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火元別の初期消火のやり方! 消火器の使い方も解説

  • 2025.4.21

火災が発生したら、周囲に大声で知らせ、消防に通報するとともに、炎が大きくなる前に消火活動を行うことが重要です。

初期消火の方法や消火器の選び方などを、分かりやすく紹介します。

 

初期消火とは?

東京消防庁が行った火災の実態調査によると、住宅火災の多くは調理用のコンロ、電子レンジ、たばこ、ストーブなどの身近なものが原因となって発生しています。

気象条件などにもよりますが、木造家屋で火災が起きると、火は出火からわずか2~3分で大きくなって、カーテンや壁を燃え上り、天井まで届くこともあると言われています。

消防隊が到着するまでに、その家の住人や地域の人々などが協力し合って消火活動を行うことで、火災を初期のうちに消し止めたり、被害を小さく抑えたりできる可能性が高まります。

ただ、危険を感じたら避難することを優先し、身の安全を第一に考えながら行いましょう。

火元別の初期消火のやり方

火が燃えるときには「可燃物」「酸素」「熱」が必要です。この燃焼の三要素に対して、可燃物を取り除く「除去消火」、酸素を遮断する「窒息消火」、熱の温度を下げる「冷却消火」を行うのが消火の三原則です。

住宅火災のなかでも、対応に注意が必要な食用油の発火(天ぷら油火災)から、効果的な初期消火の方法を紹介していきます。

食用油

揚げ物を作るときなどに使う食用油による火災を、「天ぷら油火災」と呼びます。食用油は360~380℃になると、周囲に燃えるものがなくても発火します。

火力にもよりますが、約500㏄の油を火にかけると約3~5分で揚げ物の適温の180℃前後まで上昇し、そこから約10~15分加熱し続けると発火温度まで上昇するという報告があります。

気をつけたいのは、油の量が少ないと温度が上昇しやすい点です。フライパンで揚げ焼きをした場合などは、短時間で発火温度に達する恐れがあります。また、揚げかすが混ざっている古い油だと、調理の適温とほとんど変わらない約200℃で発火することもあります。

最近のガスコンロやIHクッキングヒーターには、一定の温度まで上昇すると自動で火が消える「過熱防止装置」がついていますが、調理中は目を離さないようにしましょう。

食用油からの出火は、水をかけても消火できません。高温の油に水をかけると、水は一気に蒸発し、油が爆発的にはねて飛び散る危険があります。

水をかけるのではなく、天ぷら油火災に適応した消火器を使いましょう。

消火器がないときは、鍋をしっかりと覆うことのできる大きめのふたや、濡らしたバスタオルやシーツなどを鍋にかぶせて、火が燃えるのに必要な酸素を遮断し、消火する方法があります。

ふたは炎の上からではなく、手前から奥へ倒すようにしてかぶせます。タオルやシーツは水で濡らしたら水滴が垂れない程度に絞って、鍋をしっかりと覆うようにかぶせます。タオルが小さくて鍋を覆い切れないときは何枚か使って、すきまなく鍋を覆うのがポイントです。

菜箸やおたま、掃除用のフロアモップなどの棒にタオルをかけて、鍋にタオルをかぶせてから棒を引くようにすると、炎から距離をとったまま鍋にタオルをかぶせることができます。

火が消えたように見えても、油の温度が高いうちにタオルを取ると、再び出火することがあるので、冷めるまでそのままにしておくことが大切です。

衣服

調理中のコンロや、仏壇のろうそく、花火などから衣服に火が着く「着衣着火」で亡くなる人は、毎年100人前後にのぼります。衣服に火が着いたときの対処法を知っていると、落ち着いて対応しやすくなります。

服に火が着いたときはその場で床や地面に寝そべり、体を押しつけるようにゴロゴロと転がって火を消す「ストップ、ドロップ&ロール」という方法があります。寝そべることで、炎が頭部へと燃え上がるのを防ぐのがポイントです。立ったまま慌てて走りまわると、風が起こって火が燃え上がりやすくなるので避けましょう。

バケツやシャワーの水をかぶったり、浴槽の残り水に飛び込んだりして火を消す方法もあります。

燃えやすい素材やデザインの服を着ているときには、火の扱いに気をつけることも大切です。綿やレーヨンなどの素材で、ネルのようなふんわりと起毛した生地だと表面に空気を含みやすく、炎が走るように燃え広がる「表面フラッシュ現象」が起こる恐れがあります。ゆったりとしたパジャマや部屋着でコンロの前に立つときは、袖や裾が炎にふれないよう気をつけましょう。

電気機器

毎日、何気なく使っている電気も、使い方次第で火災の原因になります。

電源タップや延長コードを使って電気機器をたくさんつなぐ、いわゆるタコ足配線にすると、コンセントから定量以上の電気が流れ続ける過電流が起こり、熱を持つことがあります。

また、埃をかぶったコンセントは、ショートが起こりやすい状態になっています。ショートを繰り返すうちにコンセントの絶縁物が炭化していき、炭化導電路(トラック)ができて出火するトラッキング火災につながることがあります。

また、ちぎれかけた電気コードも、出火の原因となります。

電気機器から火が出たときは、電気火災に適応した消火器を使って消火するのが効果的です。

水で消火するときは感電の恐れがあるので、火傷に注意しながら電源プラグをコンセントから抜くか、ブレーカーを落とし、電気を遮断してから水をかけましょう。

電子レンジで食品を加熱しすぎたり、アルミホイルなどの金属を加熱したりすることによる火災も発生しています。

電子レンジの庫内から炎が上がったときは、「扉を開けずに」電子レンジを停止し、電源プラグを抜いて火が消えるのを待ちましょう。あわてて扉をあけると、火が燃えるのに必要な酸素を供給することになってしまいます。

火が消えないときは、消防に通報するとともに、消火器などでの消火を試みましょう。

また近年、スマートフォンやタブレット、モバイルバッテリーなどに使われているリチウムイオン電池から煙が出たり、爆発したりする事故が増加しています。落下したときの衝撃や、専用の充電器を使用しないことによる過充電などが原因のひとつと考えられますが、はっきりとした原因がわからないケースも多いです。充電ができない、電池が膨らむなどの異常が見られたときは、使用を中止したほうがよいでしょう。

リチウムイオン電池は捨てるときも注意が必要です。一般の可燃ゴミや不燃ごみとして捨てるとゴミ処理の過程で事故が起こる原因となるので、取り扱い説明書や自治体のゴミの捨て方を確認の上、ルールに従って処分しましょう。

石油ストーブ

寒くなると、石油ストーブによる火災が増えます。使い始める前に掃除をしてほこりを取り除き、本格的に使いはじめる前に、火の着き方などに異常がないか確認しましょう。

ストーブの上に干していた洗濯物などが落下して火が着き、火災の原因になることがあります。ストーブは壁や家具から離して設置し、近くに燃えやすい物を置かないようにしてください。

給油のときに灯油がこぼれて、ストーブの炎に引火する事故も報告されています。給油するときには、必ずストーブを消してから行いましょう。給油タンクのふたをしっかりとしめて、灯油がこぼれていないことを確認してからタンクをストーブに戻します。

ガソリンと灯油の入れ間違いから、爆発的な出火になる事故も起こっています。どちらも家に置いている人は、区別のつきやすい容器にする、別の保管場所にするなど、取り違えない工夫が必要です。

石油ストーブから出火したときは、ストーブ火災に適応した消火器を使うと効果的です。火元をねらって消火薬剤を噴射しましょう。

ストーブの上に毛布などをかぶせて、さらにその上からバケツの水をかける方法や、ストーブを倒して、耐震自動消火装置を働かせる方法もあります。

たばこ

たばこの火の不始末も、住宅火災の原因となっています。火を消したつもりでも火種が残っていて、1時間以上経ってから、灰皿やゴミ箱の中で出火することがあります。

灰皿に溜まった吸い殻に火が燃え移ることも多いので、吸い終わったらそのままにせず、水につけるなどして、しっかりと消火するようにしてください。また、寝たばこは絶対にやめましょう。

カーテン

カーテンは、天井まで火がのぼるときの通り道となります。

カーテンが燃えていることに気づいたら、消火器や水をかけて消火を試みましょう。

レールから引きちぎって、火が上にのぼるのを防ぐ方法もあります。

炎が天井まで達すると、初期消火は難しいと言えます。避難の目安は、炎が目の高さを超えたときと、煙で火元が見えなくなったときです。

火災が起こった際の行動

火災が発生したときにとるべき対応は、「通報する」「火を消す」「避難する」の3つです。

出火に気づいたら大声で人を呼び、通報する人、消火器を取りに行く人、高齢者や子どもを避難させる人と、手分けして行動できるとよいでしょう。

火が天井まで燃え移ったら、初期消火を続けるのは危険です。安全な場所に避難して消防隊の到着を待ちましょう。

家庭用消火器を準備しよう

消火器には業務用と住宅用があります。商業施設や公共施設には、消防法で定められた消火能力のある業務用消火器を設置することが義務づけられています。

住宅用の消火器は、業務用ほどの消火能力はないものの、比較的小型や軽量のものも多く、女性や高齢者などでも使いやすい構造になっています。大きさやデザインも選べるので、火の元となりやすい台所など、手の届きやすい場所に設置しておくと、必要なときにすぐに使うことができます。

住宅用消火器の種類と適応する火災

消火器は、充填されている消火薬剤のタイプごとに「粉末系」、「強化液系」などの種類があります。使われている薬剤の成分によって、消火を得意とする火災の種別が変わるので、適応火災を確認して選ぶことが大切です。

住宅用消火器には、木材、紙、繊維などが燃える「普通火災適応」、食用油が発火したときの「天ぷら油火災適応」、「ストーブ火災適応」、コンセントなどから発火する「電気火災適応」など、適応火災が絵で表示されています。

なお、マンションの共有部などに置いてある赤色の業務用消火器の適応火災は、白(普通火災)・黄色(油火災)・青(電気火災)の3色のマークで確認できます。

また、家庭での初期消火用として、「エアゾール式簡易消火具」も市販されています。消火器の代わりになるものではなく、補助的に利用するものですが、スプレー缶などと同様の構造で、手軽に使うことができます。

「小規模普通火災適応」「天ぷら油火災適応」などの絵表示がついているので、適応火災を確認して選びましょう。

消火器の使い方

写真:PIXTA

1.安全栓を引き抜きます。

2.住宅用消火器であれば、火から1.5~2mの安全な距離をとって、ノズルを火元に向けます。

※火元が食用油のときは、油がはねると危険なので2m前後離れたところから噴射してください。

※住宅用消火器の放射距離は、製品にもよりますが3~7m前後となっているものが多いです。使用する消火器の取り扱い説明書を確認し、火の状況などに応じて安全な距離をとるようにしてください。

3.片方の手で消火器の底を持ち、もう一方の手でレバーを強く握ります。

消火器の種類やサイズにもよりますが、消火器から薬剤が出る時間はとても短く、住宅用小型タイプ(1.5kg)で約12~18秒しかありません。落ち着いて、しっかりと火元を狙いましょう。

使用期限と処分方法

住宅用消火器の使用期限はおよそ5年です。業務用消火器とは異なり点検の義務はありませんが、定期的に安全栓や圧力計に異常がないかを確認し、使用期限を過ぎたものは交換しましょう。

処分するときは、消火器販売店やメーカー営業所などに持ち込むか、引き取りを依頼する必要があります。一般の不燃ゴミとして捨てることはできませんので、気をつけましょう。

まとめ

初期消火では、火災が発生してからすぐの行動や判断が求められます。いざというときに消火器を迷いなく使えるよう、置き場所や使い方を確認しておきましょう。

危険を感じたら消火を諦め、避難を優先することも大切です。くれぐれも身の安全を第一に考えて行動してください。

<執筆者プロフィル>

山見美穂子
フリーライター
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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