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【おとなのソロ部】「浜離宮恩賜庭園」で御茶屋ガイドツアー&抹茶でゆるり。1500円で叶う“国宝級”の時間

  • 2026.10.30

美しい景色にゆっくり癒やされたい。そんな日は、東京・汐留の「浜離宮恩賜庭園(はまりきゅうおんしていえん)」へ。訪れるなら、無料の「御茶屋ガイドツアー」がある木曜がおすすめ。建築の遊び心にふれ、抹茶と和菓子でひと休みしたら、庭園散策へ。国の特別名勝・特別史跡に指定された“国宝級”の庭を歩けば、江戸へタイムスリップした気分に。入園料300円+抹茶&和菓子1200円の合計1500円で楽しむ、ひとり時間をご紹介します。

海水の池と高層ビルが織りなす、都心の大名庭園

庭園の入り口へと続く、堀に架かる大手門橋
庭園の入り口へと続く、堀に架かる大手門橋

都営大江戸線築地市場駅・汐留駅、ゆりかもめ汐留駅から大手門口まで徒歩約7分。新橋駅からも徒歩約12分でアクセスできる「浜離宮恩賜庭園」(以下、浜離宮)は、東京湾に面した、約25万㎡(東京ドーム約5.5個分)の広さを誇る庭園です。

汐留の街から橋を渡って入園すると、目の前には大きく枝を広げる松や、ゆったりとした園路が。近くで働く人も、都心でこんな緑に包まれる場所があったのかと驚きそうです。

大手門をくぐり、徳川将軍家ゆかりの庭園へ
大手門をくぐり、徳川将軍家ゆかりの庭園へ
入園券はサービスセンターにある自動券売機、または有人窓口で購入
入園券はサービスセンターにある自動券売機、または有人窓口で購入

庭園の始まりは承応3年(1654)。4代将軍徳川家綱(とくがわ いえつな)の弟・松平綱重(まつだいら つなしげ)が、将軍家の鷹狩場だった海辺を埋め立て、別邸を築きました。その子・綱豊(つなとよ)が6代将軍家宣(いえのぶ)となると、将軍家の別邸「浜御殿」(はまごてん)に。

歴代将軍が改修を重ね、11代将軍家斉(いえなり)の時代にほぼ現在の姿が整いました。明治には皇室の離宮となり、戦後、東京都に下賜され、昭和21年(1946)から一般公開されています。国の特別名勝・特別史跡にも指定された、歴史ある庭園です。

長い歴史を感じさせる「三百年の松」
長い歴史を感じさせる「三百年の松」

大手門から入ってまず目を引くのが「三百年の松」。家宣が庭園を大改修した際に植えられたと伝わる黒松で、太い枝が低く横へと伸びる姿は迫力たっぷり。将軍の庭の長い歴史を感じさせてくれます。

海水を引き入れ、潮の干満で趣が変わる「潮入の池」
海水を引き入れ、潮の干満で趣が変わる「潮入の池」
東京湾と池をつなぎ、水量を調節する「横堀水門」
東京湾と池をつなぎ、水量を調節する「横堀水門」

園内の中心に広がるのは、東京湾の海水を引き入れる「潮入の池」(しおいりのいけ)。潮の干満に合わせて水門を開閉し、池の水量を調節しています。江戸時代に造られた都内に現存する庭園で、海水の池が残るのはここだけ。池にはボラやクロダイなどの海水魚も住み、取材中にも魚が跳ねる姿を見かけました。

かつて橋全体を覆った藤棚が一部残る「お伝い橋」
かつて橋全体を覆った藤棚が一部残る「お伝い橋」

池の周りには小高い山や御茶屋が配され、園路を歩くにつれて眺めが変化します。中島へと続く「お伝い橋」は、延長約120mの総檜造り。水面の近くを渡る気分を楽しんだり、池越しに御茶屋を眺めたり、同じ池でも立つ場所によって違う表情に出合えます。

江戸の庭園と現代の高層ビルが重なる独特の風景
江戸の庭園と現代の高層ビルが重なる独特の風景

庭園の緑と木造の御茶屋、その背後にそびえる高層ビル群が一緒に見えるのも、今の「浜離宮」らしい風景。江戸の庭園と現代の東京が重なる眺めは、写真に収めたくなります。

ひとりなら、気になる景色の前で立ち止まり、少し道を戻るのも自由。まずは池の周りを歩いて、自分の好きな眺めを探してみましょう。

ソロおすすめPoint 外国人観光客が多く訪れる「浜離宮恩賜庭園」。さまざまな言語が聞こえるなかをひとりで歩いていると、遠い旅先に来たような気分に。周囲のにぎわいにほどよく紛れながら、自分だけの散策に没頭できます。園内パンフレットや説明板をじっくり読み、気になった景色と見比べられるのも、ひとりならでは。庭園への理解が深まるほど、散策が楽しくなります。

ガイドさんと3つの御茶屋へ。建築に隠れた遊び心と美しい眺めに出合う

松の御茶屋で参加者を迎えるガイドの島田さん。ガイド歴18年の大ベテラン
松の御茶屋で参加者を迎えるガイドの島田さん。ガイド歴18年の大ベテラン

「浜離宮」をもう少し深く楽しむなら、毎週木曜に開催される「御茶屋ガイドツアー」(無料)へ。ボランティアガイドさんの案内で、松・燕・鷹の御茶屋を巡ります。

特に、松と燕の御茶屋の内部を見学できるのは、このツアーならでは。外から眺めていた建物に入り、室内の意匠や庭園とのつながりを知ることができます。ツアーの詳細は最下部にあるデータ欄でご確認ください。

絵図や写真を交え、御茶屋の魅力を伝える島田さん
絵図や写真を交え、御茶屋の魅力を伝える島田さん

今回案内してくださったのは、ボランティアガイドの島田さん。絵図や写真を見せながら、庭園の歴史と御茶屋の楽しみ方を教えてくれます。建築の知識がなくても、目の前の柱や窓を見ながら聞けるので、説明が自然と頭に入ってきます。ユーモアを交えたお話に、思わず笑みがこぼれる場面も。

■松の御茶屋

池に面し、庭園の風景に溶け込む「松の御茶屋」
池に面し、庭園の風景に溶け込む「松の御茶屋」

最初に訪れたのは「松の御茶屋」。御茶屋という名前から、お茶をいただく茶室を想像するかもしれませんが、将軍が園内で食事や休憩をしたり、賓客をもてなしたり、調度品を鑑賞したりするための建物です。

現在の松・燕・鷹の御茶屋は、失われた建物を絵図や古写真、文献、発掘調査などに基づいて復元したもの。当時の意匠や素材、工法を可能な限り再現しています。

縁側の先に水面と緑が広がる、室内からの眺め
縁側の先に水面と緑が広がる、室内からの眺め

松の御茶屋で座って庭を見ると、外を歩いていたときとは目線が変わり、縁側の先に水面や木々が広がります。島田さんが教えてくれたのは、「庭屋一如」(ていおくいちにょ)という言葉。庭と建物がひとつのように調和することを表しています。室内からは庭が続いて見え、外からは御茶屋も庭の景色の一部になる。歩いて楽しむだけでなく、座って眺めるためにも考えられた庭だったのです。

松ぼっくりをかたどった、遊び心ある釘隠し
松ぼっくりをかたどった、遊び心ある釘隠し

そこから目線を室内へ移すと、小さな発見が次々と。「釘隠し」(くぎかくし)は、釘の頭を隠すための装飾金具で、ここでは松ぼっくりやセミの形になっています。教えてもらわなければ、何気なく通り過ぎてしまいそうな場所に、こんな遊び心が。小さな生き物を探す感覚で、室内を見渡したくなります。

浜千鳥の透かし彫りを施した、繊細な欄間板
浜千鳥の透かし彫りを施した、繊細な欄間板

浜千鳥の透かし彫りが施された欄間板(らんまいた)にも注目。晴れて穏やかな冬の午後には、池で反射した夕日の光が欄間の透かし彫りを通り、壁に千鳥の影を映すこともあるそう。島田さんに写真を見せていただくと、壁にはまるで鳥が飛び込んできたような影が。建物の飾りだけでなく、日差しや水面まで庭園の楽しみに取り込まれていると知り、時間や季節を変えて訪れたくなりました。

■燕の御茶屋

白い漆喰壁が印象的な、数寄屋風の「燕の御茶屋」
白い漆喰壁が印象的な、数寄屋風の「燕の御茶屋」
羽の広げ方や向きが一つずつ異なる燕の釘隠し
羽の広げ方や向きが一つずつ異なる燕の釘隠し

続いて向かったのは「燕の御茶屋」。こちらの釘隠しは、その名にもつながる燕の形です。羽を広げたり、閉じたりと、姿がそれぞれ異なるのがかわいい。ひとつ見つけると、隣の燕はどんな姿だろうと見比べたくなります。

将軍の座る場所として一段高く設けられた「上段」
将軍の座る場所として一段高く設けられた「上段」
建具が額縁のように切り取る、上段からの眺め
建具が額縁のように切り取る、上段からの眺め

室内には、将軍が座ったとされる一段高い「上段」が設けられています。ツアーではここに座り、将軍と同じ目線で庭園を眺めることができました。松の御茶屋で見た広がりとはまた異なり、建具に切り取られた景色のなかに池や木々が収まります。将軍はこんなふうに庭を見ていたのかと、少し身近に感じられる瞬間でした。

上段の三角地袋。小襖には白磁の陶板を使用
上段の三角地袋。小襖には白磁の陶板を使用

上段とそれ以外の空間では、畳の縁や天井の造りなどにも違いがあり、将軍が座る場所の格式を表しています。細部を見比べながら説明を聞くと、庭の眺めだけでなく、室内にも特別な趣向が凝らされていたことがわかります。

松の御茶屋と同じく、書院造りを基調に数寄屋の意匠を取り入れた建物で、かつては掛け軸や花器などの調度品が飾られていたそう。将軍はどんな品を眺め、楽しんでいたのだろうと、当時の室内を想像する楽しみもありました。

■鷹の御茶屋

ツアーに参加しなくても内部を見学できる「鷹の御茶屋」
ツアーに参加しなくても内部を見学できる「鷹の御茶屋」

最後は、茅葺き屋根が印象的な「鷹の御茶屋」へ。寛政7年(1795)に建てられ、将軍が鷹狩りの際に待ち合わせや休憩をするために使ったと考えられる建物です。

広い土間や上段がある田舎家風の造りで、かつては炉で芋や栗などを焼き、農家らしい趣を楽しんだことが史料に記されています。

ハートのような「猪目」がかわいらしい「懸魚」
ハートのような「猪目」がかわいらしい「懸魚」

外観では、屋根の下にある「懸魚」(げぎょ)にも注目。ハートのように見える穴は、イノシシの目を表す「猪目」(いのめ)です。イノシシは火防の神の使いともいわれ、火災を防ぐ願いが込められているそう。かわいらしい形にも、建物を守る意味があるのですね。

鷹狩りの際に土間から腰掛けて休める畳敷きの「上段」
鷹狩りの際に土間から腰掛けて休める畳敷きの「上段」

鷹の御茶屋にも、将軍が休むための「上段」があります。燕の御茶屋とは異なり、土間から腰掛けられる造りで、鷹狩りの装いのままひと休みできるのが特徴。同じ上段でも、使う場面に合わせて形が違うことに、将軍の過ごし方まで想像が広がります。

鷹を休ませるために設けられた「鷹部屋」
鷹を休ませるために設けられた「鷹部屋」

建物の背後には、鷹を休ませる「鷹部屋」も。将軍の休憩所だけでなく、鷹のための場所まで用意されていたことに、鷹狩りの庭だった歴史を実感します。

3棟を巡ったあと、外観を見比べると、松は横板、燕は白い漆喰壁、鷹は縦板と、屋根だけでなく壁の仕上げも違っていました。最初は似た雰囲気に見えていた御茶屋が、それぞれ違う顔をもつ建物に感じられます。

ソロおすすめPoint ガイドツアーにひとりで参加すると、同じくひとりで訪れた人と話が弾んだり、ほかの参加者とガイドさんのやりとりを聞くことで、自分にも新しい知識が身についたり。ツアー後は、ガイドさんの話を手がかりに、気になった御茶屋を自分のペースでもう一度外から眺めてみるのもおすすめ。参加者と発見を分かち合い、その余韻をひとりで味わえるのも、このツアーの楽しさです。

池の真ん中の御茶屋で、景色を楽しむお茶時間

抹茶と和菓子を楽しめる「中島の御茶屋」
抹茶と和菓子を楽しめる「中島の御茶屋」

御茶屋の意匠を知ったあとは、「お伝い橋」を渡って「中島の御茶屋」へ。潮入の池に浮かぶ中島にあり、抹茶と和菓子を楽しめる場所です。江戸時代には、将軍や公家などが眺望を楽しんだとされる御茶屋で、現在の建物は昭和58年(1983)に再建されました。

「ねりきり抹茶セット」1200円
「ねりきり抹茶セット」1200円

今回紹介するのは、「ねりきり抹茶セット」1200円。抹茶とねりきりがひとつのお盆に並び、庭園の風景とともに楽しめます。見学した御茶屋とは異なり、こちらは実際にお茶をいただける場所です。

メニューは、このほか「栗どらやき抹茶セット」1200円、抹茶単品600円、ねりきり単品600円、ミネラルウォーター140円があります。

水辺の景色を間近に眺められる、テラスの席
水辺の景色を間近に眺められる、テラスの席

室内には座敷とテーブル席があり、テラスにも少数のテーブル席が設けられ、庭園を眺めながらひと休みできます。取材日は昼どきで満席になる時間もあったので、混んでいたら先に散策を楽しみ、時間をずらして立ち寄るのもよさそう。営業時間は9時~16時45分(16時30分LO)です。

「富士見山」から見渡すと、池と御茶屋の配置がわかりやすい
「富士見山」から見渡すと、池と御茶屋の配置がわかりやすい

ひと休みしたあとは、庭園散策へ。どの建物から、どんな景色が見えていたのか。覚えたばかりの意匠やお話を思い返しながら、庭園をゆっくり眺めましょう。

取材時はキバナコスモスが咲いていた「お花畑」
取材時(2026年10月上旬)はキバナコスモスが咲いていた「お花畑」

大手門へ戻る途中には、季節の花が楽しめる「お花畑」にも立ち寄ってみましょう。春は菜の花、秋はコスモスなどが彩る場所で、取材時はキバナコスモスが咲いていました。高層ビルを背景に広がる黄色い花畑には、写真を撮る人の姿も。まるで花の海を泳ぐような気分を味わえました。

何気なく眺めていた庭や建物に、新しい発見が生まれる「浜離宮恩賜庭園」の御茶屋ガイドツアー。島田さんによると、将軍に招かれた賓客たちは、平均12~13時間も滞在したそう。潮の満ち引きとともに移ろう景色を、ゆっくり楽しんでいたのかもしれません。次の木曜は、将軍が楽しんだ景色と職人の遊び心にふれる、ひとりの庭園時間を過ごしてみませんか。

■浜離宮恩賜庭園(はまりきゅうおんしていえん)
住所:東京都中央区浜離宮庭園1-1
TEL:03-3541-0200(サービスセンター)
開園時間:9~17時(最終入園は16時30分)
定休日:12月29日~翌年1月1日
料金:入園料300円(65歳以上150円、小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)

・御茶屋ガイドツアー
開催日時:毎週木曜 11時/12時/13時/14時
集合場所:松の御茶屋
対象施設:松の御茶屋、燕の御茶屋、鷹の御茶屋
所要時間:約40分
対象・定員:中学生以上、各回先着25名
料金:無料(別途入園料が必要)
予約:不要
※建物内は靴下着用必須。
※夏季や気象状況により休止・中止になる場合があります。実施状況はサービスセンターにお問い合わせください。

ソロMemo ■ソロ率:50%(取材時、木曜11時の御茶屋ガイドツアー参加者)

■おすすめの利用シーン:ひとりで自然にふれて過ごしたいとき、ひとりでツアーに参加したいとき、ひとりで教養を身につけたいとき、ひとりで散歩がしたいとき


Text:山田裕子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平(editorial team Flone)

●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。

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