1. トップ
  2. エピソード
  3. 「誰のおかげで大学を出られたと思ってるんだ」300万円を借りた父。だが、何年も返済の話がないまま迎えた正月

「誰のおかげで大学を出られたと思ってるんだ」300万円を借りた父。だが、何年も返済の話がないまま迎えた正月

  • 2026.11.6

出張帰りに父から頼まれたこと

社会人1年目の春、僕は出張の帰りに実家へ立ち寄りました。

昼間だったので母はパートに出ていて、居間には父だけがいました。

僕がスーツのまま座卓につくと、父は少し言いにくそうに話し始めました。

「実はな、お前の大学の授業料を払うときに、金を借りてたんだ」

「え、そうだったの?」

「それが、返せなくなってな…」

初めて聞く話でした。僕が「どこから借りたの?」と尋ねても、父ははっきり答えません。

そして、しばらく黙ったあと、こう言いました。

「300万円、貸してほしいんだ」

「300万?そんな急に言われても…」

僕は驚きました。まだ働き始めたばかりですし、何より学生時代には、アルバイト代を毎月授業料の足しとして親に渡していたからです。

「僕もバイト代、ずっと渡してたよね」

「あれだけで足りるわけないだろ」

「それは分かるけど、借金があるなんて聞いてなかったよ」

すると父は、少し声を強めました。

「誰のおかげで大学を出られたと思ってるんだ。親が困ってるんだから、助けてくれてもいいだろ」

僕が返事に困っていると、父はさらに続けました。

「それと、この話は母さんには言わないでくれ。余計な心配をかけたくないんだ」

正直、納得できない部分はありました。それでも、困っている父を前に断りきれず、結局300万円を貸しました。

ところが、それから父はお金の話を避けるようになりました。

電話で返済について聞こうとしても、「今忙しいから、またな」と切られてしまいます。

僕は遠くの町で働いていたこともあり、きちんと話ができないまま、何年も過ぎてしまいました。

正月の食卓で、父に伝えた事実

何年かたった正月、僕は久しぶりに実家へ帰りました。

夜、父と母と一緒に座卓を囲んでいると、酒の入った父が、親戚の子が私立に進学したという話を始めました。

「あそこも学費が大変だろうな。お前の大学だって、ずいぶん金がかかったんだぞ」

父はそう言って笑いました。

またその話か、と思いました。

学費を出してもらったことには感謝しています。

でも、父から借りたお金の話をしてくれないことが、ずっと引っかかっていました。

「うん、それは分かってるよ。僕もバイト代を毎月渡してたしね」

「それだけじゃ全然足りなかったんだからな」

「そうだね。でも、父さんに300万円も貸したよね」

その瞬間、父の笑顔が消えました。

「大学の授業料の借金を返すからって、社会人1年目のときに貸したでしょ。あれから返済の話もできてないよ」

すると、隣で聞いていた母が驚いた顔で父を見ました。

「ちょっと待って。300万円って、どういうこと?私、何も聞いてないよ」

「いや、それは…」

父は言葉に詰まり、持っていた杯を座卓に置きました。

「あなた、息子からそんなに借りてたの?」

母がもう一度尋ねても、父は目を伏せたまま、すぐには答えませんでした。

僕も責め立てるつもりはありませんでした。ただ、貸したお金について、きちんと話をしてほしかったのです。

その後、母にも間に入ってもらい、翌月から父が少しずつ返済することになりました。

父からはしばらく電話がありませんでしたが、僕はようやく胸のつかえが取れたような気がしました。

そして翌月、母から連絡がありました。

「今月の分、お父さんから預かって振り込んだからね」

通帳を確認すると、確かに入金がありました。

まだ全額返ってきたわけではありません。それでも、何年も止まっていた話がようやく動き出したことに、少し安心しました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ