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2025年下半期に訪れたい展覧会・アート展10選。感性を刺激する出合いを美術館で探して

  • 2025.7.11

1. 女性たちによるアボリジナル・アートで、“今”を紐解く

ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《私の犬、ブルーイーとビッグ・ボーイ》2018年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル Image by Jonathan Daw. © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《私の犬、ブルーイーとビッグ・ボーイ》2018年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル Image by Jonathan Daw. © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council

アーティゾン美術館は、9月21日(日)まで『彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術』展を開催中だ。複数のアボリジナル女性作家に焦点を当てる日本で初となる同展には、伝統文化が深く根付くコミュニティ出身の作家から都市部を拠点とする作家まで7名と1組が参加。52点の出品作品を通して、複層的で多面的な現代アボリジナル・アートの「今」を考察する。

オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートは、近年国際的な現代美術として注目を集めている。2024年のヴェネツィア・ビエンナーレでオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞するなど、世界的な評価を高めた。現代、アボリジナル・アートが興隆した1970〜80年代は男性中心だったが、女性作家たちはその立場を逆転させ、今やオーストラリアのアートシーンを牽引する存在に。バティック、ジュエリー、編み物、吹きガラス、映像、彫刻など、彼女たちの創作手法や素材は多岐にわたり、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興といった幅広いテーマを探求。オーストラリアで進む脱植民地化の言説をアートを通して実践する。

イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke
マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke
ジュディ・ワトソン《赤潮》1997年、顔料、パステル・カンヴァス、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Judy Watson / Copyright Agency, Image © Art Gallery of New South Wales
ジュディ・ワトソン《赤潮》1997年、顔料、パステル・カンヴァス、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Judy Watson / Copyright Agency, Image © Art Gallery of New South Wales

彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術

会期/〜9月21日(日)

会場/アーティゾン美術館 6・5階展示室 東京都中央区京橋1-7-24

開館時間/10:00〜18:00(毎週金曜日は20:00まで)

・入館は閉館の30分前まで

入場料/ウェブ予約チケット1,800円、窓口販売チケット2,000円、学生無料(要ウェブ予約)

・日時指定予約制

・予約枠に空きがあれば、美術館窓口でも購入可

・中学生以下はウェブ予約不要

・同時開催の展覧会「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」も観覧可能

休館日/月曜(7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日(水)、8月12日(日)、9月16日(火)

https://www.artizon.museum/

2. 意識や心の在り方から、自然災害と防災を捉え直す異色の企画展

会場風景(ギャラリー2)撮影:木奥恵三
会場風景(ギャラリー2)撮影:木奥恵三

21_21 DESIGN SIGHTで、企画展『そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–』がスタート。11月3日(月・祝)まで開催中だ。ビジュアルデザインスタジオ・WOWを展覧会ディレクターに迎え、自然災害大国である日本において、防災への向き合い方を深く問い直す。

WOWは、防災の「情報」だけでなく、私たちの「意識や心の在り方」に焦点を当てて構成。会場には防災や災害に関する10の問いを散りばめ、来場者は地震や水害のデータビジュアライゼーション、防災に関するプロダクト、災害をきっかけに生まれたプロジェクトなどを通じて、自らの思考を巡らせ、他者の多様な考えに触れることができる。さらに、過去の伝承から未来の研究まで多角的な視点を提供。いつか訪れるかもしれない“そのとき”への静かな備えと、困難をしなやかに乗り越えるための心の支えとなることを目指す。

会場風景(ロビー)《防災さんぽ》撮影:木奥恵三
会場風景(ロビー)《防災さんぽ》撮影:木奥恵三
ゲヒルン株式会社「特務機関NERV防災アプリ」
ゲヒルン株式会社「特務機関NERV防災アプリ」
会場風景(サンクンコート) veig)《蒸庭》撮影:木奥恵三
会場風景(サンクンコート) veig)《蒸庭》撮影:木奥恵三

そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–

会期/〜11月3日(月・祝)

会場/21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2 住所/東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン

開館時間/10:00〜19:00

・入場は18:30まで

休館日/火曜(9月23日は開館)

入場料/一般1,600円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料 https://www.2121designsight.jp/

3. 多様な共存と未来都市を「森」で表現。藤本壮介初の大規模個展

2025年大阪・関西万博《大屋根リング》 提供:2025年日本国際博覧会協会
2025年大阪・関西万博《大屋根リング》 提供:2025年日本国際博覧会協会

建築家・藤本壮介の初となる大規模個展『藤本壮介の建築:原初・未来・森』が、東京・六本木の森美術館で、11月9日(日)まで開催中だ。藤本は現在、2025年大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーを務め、《大屋根リング》の設計者としても注目を集める、いま最も注目される日本の建築家のひとり。個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地でさまざまなプロジェクトを展開している。

藤本の建築実践を「森」というコンセプトで紹介する同展は、活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで8セクションで構成。約30年にわたる歩みや建築的特徴、思想を概観する。模型や設計図面、竣工写真に加え、インスタレーションや空間を体験できる大型模型、モックアップ(試作モデル)などを展示し、建築に携わる人に限らず、藤本建築のエッセンスを体感できるのは、現代美術館ならでは。未来の都市像の提案を通し、建築の存在意義や可能性についての考察も試みる。

展示される《大屋根リング》の5分の1模型は、その内部に入ることも可能。プロジェクションマッピングで建築が生み出す動的な空間を可視化する《ゆらめきの森》や、データサイエンティストの宮田裕章との共同で未来の都市像を提案する《未来の森 原初の森—共鳴都市 2025》の展示も実施する。建築は私たちの暮らしをどう変えうるのか──、さまざまな展示を通じて、建築は単なる箱ではなく人々の活動によって生成される動的な空間であり、多様な存在を包み込む可能性を持つことを実感できるはずだ。

《ハンガリー音楽の家》2021年 ブダペスト 撮影:イワン・バーン
《ハンガリー音楽の家》2021年 ブダペスト 撮影:イワン・バーン
《武蔵野美術大学美術館・図書館》2010年 東京 撮影:阿野太一
《武蔵野美術大学美術館・図書館》2010年 東京 撮影:阿野太一
《白井屋ホテル》2020年 群馬 撮影:田中克昌
《白井屋ホテル》2020年 群馬 撮影:田中克昌

藤本壮介の建築:原初・未来・森

会期/~11月9日(日)

会場/森美術館 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F

営業時間/10:00~22:00、火曜~17:00まで

・8月27日(水)は17:00まで、9月23日(火)は22:00まで

・入館は閉館時間の30分前まで

入場料/平日 一般 2,300円、シニア(65歳以上)2,000円、学生(高校・大学生)1,400円、中学生以下 無料、土日・休日 一般 2,500円、シニア(65歳以上)2,200円、学生(高校・大学生)1,500円、中学生以下 無料

・日時指定予約制だが、空きがある場合は当日窓口でも購入可能

休館日/会期中無休

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/

4. “夢”の世界を解き明かす。原美術館ARCで『トロイメライ』展がスタート

ジョナサン ボロフスキー《私は夢みた・・・》 1983年 紙にアクリル絵具、シルクスクリーン 196.5 x 248cm ©Jonathan Borofsky
ジョナサン ボロフスキー《私は夢みた・・・》 1983年 紙にアクリル絵具、シルクスクリーン 196.5 x 248cm ©Jonathan Borofsky

群馬県渋川市の原美術館ARCにて、7月12日(土)から『トロイメライ』展が開催される。「トロイメライ」は、ドイツ語で「夢のような」「夢見心地」を意味する言葉。ロマン派の作曲家ロベルト・シューマンの楽曲名でもよく知られている。そんな言葉をタイトルに冠した同展では、「夢」「夢を見ること」をキーワードに、誰もが身近に感じながらも謎めいた「夢」の多様な側面を紐解く。

目に映る現実の風景が個人的な感情によって変化し、誰かと共有することが難しいと感じた経験はあるだろうか。あるいは、小説や映画に没入しているあいだ、あなた自身はどこにいるといえるのか。今やデジタルの画面のなかと生身の体の間を行ったり来たりする私たちにとって、現実とフィクションを完全に切り離すことは難しく、私たちは常に幾重にも折り重なった「夢」を現実に見ている状態であるといえるのかもしれない。そんな考え方を基に、同展では“不確かな”イメージを捉えようと、アーティストたちが試みた多様な表現を通して、鑑賞者一人ひとりがこの場所で新たな“夢見ごと”を立ち上げることを促す。

会場は、現代美術ギャラリーと特別展示室・觀海庵に分かれる。現代美術ギャラリーでは、奈良美智の《Eve of Destruction》や大竹伸朗の《網膜 #2 (紫影)》のほか、ジョナサン・ボロフスキー、アンゼルム・キーファー、マーク・ロスコなどの作品が並ぶ。觀海庵では、狩野永徳の《虎図》や、初展示となる円山応挙の《山水図屏風》などを展示替えを行いながら紹介する。

原美術館ARCは、群馬県渋川市に位置し、旧原美術館(東京)とハラ ミュージアム アークが統合・改称し、2021年4月にリニューアルオープンしたもの。建築家・磯崎新が手がけた建物は、現代美術に適した自然光が降り注ぐギャラリーと、書院造をモチーフにした静謐な和風空間の觀海庵を持つ。館内に展示された、草間彌生アンディ・ウォーホルらの常設作品も見逃せないが、空間そのものも存分に楽しみたい。

ジョナサン ボロフスキ―《割れたピカソの夢》1990年、リトグラフ、シルクスクリーン、143.5 × 100.3 ㎝ ©Jonathan Borofsky
ジョナサン ボロフスキ―《割れたピカソの夢》1990年、リトグラフ、シルクスクリーン、143.5 × 100.3 ㎝ ©Jonathan Borofsky
フランチェスカ ウッドマン 《Seven Cloudy Days, Rome》 1977-78年 ゼラチンシルバープリント25.4 x 20.3 ㎝ ©The Estate of Francesca Woodman, Courtesy George and Betty Woodman and Victoria Miro, London
フランチェスカ ウッドマン 《Seven Cloudy Days, Rome》 1977-78年 ゼラチンシルバープリント25.4 x 20.3 ㎝ ©The Estate of Francesca Woodman, Courtesy George and Betty Woodman and Victoria Miro, London
狩野永徳《虎図》 桃山時代 一幅 紙本墨画 (2025年7月12日から9月1日まで展示予定)
狩野永徳《虎図》 桃山時代 一幅 紙本墨画 (2025年7月12日から9月1日まで展示予定)

トロイメライ

会期/7月12日(土)~1月12日(月・祝)

会場/原美術館ARC 群馬県渋川市金井2855-1512

開館時間/9:30~16:30(入館は16:00まで)

入場料/一般1,800円、70歳以上1,500円、大高生1,000円、小中生800円

休館日/木曜

・8月は無休

https://www.haramuseum.or.jp

5. 第二次世界大戦終結から80年。衣服が語る戦争の記憶と平和への願い

「戦争柄」の着物 日本 昭和15年
「戦争柄」の着物 日本 昭和15年

文化学園服飾博物館は、7月16日(水)から9月20日(土)まで、企画展『戦後80年企画 衣服が語る戦争』を開催。第二次世界大戦終結80年の節目として、日清・日露戦争下の明治時代後期から昭和20年の終戦まで、約50年間の人々の衣生活の変化や、戦争が衣服と人々の生活に及ぼした影響を深く掘り下げる。

同展は、「戦争の熱気が産む流行」、「被服協會の活動」、「戦争に翻弄される人々の衣生活」、「戦後も続く混乱と新しい衣生活」、「平和を願って」の5つの章で構成。戦勝への期待を込めて作られた着物や、戦時下の物資不足のなかで着用された活動衣(もんぺ)、国民服といった日本の戦時下の衣服を展示。さらに、同時期の欧米のドレスファッション誌、被服協會が調査のために収集したアジア各地の民族衣装、平和へのメッセージが込められた衣服などを紹介するなど、衣服を通じた戦中・戦後の文化史を多角的に考察する。

婦人標準服 日本 昭和18年
婦人標準服 日本 昭和18年
衣料切符 日本 昭和19年
衣料切符 日本 昭和19年
戦艦柄の布団地 日本 明治38年頃
戦艦柄の布団地 日本 明治38年頃
供出を呼びかける柄のスカーフ イギリス 1944年頃
供出を呼びかける柄のスカーフ イギリス 1944年頃

戦後80年企画 衣服が語る戦争

会期/7月16日(水)〜9月20日(土)

会場/文化学園服飾博物館 東京都渋谷区代々木3-22-7

営業時間/平日 10:00〜16:30、土 10:00〜15:00

・入館は閉館の30分前まで

入場料/一般1000円、学生500円、小学生以下無料

休館日/日曜、祝日、8月8日(金)〜17日(日)

https://museum.bunka.ac.jp/exhibition/exhibition5986/

6. 来場者が主役! 夏のPLAY! MUSEUMで体験する『大どろぼうの家』

『⼤どろぼうの家』ティザービジュアル © Maiko Dake © Tomi Ungerer Estate and Diogenes Verlag AG, Zurich © Thienemann-Esslinger Verlag GmbH © Shinsuke Yoshitake
『⼤どろぼうの家』ティザービジュアル © Maiko Dake © Tomi Ungerer Estate and Diogenes Verlag AG, Zurich © Thienemann-Esslinger Verlag GmbH © Shinsuke Yoshitake

東京・立川のPLAY! MUSEUMは、7月16日(水)から9月28日(日)まで、没入体験型エンターテインメント『大どろぼうの家』展を開催する。

テーマは、古今東西の物語に数多く描かれ、超人的な能力や謎めいた存在として人々に惹かれてきた「どろぼう」だ。来場者自身が物語の主役となる点が最大の特徴となる同展では、最後の盗みに出ている留守中の有名な「大どろぼう」の家に、来場者がこっそり忍び込むというユニークな設定で構成される。来場者は謎が謎を呼ぶコレクションを見ながら、大どろぼうの家から無事に抜け出て、その正体を突き止めることを試みる。

展示室は回廊、応接室、隠し部屋など8つの特徴的な空間に分かれ、「緑の回廊」には伊野孝行が描いた石川五右衛門など古今東西の大どろぼうの肖像画が並ぶ。「青の応接間」は幅允孝がブックディレクションを担当。大どろぼうが引退を決意した秘密のヒントも隠されているのでぜひ探し当ててみたい。「トリコロールの廊下」ではヨシタケシンスケが描き下ろした絵本の原画が展示される。

参加クリエイターには、新井風愉、嶽まいこ、張替那麻、名久井直子などが名を連ね、多角的な視点からどろぼうや人間の不思議さ、面白さを、新たな没入体験と共に提案する。さらに、絵本作家のヨシタケシンスケが同展に合わせて書き下ろした絵本『まだ大どろぼうになっていないあなたへ』をはじめとする4冊の関連書籍や、どろぼうモチーフのオリジナルグッズの販売も予定している。

ティザービジュアル © Maiko Dake
ティザービジュアル © Maiko Dake
ティザービジュアル © Maiko Dake
ティザービジュアル © Maiko Dake
《⽯川五右衛⾨》伊野孝⾏作
《⽯川五右衛⾨》伊野孝⾏作

大どろぼうの家

会期/2025年7月16日(水)〜9月28日(日)

会場/PLAY! MUSEUM 東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2F

営業時間/10:00〜18:00

・最終入場は17:30

入場料/一般1,800円、大学生1,200円、高校生1,000円、中学生600円、小学生600円、未就学児無料

休館日/会期中無休

https://play2020.jp/article/dorobou/

7. 個人そして集団として、社会における体を捉える現代美術グループ展

Nefeli Papadimouli | 《Être forêts (We Are Forests) 》| 2021 | Video installation | 13分43秒 ©Nefeli Papadimouli- Collection FRAC Grand Large — Hauts-de-France
Nefeli Papadimouli | 《Être forêts (We Are Forests) 》| 2021 | Video installation | 13分43秒 ©Nefeli Papadimouli- Collection FRAC Grand Large — Hauts-de-France

銀座メゾンエルメス ル・フォーラムは、7月19日(土)から、フランス・ダンケルクの現代美術地域コレクション「FRAC Grand Large(フラック・グラン・ラルジュ)」との協働によるグループ展『体を成す からだをなす – FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展』を開催する。

フランス語の「Faire Corps:一体となる、調和する」に基づいた本展。「FRAC Grand Large」ディレクターのケレン・デトンとともに、“社会的身体”をテーマにしながら、ヨーロッパ(フランス、イギリス、ベルギー、イタリア、ギリシャ、ルーマニア)、アメリカ、日本出身の13人のアーティストによる、1973年から2025年までの作品を紹介。体と密接に結びついた芸術形式であるパフォーマンスとして、ヘレン・チャドウィックのジェンダーを問う《In the kitchen》や、アンドレ・カデレの《丸い木の棒》、1970年代を代表する写真など、さまざまな作品を通して個人あるいは集団的に機能する社会的な体を浮き彫りにする。

「FRAC Grand Large」は、その前身である「FRAC Nord ― Pas de Calais(フラック・ノール=パ・ド・カレ)」がリールに設立。1996年にダンケルクへの移転を経て、現在までに750人のアーティストやデザイナーと2000点を超える公共コレクションを形成してきた。現代社会とアートの課題への取り組みとして、近年では他機関との協働を通じたエコシステムを構想する試みを続けており、今回の企画展もその一環となる。

Kohei Sasahara | 《Sunny》 | 2016 | Photo_ Aurélien Mole© Kohei Sasahara – Collection Frac Grand Large ー Hauts-de-France
Kohei Sasahara | 《Sunny》 | 2016 | Photo: Aurélien Mole© Kohei Sasahara – Collection Frac Grand Large ー Hauts-de-France
Christine Deknuydt | 《Faire l‘autruche》 | 制作年不明 | Photo_ Ludovic Linard | ©Arlette Deknuydt- Collection Frac Grand Large ― Hauts-de-France
Christine Deknuydt | 《Faire l‘autruche》 | 制作年不明 | Photo: Ludovic Linard | ©Arlette Deknuydt- Collection Frac Grand Large ― Hauts-de-France
Nefeli Papadimouli | 《Relational cartography》 / Être forêts (We Are Forest) (Dunkerque, June 2021) | 2024 ©Nefeli Papadimouli and The Pill®
Nefeli Papadimouli | 《Relational cartography》 / Être forêts (We Are Forest) (Dunkerque, June 2021) | 2024 ©Nefeli Papadimouli and The Pill®

体を成す からだをなす – FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展

会期/7月19日(土)〜10月12日(日)

会場/銀座メゾンエルメス ル・フォーラム 8・9階 東京都中央区銀座5-4-1

開館時間/11:00〜19:00(入場は18:30まで)

休館日/水曜

入場料/無料

問い合わせ先/03-3569-3300

https://www.hermes.com/jp/ja/content/maison-ginza/forum/250719/

8. 野口哲哉の3年ぶりの大型個展。鎧をまとった人間像約75点が登場

《floating man》2025年 ミクストメディア Photo:⻑橋睦
《floating man》2025年 ミクストメディア Photo:⻑橋睦

神奈川県箱根町の彫刻の森美術館にて、7月19日(土)より、現代美術作家・野口哲哉の個展『野口哲哉 鎧を着て見る夢 –ARMOURED DREAMER–』が開催。

野口は「鎧と人間」をテーマに、文明社会や人間への好奇心を追求する作風で知られる現代美術作家だ。アイコンである鎧兜を“生物の殻”として考え、「殻をまとった人間は決して別次元や芝居事の住人ではなく、時代や環境に対応しただけの姿」と語る。その作品は一見古びて見えるが、すべて樹脂やアクリルといった現代的な素材で制作。リアリティーや多様性といったコンセプトが込められ、時代や環境に対応した人間の姿を肯定的に表現している。

野口にとって3年ぶりの大型個展となる同展では、1969年の開館当初の姿を残す本館ギャラリーを会場に、新作を含む立体・平面作品約75点を展示。10月中旬には先端デジタル技術を用いた新作も追加予定だ。国内初の野外美術館として開館したギャラリーの特性を生かした展示にも注目したい。

《RING AND MAN》2024年 ミクストメディア Photo:長橋睦
《RING AND MAN》2024年 ミクストメディア Photo:長橋睦
《甲冑武⼈⾃転⾞乗⾞出陣影》2008年 紙にアクリル彩⾊
《甲冑武⼈⾃転⾞乗⾞出陣影》2008年 紙にアクリル彩⾊
《Clumsy heart》2018年 ミクストメディア
《Clumsy heart》2018年 ミクストメディア

野口哲哉 鎧を着て見る夢 –ARMOURED DREAMER–

会期/7月19日(土)〜2026年1月12日(月・祝)

会場/彫刻の森美術館 本館ギャラリー 神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1121

開館時間/9:00〜17:00

・入館は閉館の30分前まで

入館料/大人2,000円、大学・高校生1,600円、中学・小学生800円、未就学児無料

休館日/なし

https://www.hakone-oam.or.jp

9. 描かれるのは、新たな生き方の実践。“身振り”を通して社会構造を可視化

ジョナタス・デ・アンドラーデ《Jogos Dirigidos (Directed Games)》2019年
ジョナタス・デ・アンドラーデ《Jogos Dirigidos (Directed Games)》2019年

開館30周年を記念し東京都現代美術館が、国内外の幅広い世代のアーティスト約30組が一堂に会する大規模な国際展『日常のコレオ』を開催する。

タイトルにある「コレオ=コレオグラフィー(振付)」は、制度や慣習に規定される言動と、それに対する批評的応答、つまり日常を異化し新たな生き方を創出する実践を指し示す。同展では、ジェンダー規範に基づく家庭から都市空間まで、異なる場所における人々の営みや身振りに着目。社会構造に組み込まれた見えない暴力や抑圧の力学を可視化しつつ、人々の経験や抵抗の身振りに光を当てる。

青山悟、出光真子、上原沙也加など、アジアを中心に、15を超える国と地域を拠点に活動するアーティストが参加。絵画、写真、インスタレーション、映像、パフォーマンスなど幅広い表現を紹介する。アーティストたちとの密接な協働により構成される本展は、生の諸条件に対する複層的な視座を提示し、多元的な社会の成熟に向けた想像と対話の場となるはずだ。

深川・木場や東京近郊の移民コミュニティに関する新作も多数発表されるほか、会期中にはパフォーマンスやワークショップも予定されている。

上原沙也加《眠る木》2018 年
上原沙也加《眠る木》2018 年
青山悟《Embroiderers (Dedicated to unknown Embroiderers) #7》2015年 撮影:宮島径©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
青山悟《Embroiderers (Dedicated to unknown Embroiderers) #7》2015年 撮影:宮島径©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
出光真子《主婦の一日》1977年 ©Idemitsu Mako
出光真子《主婦の一日》1977年 ©Idemitsu Mako

日常のコレオ

会期/8月23日(土)~11月24日(月・振休)

会場/東京都現代美術館 企画展示室1F/B2F、ホワイエ 東京都江東区三好4-1-1

開館時間/10:00~18:00

・8・9月の金曜は21:00まで

・最終入場は閉館30分前まで

休館日/月曜、9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館

観覧料/一般2,100円、大学生・専門学校生・65歳以上1,100円、中高生500円、

小学生以下無料。ツインチケット(一般2枚) 3,500円

・9月13日(土)・14日(日)は学生無料デー

問い合わせ先/03-5245-4111(代表)

https://www.mot-art-museum.jp/exhibition/choreography-of-daily-life/

10. 民藝誕生100年を機に、京都と日常の美の真髄に迫る

旧上田恒次家住宅(撮影:原田祐馬)
旧上田恒次家住宅(撮影:原田祐馬)

9月13日(土)から12月7日(日)まで、京都市京セラ美術館で、特別展『民藝誕生100年—京都が紡いだ日常の美』が開催される。思想家の柳宗悦、陶工の河井寬次郎、濱田庄司らが京都に集い、1925年に「民衆的なる工芸=民藝」という言葉が誕生してから今年で100年。この節目を記念し、民藝と京都の深いかかわりを総合的に紹介する。

1923年、関東大震災で被災した柳は翌年京都に転居。約10年京都で暮らした。その間、河井や濱田とともに江戸時代の遊行僧・木喰(もくじき)が残した仏像・木喰仏の調査旅行をし、議論を深めるなかで、「民藝」という言葉が誕生した。かれらはその後、京都の朝市などで雑器の蒐集を本格的にスタートし、人々の衣食住の概念を変革させていく。民藝運動はその後、京都から日本そして世界へと広がっていく。

同展では、この言葉が生まれる契機となった木喰仏をはじめ、京都・上賀茂に制作集団「上加茂民藝協団」を設立した黒田辰秋や青田五良らの作品、河井や濱田、バーナード・リーチが手がけた工芸作品を展示。柳らが日本全国で蒐集した日常の道具類や、《水色治芒雁紋様紅型衣裳》、《霰釜》といった蒐集品のほか、河井寬次郎の《白地草花絵扁壺》、《象嵌鉢》、富本憲吉の《色絵「福貴」角筥》といった民藝の個人作家による優品も紹介する。さらに、精神科医で木喰仏の調査など民藝運動に当初から関わった式場隆三郎の自邸にも着目。民藝の代表的建築とされるその住宅を通じて民藝の思想と運動の展開に焦点を当てる。また、京都における民藝運動の推進者や支援者であった寿岳文章、鍵善良房、祇園十二段家、上田恒次などをめぐる作品や資料も展示するなど、京都が紡いできた日常の美を多角的に掘り下げる。

木喰上人《地蔵菩薩像》1801年日本民藝館蔵
木喰上人《地蔵菩薩像》1801年日本民藝館蔵
《馬ノ目皿》19世紀アサヒグループ大山崎山荘美術館蔵
《馬ノ目皿》19世紀アサヒグループ大山崎山荘美術館蔵
黒田辰秋《螺鈿くずきり用器/岡持ち》1932年鍵善良房蔵撮影:伊藤信
黒田辰秋《螺鈿くずきり用器/岡持ち》1932年鍵善良房蔵撮影:伊藤信

特別展 民藝誕生100年—京都が紡いだ日常の美

会期/9月13日(土)〜12月7日(日)

会場/京都市京セラ美術館 本館 南回廊1F 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124

営業時間/10:00〜18:00

・入館は17:30まで)

入場料/一般:2,000円、高校・大学生 1,500円、中学生以下:無料

・ペアチケット3,400円あり(一般のみ)

休館日/月曜(祝日の場合は開館)

TEL/075-771-4334

https://kyotocity-kyocera.museum/

Text: Aya Hasegawa

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