる場合は、自主的に避難準備や行動を起こすことが大切です。

さらに、前述したように、中小河川沿いはハザードマップが十分に整備されていない可能性があります。ハザードマップで浸水域に含まれていない場所も、浸水被害が発生する危険性があることに留意しましょう。

特に、ご自宅の位置が川の堤防や橋よりも低い場所にある場合や、過去に浸水したことがある場合は浸水のリスクがあります。自宅と川の位置関係や周囲の地形を確認し、浸水の可能性が少しでもある場合は早めに避難しましょう。

中小河川の水害に備えよう

中小河川の水害が発生した際に迷わず行動できるよう、事前に家族で避難場所や避難経路を共有しておきましょう。避難に備え、飲料水や非常食、懐中電灯、携帯電話の充電器など防災グッズも用意しておくことが大切です。

また、地域の防災訓練や防災ワークショップなどに参加することで、ハザードマップでは把握しきれない地域の中小河川の水害リスクを学べます。日頃の備えや情報収集を重ねることが、中小河川の水害からご自身やご家族の命を守ることにつながります。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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