1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 熱中症や夏に起こりやすい災害からペットを守ろう【獣医師解説】

熱中症や夏に起こりやすい災害からペットを守ろう【獣医師解説】

  • 2025.7.25

台風や豪雨、落雷などにより停電や断水が発生した際には、人間と同様に犬や猫の体調も悪化する場合があります。

近年、風水害の規模が大きくなっていることもあり、日常生活に支障をきたすリスクが高まっています。夏に起こりやすい災害からペットを守るために、備えておきたいことについてご紹介します。

人間よりも犬・猫は熱中症を起こしやすい?

熱中症は、気温の上昇に合わせて発生しやすくなります。真夏の猛暑時はもちろん、気温の上昇や高い湿度に体が慣れていない梅雨の時期は、気温や室温が25度や30度に満たない条件でも熱中症になる場合があります。

また、気温や室温だけでなく、湿度や、風通しの有無によっても体感温度が変わることに注意が必要です。

熱中症に気をつけたい犬・猫とは

犬や猫は人間と異なり、体の熱を汗として逃がすことが難しく、呼吸による熱の発散が続くと熱中症に至る危険性が高くなります。

特に気をつけたいのは、
■老齢の犬・猫
■成長途中で未発達な子犬・子猫
■肥満傾向の犬・猫
■循環器疾患や慢性的な呼吸器疾患など、持病のある犬・猫
■パグやヒマラヤンなど、マズル(動物の目の先から口先までの部分)が短い犬種・猫種
■大型犬 など
です。

熱中症の症状

熱中症の疑いがある際には、

・舌の色が赤くなる
・体温が高い(40℃前後)
・パンティングと呼ばれる浅く速い呼吸がみられる
・食欲がない

といった症状がみられます。また、猫は普段口を開けて呼吸をすることはほとんどないため、そうした様子がみられる場合は体の異常を疑いましょう。

重症になると、下痢、嘔吐、ふらつき、意識朦朧、多臓器の機能不全を生じることがあります。歯茎や舌の色が紫色に変化する「チアノーゼ」を起こしている場合は危険な状態です。適切な治療が遅れた場合、命を落とす危険があります。

熱中症が疑われるときには

愛犬、愛猫がもし熱中症になってしまった場合は、迅速にかかりつけの動物病院に連絡をしましょう。深夜や休診の場合に備え、時間外も対応する病院を確認しておくと安心です。

熱中症は発症から時間が経過するにつれて危険度が上がりますので、迅速に落ち着いて対応するようにしましょう。

応急処置としては、
・全身に常温の水道水をかけて冷やす
・濡れタオルなどで体を包んで熱を逃がす
・首や脇などを重点的に冷やす
といった対応が考えられます。こうした処置により、循環血液を効率よく下げることがポイントです。ただし、早く体温を下げようとして急激に体を冷やすことは避けてください。

動物病院の受診後は、獣医師からの指示に従い対応をとりましょう。

熱中症から愛犬・愛猫を守るために

室温は26度以下に保つようにエアコンを設定し、必要に応じてサーキュレーターや扇風機を使って風通しを良くしましょう。この際、機器からの風が愛犬・愛猫に直接あたらないように気をつけてください。また、昼間はカーテンを活用して、強い直射日光を遮る場所を確保しましょう。

夏の車中に愛犬・愛猫などの動物を置いて離れれば、命を脅かすことになりかねません。高温かつ風通しがない環境は熱中症のリスクが非常に高くなるため、車での放置は絶対に避けましょう。

夏の災害に備えよう

夏は突然の豪雨や台風、洪水、落雷など、私たちの生活の大きな脅威になる災害が発生しやすい時期です。

もし、こうした災害によりライフラインが寸断されると、人間だけでなく動物にとっても健康に影響を及ぼしかねません。

そこで、夏の災害に起こりやすいトラブルと対策についてご紹介します。

停電時の暑さを乗り切る方法

夏は落雷が多く、その影響で停電が発生することがあります。エアコンをはじめ空調機器の多くは電力で賄われており、停電の際には昼夜を問わず住まいの温度が上昇し、熱中症にかかりやすくなります。

このような事態に備え、電源の確保をしておくことが推奨されます。太陽光発電や蓄電池、電気自動車など、家庭に給電設備が整っていると、いざというときに役立ちます。また、ポータブル電源はエアコンのような大量の電力確保には不向きですが、扇風機など小型の家電を動かせます。

今すぐできる対策としては、保冷剤の準備です。あらかじめ冷凍庫・冷蔵庫内で冷やしておくことで、一時的に冷蔵庫内の保温を助けるほか、人間や動物の体温を下げる際にも重宝します。保冷剤で体を冷やす際には、太い動脈の通る頸部やわきを冷やすと効果的です。

断水対策

夏に限らず、愛犬・愛猫が普段使用する水を少なくとも5日分確保しておくことが推奨されています。

特に夏場は体がより多くの水分を必要とします。ペットボトルに水を入れておいたり、ウォーターサーバーのボトルを備蓄しておいたりと、日ごろから必要な水分があるかチェックしておきましょう。

ペットを守るために準備しておきたいグッズ

災害が多く発生する中で、非常時の備えの有無が自身やペットの健康を左右することになりかねません。ペットと一緒に避難することを想定し、防災の観点で準備しておきたいグッズを紹介します。

・水
・食器
・フード
・リードと首輪
・キャリーバッグ
・治療中の場合は薬 など

また、避難時は慌てやすく、はぐれてしまうなど、ペットが一時的に家族と離れる可能性があります。

・ペット手帳
・迷子札
・ペットの写真
・連絡先(飼い主やかかりつけ病院など)のメモ

も、あわせて用意しておくとよいでしょう。

ペット手帳とは、ペットの生年月日や名前、予防接種記録、使用しているお薬などの情報が記入できる手帳です。通院や健康管理といった健康手帳としての役割のほか、災害が発生し避難生活を送る時にはどんな特徴があるか注意点を知るうえで有用です。

また、避難先では、十分なペット用物資を確保できない場合があるため、愛犬や愛猫が普段使用しているタオルやシーツ、トイレグッズがあると安心です。

その他、使い慣れたおもちゃがあるとペットが安心できる材料となります。猫の場合は、逃走予防の観点から、大きめの洗濯ネットがあると便利です。

〈執筆者プロフィル〉
増田国充
ますだ動物クリニック 院長
獣医師・国際中医師・愛玩動物看護士・防災士

元記事で読む
の記事をもっとみる