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「103万円の壁」の障壁はバイトをしている学生にまでも影響? 現役ママ議員の伊藤たかえ参議院議員に取材

  • 2024.12.20

「まだ、ここにない政策を」を信条とする、伊藤たかえ参議院議員は、小学校4年生と6年生の二人のお子さんを育てるママ議員。そして、今や、政治のキーパーティーとなった国民民主党参議院国会対策委員長でもあります。

複数の民間企業で働いたのち、当時勤務していたリクルートの育休中に出馬。日本初の、育休中の国政出馬は大きな話題となりました。現在は、超党派ママパパ議員連盟の事務局長などを務め、ママたちの、生活者の代弁者としても活躍中です。

他党の議員のお子さんやお孫さんも遊びに来るという、託児機能の充実した?議員会館の事務所で、「ここにない政策」の実現に邁進する伊藤議員の思いをお聞きました。

伊藤議員のインタビュー、初回は、国民民主党のキーテーマである「103万円の壁」突破!について。

お話を聞いたのは…

伊藤たかえ参議院議員

1975年生まれ、名古屋市出身。1998年に金城学院大学文学部を卒業後、テレビ大阪に入社。報道記者として事件取材やドキュメンタリー番組を制作。2006年、資生堂を経てリクルート入社。2016年リクルートでの育休中に参議院議員選挙に初出馬。子育て世帯のリアルを日々永田町で訴え、個人の問題と捨て置かれてきた課題を、それは社会の課題・政治が取り組むべきと“これまでの国会にはなかった”政策提言に努めている。

>>伊藤たかえ公式HP

30年弱続いた103万円の壁がついに崩れる…?

―「103万の壁」、自民・公明との三党合意に漕ぎつけ、ついに崩せそうですね。

伊藤議員:私たち(国民民主党)が求めている178万円を目指して、来年度から引き上げることが幹事長間では合意されましたが…

―税制改正ということで、党主導で決めても、税制調査会の壁は厚そうです。「178万円を目指す」という合意は、本当に実現するの?という不信感もあります。

伊藤議員:最早、政党間の交渉といった意味合いをとうに超えて、この「103万円の壁」の着地金額は、国民の手取りをどれだけ増やせるかに直結しています。だからひくわけにはいかないんです。

―「手取りを増やす」ということは、この「178万円」の実現でもあり、国民はそこに大きな期待しています。それなのに、自公はすんなりとは認めないのは、おかしいと思います。ところでなぜ「178万円」なのですか?

伊藤議員:国民民主党には学生部があるのですが、彼女たちが言っていたのは、自分だけでなく周りも皆、バイトしながら学生生活を送っている。でも自分が『壁』を越えてしまうと、扶養控除の対象ではなくなってしまい、親の税負担がぐっと上がってしまうので、バイトできなくなるんだ』と。

―学生の本分はバイトではなく勉強だという声もあります。

伊藤議員:勿論です。しかし、今や学生の2人に1人が奨学金を借りながら学んでいます。長く続いたデフレの影響で親の所得は増えず、今はインフレで生活コストが上昇、国が運営費交付金を減額したことで大学は学費を上げています。べき論では片づけられない現実があります。

―学生の声から始まった政策だったんですね

伊藤議員:1995年の最低賃金は611円、2024年は1055円。この30年で、1.73倍になっているにも関わらず、課税最低限の額は据え置かれたままです。

学生は働きたいのに働けない、バイト先の店長さんも働いて欲しいのに働いてもらえない。誰得でもない状態を何とかしようと思いました。また、この政策は、学生やパートさんだけでなく、全ての働く人の課税対象所得が減るので、減税の恩恵は広く及びます。例えば給与所得200万円の人なら年8.6万円、300万円なら11.3万円、600万円なら15.2万円の減税になります。

―主婦の収入と考えると、「女性の自立」という観点からは、178万円を超えると、一旦税や社会保険料の負担が増えるかもしれないけれど、もっと稼げば、その負担を超えますね。また将来の年金受給額が増える可能性もある。でも3号被保険者って、女性の働く「必要性」みたいなものを奪っているのではないかと思ってしまうのですが。

伊藤議員:私も、ずっと働いてきたので、よく分かります。ただ、政治家として心しているのは、女性と一口に言っても、働きたい女性も、働きたくない女性も、そして働けない女性もいるということ。誰もがどの道を選んでも、その道が歩きやすいように舗装をする、それが政治家だと思うんです。

―なるほど。

伊藤議員:働くって、人生を豊かにする出会いや経験もあるので、一個人としては、次世代には働くことをおすすめします。でもだからといって、働きたくない人、働けない人が求める制度を否定することはありません。

―伊藤さんご自身の経験は別としてですか?

伊藤議員:働くことが正しくて、働かないことが正しくないって言った瞬間に、コンフリクトが生まれます。世の中に今あるコンフリクトって、働く、働かない、子どもがいる、いない、そういったものが、分断要素になっています。でも、どっちもいいじゃないと。どっちも素敵じゃない、どっちの人生も支えましょうという「当たり前」をつくっていくのが、今の私の仕事なんです。

―子育て支援には関心がいくけど、産休や育休をとる人の職場で、分断が生まれていますよね。

伊藤議員:私も37歳になるまで子どもを産み育てる人生を想像してきませんでした。不妊治療に行く上司、子どもが熱を出したからと退社する同僚の仕事を肩代わりして、土日に徹夜することもあったので、それ、すごくよくわかります。働くお母さんやお父さんを応援する声はあがってくるのに、しわ寄せが生じている人たちの声は、なかなか上がってこない。私は、確かに今、子育てしながら働く母親ですが、脳の半分はまだ、あの分断を生々しく感じていますので、上がってこない声なき声を拾いに行って、政策にしないといけないという、一種の使命感を感じています。

「まだ、ここにない政策」、つまり「吸い上げられていない声」を反映する政策の実現に邁進する伊藤議員が、子育て世代代表としても重視している「扶養控除」の継続と「年少扶養控除」の復活、そしてガソリン減税の暫定税率廃止などについて、次回、お伝えします。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。

(細川珠生)

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