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災害時のお迎え問題、考えたことありますか?——最大3日間行けないケースも

  • 2026.10.23

大規模な地震が発生した時、保育園や学校・学童などへお迎えに行けるだろうか? そんな風に考えたことはないでしょうか。今や子どものいる世帯のうち、8割の母親が働いています。共働き世帯にとって、災害時の子どものお迎え問題は避けて通れないと言えるでしょう。夫婦のうちどちらがどうやって迎えに行くのか。どちらも行けない場合、代わりに引き取ってくれる人はいるのか。今回は、子育て家庭の防災に関する情報発信や保育園などの防災対策の監修を行うNPO法人M-plug(東京都渋谷区)理事・冨川万美さんに話を聞きました。都市部と地方の違いも比較しながら、想定される課題を解決するヒントを教えていただきました。

災害時に想定されるお迎えの困りごととは

大規模な地震で公共交通機関が止まり、保育園や学校、学童に子どもをお迎えに行けない——。特に都市部で心配なのは、親が「帰宅困難者」になるケースです。

「発災後、最大3日間は職場などに留まる想定が必要」と冨川さんはいいます。この期間は、鉄道・地下鉄などの運行停止が見込まれます。同時に、救助・消火活動などを妨げないよう、自家用車や徒歩での帰宅を抑制する「一斉帰宅抑制」が基本原則とされているからです。

一方、自家用車移動が中心の地方では、どのような問題が考えられるでしょうか。冨川さんによると「お迎えに向かう保護者と園バスのすれ違い」「保護者に引き渡した児童が帰宅中に津波の被害に遭う」などの事例が、東日本大震災時に起こったそうです。緊急時に、園で待機するか否かといった事前の取り決めがなかったゆえの被害といえます。

また停電による信号停止や地面の陥没・隆起などで渋滞や通行止めが発生し、お迎えに長い時間がかかることも。実際、東日本大震災時に栃木県に住んでいた筆者は、普段なら車で20分程度の道のりを帰るのに、1時間以上かかりました。

「車を使うかどうかはシチュエーションによっても判断がすごく難しい」と、冨川さん。地震に限らずさまざまな災害を想定して、複数のルートを把握し、危険な箇所がないかを事前に確認しておくことが大切だといいます。

避難は徒歩が原則ですが、乳幼児や高齢者がいてやむを得ず車を使う場合は、安全かつ確実に避難するための方法を事前に検討することが求められます。

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お迎えトラブルを回避するために

先に挙げたようなお迎えに関するトラブルを避けるために、家族や関係各所と事前に相談して決めておくべきことをまとめました。

園・学校・学童と事前に確認

保育園や認定子ども園、学校の場合は、常駐職員がいて防災訓練をはじめとする災害対策を決めているところがほとんどです。一方、学童保育施設は民間や有志によって運営されているところも多く、冨川さんによると「対応はバラバラな印象」だといいます。

引き取り訓練も「実施されているからといって安心とは限りません」と冨川さん。保護者側は災害時に想定される状況や要望を伝え、園や学校側は対応できること・できないことを示す、双方向の確認が大切です。

「要望などは伝えにくいかもしれませんが、保護者からの働きかけが園や学校の対策見直しのきっかけになります」

東日本大震災の時には、保育園の職員も自分の家族のもとに帰る必要があり、事前の取り決めがなかったため園長先生が一人で園児たちを預かっていたケースもあったとのこと。もし首都圏で保護者が帰宅困難者になり3日間迎えに行けない事態に陥ったら、園長先生だけで対応するのは不可能でしょう。

このような事態を避けるためにも、「大地震が起きたら3日間迎えに行けない可能性があると知らなかったんですが、もしそうなったらどうしますか?」と話題に上げて、ぜひ子どもの預け先へ相談をしてみてほしいと話してくれました。

家族との連絡手段を確保

防災講演などで参加者がもっとも不安に感じているのが、「連絡手段」「安否確認」だと冨川さんはいいます。

パートナーとお互いの安否を確認できれば、子どもと合流できているか、あるいはどちらが子どものお迎えに向かえるかなども把握できます。子どもにもスマホを持たせていれば、同様に状況の共有が可能です。

「まずは複数の連絡手段を持つことが欠かせません」と、以下3つの連絡方法を挙げてくれました。

①LINE:チャットのやりとりができなくても、ステータスメッセージ(アイコンまたは設定〈歯車マーク〉をタップして表示されるプロフィールにあらわれる一言コメント)の更新で安否確認が可能。震度6以上などの大規模な災害時は、「LINE安否確認」も利用できます。

②SNS:X(旧Twitter)、Facebook、Instagramなどのダイレクトメッセージ。過去の災害時にも、ある一定の時にXだけは使えた、Facebookでのやりとりはできたという事例もあったため、複数の選択肢を持っているとよいでしょう。

③災害用伝言ダイヤル(171):NTTが被災地向けに開設する声の伝言板。通話はできませんが、お互いに安否を伝言し合うことができます。毎月1日・15日などに体験利用が可能。パニック時にも使えるよう、流れを把握するためにも一度体験しておくのがおすすめです。

家族間では、災害への危機意識に差があり無理に話し合おうとしてもうまくいかないことも。「そんな時は“いざという時のお守り”として、連絡手段を書いたものを渡しておくといいですよ」と冨川さんが教えてくれました。

「たとえば被災者のインタビューを見た人とそうでない人の間で、不安な気持ちに温度差があるのはしかたのないこと。一方的でもいいので、171の使い方を書いた紙を『緊急時に見てね』と名刺入れに入れておくなど、わが家の“これさえあれば”を作っておきましょう」

引き取りリストの見直し

園や学校へ提出する、非常時に子どもをお迎えに来る人を記した「引き渡しカード」。空欄を埋めるために遠方に住む祖父母の名前を書いている、ということはありませんか? 「災害時、本当に迎えに来られる人か」を見直し、現実的な相手を記入しましょう。

冨川さんがおすすめするのは、近所のママ友・パパ友ネットワークを活用すること。「帰って来られない場合は、うちが一緒に引き取るよ」といった協力体制を作っておくと、お互いに安心です。

「子どもにとっては、お友達やそのママ・パパといられること自体がいちばんの安心材料になります。子どもが知っている、信頼できる人でないと、トラブルになりかねません」

頼れる知り合いが近くにいない場合は、園や学校に相談するのも一案です。

当事者の声を集めて備える

家庭ごとに状況が違うため、災害時のお迎えと一口に言ってもさまざまなケースを想定しなければいけません。わが家に必要な備えが何か考えるにあたって、冨川さんいちおしの情報収集の方法は「SNSでのキーワード検索」。

大きな災害後しばらくの間は、被災者のリアルな発信がSNSに流れます。たとえば「〇〇地震 お迎え」「〇〇地震 保育園」などのキーワードで検索すると、被災地で困っていることや、必要な物が見えてきます。子どもの年齢や住宅環境など、自分と似ている境遇の声を集めることで、自分なら何を準備するかの参考にするのです。

「やっぱり当事者のリアルな声がいちばん自分ごとに置き換えられると思うんです。被災地からの情報を、自分の家の防災に活かすことも必要なのではないでしょうか」

わが家でできることから始めよう

冨川さんは終始「完璧でなくていい」とお話ししてくれました。お迎え問題に限らず、災害への備えとなると「きっちりやらなければ」と気負いがちですが、まずはできることから始めてみませんか。わが家でも「お守り」となる連絡手段のメモ、作ってみようと思います。

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<冨川万美さんプロフィル>

NPO法人「M‒plug」理事、アクティブ防災事業代表

東日本大震災の被災母子支援を機に、NPO法人ママプラグ(現・M-plug)設立に携わる。被災体験を元にした「アクティブ防災」を提唱、子連れ、家族向けの防災を啓発。全国各地でのセミナー・自治体との連携・イベント・企業との協働・書籍の出版及び監修などを行う。著書に『全災害対応!最新子連れ防災BOOK ーー被災ママパパ1648人と作りました』など。

<執筆者プロフィル>

那須 あさみ

フリーランスライター。小学生、中学生の4児の母。さまざまな年齢の子どもと一緒に家庭で備えられる防災を模索中。

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