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【60代エンタメ】オダギリジョー×髙石あかり×松たか子共演の映画『夏の砂の上』は長崎の夏が匂い立つ日本映画

  • 2025.7.3

オダギリジョーさん主演・共同プロデュースのもと、松たか子さん、満島ひかりさん、森山直太朗さん、光石研さんら実力派俳優と、髙石あかりさん、高橋文哉さんら旬の若手俳優が共演した映画『夏の砂の上』。7月4日(金)より全国公開です。

長崎の街を舞台に、愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女がそれぞれの痛みと向き合いながら、夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく再生の物語。心の機微を繊細に描いた人間ドラマの見どころを紹介します。

ストーリー

雨が降らない、夏の長崎。幼い息子を亡くした喪失感から妻・恵子(松たか子)と別居中の小浦治(オダギリジョー)。働きもせずふらふらしている治の前に、妹・阿佐子(満島ひかり)が、17歳の娘・優子(髙石あかり)を連れて訪ねてくる。阿佐子は1人で博多の男の元へ行くため、しばらく優子を預かってくれという。こうして突然、治と姪の優子との同居生活がはじまることに。高校へ行かずアルバイトをはじめた優子は、そこで働く先輩の立山(高橋文哉)と親しくなる。不器用だが懸命に父親の代わりをつとめる治との二人の生活に馴染んできたある日、優子は、恵子と治が言い争う現場に鉢合わせてしまう。

【見どころ1】喪失感が少しの希望に変わる再生の物語

幼い息子を亡くし喪失感を抱えたまま生きる治と、母親の都合に振り回され、父親の愛情を知らないまま育った姪の優子。ひと夏の共同生活を送るなかで互いの孤独を少しずつ癒し、静かに心が通じ合うまでを描いた作品です。

働いていた造船所がなくなった治(オダギリジョー)はため息をついてばかりで仕事を探す気力も失ってしまっているのですが、妻(松たか子)や元同僚(光石研、森山直太朗)は過去にとらわれ過ぎることなく次へと歩みを進めていますし、優子(高石あかり)の母(満島ひかり)はどんどん前進するパワフルな女性。他の登場人物と比べて治と優子だけが立ち止まっているので、鑑賞する側は少しもどかしく感じつつも、ふたりが前を向くまでを見守る気持ちになるのではないでしょうか。

【見どころ2】長崎の夏が匂い立つようなカメラワーク

映画の舞台は、長崎の街。坂道と石段が多く、時折猫を見かけ、見下ろせば海が広がり、市街地には路面電車が走る。雨が降らず暑い日が続いたかと思えば大雨が降り、スクリーンからは夏の暑さや雨上がりの様子が匂い立つよう。オール長崎ロケならではの独特のカメラワークにも注目です。

【見どころ3】研ぎ澄まされたセリフで感情の変化が際立つ

『夏の砂の上』の原作は戯曲で、幾度となく舞台で上演されてきた作品。登場人物たちはみな自分の気持ちを言葉にするのがあまり得意ではなく、その分セリフは少なめでどこか不器用さを感じます。おしゃべりに見える治の妹・阿佐子ですら、器用に生きているとは言い難いです。だからこそ、感情が動いた時の変化が際立ち、舞台上演を重ねて研ぎ澄まされてきたセリフが心に響きます。

【ここにも注目!】何杯もの麦茶が演出する“渇き”

作中のできごとの多くは主人公・治の自宅やその周辺で起きているため、生活のなかでの動作が自然と出てきます。急に治の妹と姪が家に来た時、スーパーやコンビニで買った弁当を食べる時、買い物やバイトから帰って来た時、たまに手づくりしたごはんを食べる時。その都度、治や優子が冷蔵庫から麦茶ポットを出してコップにお茶を注ぎ、ごくごく飲むシーンが登場しています。長崎の夏の暑さからくる喉の渇きはもちろん、飲んでも飲んでも潤わない心の渇きのようなものも同時に表しているように感じました。

様々な角度からの演出で、登場人物たちの心の機微を繊細に描いた『夏の砂の上』。人生いろいろと経験してきた大人の女性にこそおすすめの作品です。

作品情報

『夏の砂の上』
7月4日(金)公開

出演:オダギリジョー、髙石あかり、松たか子、森山直太朗、高橋文哉、満島ひかり、光石研
監督・脚本:玉田真也
原作:松田正隆(戯曲『夏の砂の上』)
音楽:原摩利彦

配給:アスミック・エース
(C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会

この記事を書いた人 富田夏子

エンタメ&フード分野が得意なライター歴20年の経験を活かし、「映画ごはん研究家」として “映画とごはんをつなぐメディア”をSNS上で運営。映画と食に関連する情報や体験をシェアしている。 雑誌やWEBへの映画レビュー連載歴は13年で、俳優や映画監督のインタビューを多数手がける。料理取材の試食は残さず食べる食いしん坊。

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