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30歳で引退、起業で知った「厳しい現実」——元Bリーガー湊谷安玲久司朱が描くセカンドキャリアの未来(後編)|『アレクの起業日記』#2

  • 2026.11.1

Bリーグが開幕して10年。コートを離れ、新たな道へと進む選手も増えてきた。一方で、引退後に「起業」を選択する者はまだ少ない。2019年、横浜ビー・コルセアーズ(以下、横浜BC)で現役生活に区切りをつけた湊谷安玲久司朱(愛称、アレク)もそのひとりだ。30歳で引退を決断した彼は、その後起業の道へ。現役Bリーグ選手の同級生、篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)、橋本竜馬(ベルテックス静岡)とともに、新たな会社も立ち上げている。
今回は、アレクのキャリアに大きな影響を与えた人物であり、知的障害者バスケットボールの普及・強化に取り組む「一般社団法人日本FIDバスケットボール連盟」の副会長兼専務理事・小川直樹氏との対談をお届けする。前編では横浜BC時代の出会いがアレクの人生に与えた影響を振り返った。後編では、FIDバスケへの支援や、引退後の選手たちが直面する現実、そして2人が描く未来について語り合う。

知っている選手がどんどん引退して寂しい気持ちがある

小川直樹(以下、小川):元横浜BCの選手、みんな頑張っているよね。コーチやったり、サラリーマンやりながら解説やったり。細谷(将司・鹿児島レブナイズ)はまだ現役か。

アレク:そうですね。川村(卓也・2025-26シーズンは新潟アルビレックスBB)さんは、ちょうど引退。

小川:そうだね。川村も本当に苦労したけど、よく頑張ったよね。

アレク: 最近、知っている選手がどんどん引退していってちょっと寂しい気持ちはありますね。

小川:確かにね。そんなこと言っていたらさ、竜青と橋本もそうかもしれないし、その次になると辻(直人・群馬クレインサンダーズ)とかさ。もうそういう年代に入っているじゃない。

アレク:みんないいおじさんですもんね。辻も37歳ですもんね。

小川:いや、頑張っているよね。ほんとすごいと思う。やっぱり、プロ選手としての自覚だとか取り組みが超一流なんだろうね。

アレク:辻もスリーピースでしたっけ、社会貢献活動をしていますよね。

小川:そうだね。自分がプロとして日本のそのトップでやっている中で、社会にどう還元していくかを現役の頃から考えられるのはいいことだと思うよ。

アレク:ところで、小川さんがヘッドコーチを務めるFIDバスケ日本代表は、11月1日から5日にかけてタイ・バンコクで行われる国際大会に出場しますね。

小川:FIDバスケはパラリンピックから外されているけど、2032年のブリスベンパラリンピックで3x3競技を復活させる動きがあります。国際パラリンピック委員会などに認めてもらうには活動実績がないといけない。なので、今回はアジア大会なんだけど、併催としてワールドカップも行われて、アジア以外にフランスやポルトガルやアメリカが出て来る、そんな、ごちゃまぜの大会なんです。日本からは男子5人と女子5人を派遣します。女子はさほどチーム数が多くないし、日本人の特性である機動力を生かして、メダル獲得を目指せると思います。男子は、最近大型化して200cmの選手はざらにいるので、なかなか日本人はうまくいかないかな……5対5だったら走りっこしたら勝てるんだけど、3人の中で走るのはちょっと難しい。でも頑張ってきます。

画像: 写真提供=一般社団法人日本FIDバスケットボール連盟 11月1日より国際大会に出場する日本代表選手たち
写真提供=一般社団法人日本FIDバスケットボール連盟 11月1日より国際大会に出場する日本代表選手たち

アレク:そういえば、最初に小川さんとFIDの話をしたのは3人制のことでした。僕も3人制の選手をやっていたんで、コーチの話をいただいたことがありましたよね。

小川:そしたらアレク、「僕は忙しいんで」って(笑)。確かに忙しいけどね。いま、女子は3人制のプロ選手にアシスタントコーチとして入ってもらって、競技特性なんかも教えてもらって取り組んでいる。これから国内の中でも知的障害の3人制っていうものを普及させていく段階。来年1月に福岡で3人制の全国大会をやるんだけど、そういうことを少しずつやりながら広げています。

画像: 写真提供=一般社団法人日本FIDバスケットボール連盟 女子の日本代表選手たち
写真提供=一般社団法人日本FIDバスケットボール連盟 女子の日本代表選手たち

アレク:僕がコーチまでやるのは手が回らないですが、88 Basketball Schoolにも、もともと5人制のプロでいまは現役で3人制をやりながらスクールコーチをしている人もいます。そういう意味でもサポートできたら。

小川:ありがたいと思います。選手にも、どんどん外に出て、いろんな人と接点持って、いろんなことを学んでこいと言っています。

アレク:横浜の選手が代表にいれば、ぜひ88 COURTに来てください。

新しいセカンドキャリアのサポートの仕方を見つけたい

小川:僕自身は今、連盟で理事をやっているけど、次世代の若い人たちにバトンタッチしていかなくちゃいけない。その中で、僕が元気なうちにもう1回日本で世界選手権をやりたい。これは簡単なことじゃなくて、お金集めから人集めからいろんなことをしなくちゃいけないけど、自分が培ってきた経験をいかに発揮できるか探りながら、活動していきたいと思っています。

アレク:へぇー。僕はセカンドキャリアですね。僕が30歳になって初めて働いて、本当に大変だったので、『はちはち』をセカンドキャリアに対する支援ができるような会社にしたいですね。エージェントの方でも、選手に対して、セカンドキャリアまでサポートしたいってガンガン言っています。自分で自分の首を絞めないとやらないタイプなんで(笑)。漠然とですが、他がやってないセカンドキャリアのサポートの仕方を見つけたいなと思っています。

小川:会社をでかくして雇用すればいいんだよ。

アレク:そうですね、大きくしないと。Bリーグになって、選手は年俸何千万円ってもらえるけど、引退したら急にそれがなくなる。僕、会う選手には、本当にきつい現実が待っているから、今のうちにセカンドキャリアのことを考えてって言うようにしています。自分で銀行からお金を借りたり、リスクばっかりなので。

小川:人に頭を下げることだって、現役の頃はあまりなかったじゃない。それが、一歩社会に出たら、常に頭下げなくちゃいけない。プライドも何もないよね。

アレク:そうですね。だから人間性の話に戻るんですけど、そういうところも教えていきたいですよね。経験してきた人間が教えるのが大事だと思うので。

小川:色んな経験をしてきたからこそ伝えられる真実を伝えてほしいね。アレクには夢の実現に向けて頑張ってもらいたいなって思う。当然、成功を祈っているんだけど、失敗することもあるし、失敗してもまた元に戻って突き進めばいい。アレクはまだ若くて、これから何十年も仕事をしていく中で、環境も変化していくと思う。それにうまく乗って、頑張ってもらいたいと思います。

アレク:今日は本当にありがとうございました。

画像: (C) 88 Basketball
(C) 88 Basketball

【プロフィール】

小川直樹

1965年生まれ。日本体育大学、日本鋼管で選手として活躍し、全日本(日本代表)にも選出された。引退後は社業を経てFIDバスケットボールに関わるようになり、シドニーパラリンピックでヘッドコーチとして指揮を執った。2011年からはbjリーグに新規参入する横浜ビー・コルセアーズの初代GMに就任(2017年退任)。現在は一般社団法人日本FIDバスケットボール連盟の副会長兼専務理事、男子日本代表ヘッドコーチを務める。

湊谷安玲久司朱(みなとやあれくしす)

1988年8月31日生まれ、青森県出身。洛南高校3年次にウィンターカップで優勝、決勝の個人最多得点(40得点)を記録。青山学院大学では橋本とともに3冠を達成。卒業後、三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、茨城ロボッツ、横浜ビー・コルセアーズに所属し2019年に現役を引退。自身のケガの経験からトレーニング、食事、サプリを研究し、ReHopeサプリメントを手がける(株)Alexis を設立。3x3でも日本一を経験している。88 Basketballを運営する株式会社はちはち代表。

FIDバスケ日本代表・国際大会情報

知的障害者バスケットボールの日本代表が、2026年11月にタイ・バンコクで開催される国際大会に出場する。男子日本代表は、今回対談に登場した小川直樹氏がヘッドコーチを務める。
大会では「2026 Virtusアジア・オセアニアゲームズ」の3x3バスケットボール競技と「2026 VIBF 3x3ワールドカップ」が併催され、日本からは男女合わせて選手10名が参加予定だ。
・開催地: タイ・バンコク
・大会期間: 2026年11月1日(日)〜5日(木)
・試合日程: 11月3日(火)〜5日(木)
・大会の詳細・最新情報は、日本FIDバスケットボール連盟の公式サイトをご覧ください。
https://www.jbf-fid.jp/ao2026/

取材・文=Qoly バスケ編集部

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