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【60代エンタメ】平成中村座 『十月大歌舞伎』中村七之助インタビュー|兄・勘九郎は「舞台でいちばん安心できる存在」〈好奇心の扉・後編〉

  • 2026.10.5

江⼾三座の筆頭であった中村座を、現代によみがえらせたいという
十八世中村勘三郎さんの思いから、2000年に浅草に誕生した芝居⼩屋「平成中村座」。
舞台と客席が近く、役者と観客が一体となる特別な空間は、
日本各地や、海外で多くの歌舞伎ファンを魅了してきました。
今年10月には、4年ぶりに誕生の地・浅草でその幕が開きます。
ご当地を舞台にした『助六曲輪初花桜』をはじめとした、見応えのある演目がずらり。
そのなかで女方の大役を勤める中村七之助さんに、本公演の見どころを伺います。

今回は【後編】をお届けします。  

初役・戸無瀬を演じることは、大きな喜び

七之助さんにとって、勘九郎さんは「舞台でいちばん安心できる存在」です。

「自分ひとりでは届かなかったレベルまで引き上げてくれる人。名優には自分だけではなく、まわりの役者も高いところへ連れて行く力があるんです。私自身も、互いに高め合える役者でいたいと思っています」

今回の公演では七之助さんも、女方の大役、『仮名手本忠臣蔵九段目 山科閑居』の戸無瀬に初役として挑みます。年ごろの娘を持つ母親を演じるのは、七之助さんにとって初めての経験。物語は、しんしんと雪が降るなか、戸無瀬が白無垢を着た娘の小浪を連れて、かつて塩冶家の城代家老だった大星由良之助の閑居を訪れるところから始まります。

「塩冶家のお家断絶が起きなければ、幸せな家庭を築いていたはずの家族の悲劇です。戸無瀬の娘・小浪は、大星由良之助の息子・力弥の許嫁。でも、事件のために結婚の約束が果たされないままになっていたため、戸無瀬はある覚悟を決めます。戸無瀬は後添えで、小浪は実の子ではありません。だからこそ幸せにしてあげなくては、という秘めた思いがあります。その精神をお客様にお見せできたら」

この九段目は、平成20(2008) 年の平成中村座でも上演され、戸無瀬は父・勘三郎さんが勤めました。今回上演する背景には、七之助さんの背中を押すある出来事があったそうです。

「ある日、兄と演目を相談していて、『助六』と『連獅子』はすぐ決まりました。実は今年11月の歌舞伎座で『仮名手本忠臣蔵』の通し上演があるのですが、そこでは九段目はかからないと聞いて、平成中村座でやるのはどうだろうと私が提案したんです。そうしたら、そのとき、私の鏡台に1匹のハエがとまって。その鏡台は父が使っていたものなのですが、中村屋では祖父(十七世中村勘三郎さん)が亡くなったときから、大事な節目になるとハエがあらわれることがあるんです。私がハエに『お父さん、九段目でいいですか』と聞いたら、そのままじっと動かなかった。『いいってことだね』と受け取りました(笑)」

役作りになにより大切なのは作品に寄りそうこと

今年は、新たな役への挑戦を続けてきた七之助さん。6月の歌舞伎座では『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ』の小万を演じ、その妖艶さと人物の奥行きが大きな話題となりました。さらに8月には、久しぶりに本興行で復活した『鬼神のお松』の主役を勤め、脚本の練り直しにも関わりました。

「歌舞伎には実に幅広い作品があって、そのなかには埋もれている名作がたくさんあります。『鬼神のお松』もそのひとつ。松竹さんから『やってみないか』とお話をいただき、作品の魅力を役作りになにより大切なのは作品に寄りそうこと生かしながら、いまのお客様にも共感していただける『鬼神のお松』を目指しました」

七之助さんが役作りにおいて、なにより大事にしているのは「作品に寄りそうこと」。

「そして、その人物はなにを思い、どう生きているのか。その心を考えてこそ、自然と動きが生まれるように思います。これから演じる揚巻も戸無瀬も、さまざまな思いを抱えた女性です。それを表に出すわけではなく、肚(はら)にぐっと収めることで、その人物の品格や奥行きが見えてくることがきっとあります」

最後に、七之助さんに本誌読者に向けて、平成中村座だからこそ味わえる魅力をいま一度伺ったところ――。

「いろいろとお話ししましたが、平成中村座の本当の面白さは、実際に来ていただかないとやっぱり伝わらないと思います(笑)。『どうしようかな』と迷われている方は、まず浅草寺の境内に来ていただけたらと思います。劇場には五軒長屋という江戸の町並みを再現したお店が並んでいます。上演しているお芝居の音も聞こえてきます。その空気を感じて、『面白そうだな』と思ったら、そしてチケットが残っていたら、ぜひ平成中村座に入ってきてください(笑)


平成中村座『十月大歌舞伎』のために撮り下ろされた特別ビジュアル

親子3人による舞踊の大曲『連獅子』

中村屋さんが代々大切にしてきた『連獅子』を平成中村座で初披露。令和3(2021)年に勘太郎さん、令和6(2024)年に長三郎さんが、それぞれ歌舞伎座で父・勘九郎さんと踊ってきた。今回は初めて、勘九郎さん、勘太郎さん、長三郎さんによる親子3人の『連獅子』となる。

江戸の粋を華やかに『助六曲輪初花桜』

今回の『助六曲輪初花桜』は片岡仁左衛門さんが、十七世中村勘三郎さんから教わった型を、孫である勘九郎さんに伝える形で実現。特別ビジュアルの撮影に駆けつけた仁左衛門さんは「この辺を見て」「ええ男の気分で」などアドバイスと声援を送ったという。 

中村屋の新たな挑戦と世代を超えて受け継がれる芸を——

平成中村座『十月大歌舞伎』

◎昼上演の第一部は、芸と絆を感じさせる 平成中村座とは…演目が見どころ。成駒屋三兄弟による華やかな舞踊『初帆上成駒宝船』で幕を開け、『仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居』では、十八世中村勘三郎さんが平成中村座で演じた⼾無瀬に、七之助さんが初役で挑む。
さらに、大曲『連獅子』では、勘九郎・勘太郎・長三郎親子が初めて3人で出演。親から子へと受け継がれる芸の神髄を披露する。

◎夜上演の第二部は、『御存 鈴ヶ森』で15歳の勘太郎さんが白井権八に挑む、瑞々しい舞台で幕開け。続く『助六曲輪初花桜』では、勘九郎さんが助六を初役で勤め、七之助さんが相手役の三浦屋揚巻を演じる。

平成中村座『十月大歌舞伎』

■日程:令和8(2026)年10月1日(木)~25日(日)
■会場:平成中村座(浅草寺境内・仮設劇場)
■チケット:チケットホン松竹0570-000-489(午前10時~午後5時) チケットWeb松竹、ほか各種プレイガイドにて
■観劇料(各部・税込): 松席(1階平場席)16,500円/竹席(1・2階長椅子席)16,500円/ 梅席(2階長椅子席)13,000円/桜席(2階長椅子席)11,000円/ お大尽席(2階特別席)36,000円
■演目:第一部(午前11時開演)『初帆上成駒宝船(ほあげていおうたからぶね)』『 仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居(かなでほんちゅうしんぐら くだんめ やましなかんきょ)』 『連獅子(れんじし)』
第二部(午後4時開演)『御存 鈴ヶ森(ごぞんじ すずがもり)』 『助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)』
■出演:中村勘九郎、中村七之助、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助、 中村勘太郎、中村長三郎、中村芝翫、中村扇雀、中村鴈治郎、片岡仁左衛門(23~25日)
■製作:松竹株式会社
■主催:松竹株式会社/フジテレビジョン
■特別協賛:エステー株式会社
■企画協力:ファーンウッド/ファーンウッド21
■後援:台東区/浅草観光連盟

詳細な公演情報は、こちらの二次元コードから、歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人」をご覧ください

お話を聞いた方

中村七之助さん 
昭和58(1983)年5 月18日生まれ。昭和61 (1986)年9 月歌舞伎座『檻』の祭りの子勘吉で波野隆行の名で初お目見得。昭和62(1987)年1 月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎で二代目中村七之助を名乗り初舞台。2013 年(平成25 年)読売演劇大賞 杉村春子賞受賞。2015 年(平成27年)松尾芸能賞 新人賞受賞。2015年(平成27 年)第1回森光子の奨励賞受賞。

ヘア&メイク/宮藤 誠、中村優希子〔ともにFeliz Hair〕 撮影/川村恵理 構成・文/杉村道子

※素敵なあの人2026年11月号「江⼾の芝居⼩屋の雰囲気で名作古典を――待ってました!中村七之助さんが語る 夢が息づく、平成中村座 『十月大歌舞伎』【好奇心の扉】」より
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売を終了している場合があります。
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この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

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