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ネパールの大洪水から考える、世界の異常気象と備えの大切さ

  • 2026.10.22

写真提供:Adobe Stock

2026年8月にネパールで大規模な洪水と土石流が発生し、多くの死傷者や行方不明者が出る事態となりました。ヒマラヤ山脈で起きた氷河の崩壊が原因と考えられています。

近年、深刻な猛暑や大雨、干ばつといった異常気象による災害が世界各地で発生しています。こうした自然災害のリスクが高まる中、国連は防災意識を高める日として、10月13日を「国際防災の日」と定めています。

今回は、ネパール大洪水をきっかけに、世界で起きている異常気象の現状を振り返りつつ、私たちが日頃からできる防災対策や備えについて改めて考えていきましょう。

ネパール大洪水

2026年8月、ネパール・中国国境付近で標高5,200mの氷河・岩盤が崩落したことで大規模な土石流が発生し、多数の死傷者と行方不明者が出る壊滅的な被害となりました。ネパール政府は、9月1日時点で死者は1,000人を超え、行方不明者は4,000人近いと公表しています。被災地に点在する複数の水力発電所のトンネル内に約120人が閉じ込められている可能性もあると伝えられており、被害は甚大です。今回の災害の背景には、地球温暖化による氷河融解の影響も強く指摘されています。

地球沸騰化とも言われる時代を迎え、こうした気象災害は決して遠くの国の出来事ではありません。

異常気象のリスクが世界中で高まる中、「国際防災の日」をきっかけに、私たちも今一度、日常の備えや防災への意識を見直しましょう。

国際防災の日とは

国連が定めた10月13日の「国際防災の日」は、自然災害の被害を減らし防災意識を高める日です。1970〜80年代の相次ぐ大規模災害を背景に、1990年代の「国際防災の10年」の活動の一環として制定されました。従来の「災害が起きてからの応急救援」から、「災害が起きる前の予防・被害軽減」へと国際社会の関心を大きく転換させたきっかけにもなりました。事前の備えにより被害を最小限に減らす重要性を伝えるこの日は、家庭や地域の備え、避難計画を改めて見直す機会にもなっています。

気象データが示す地球規模の異変

近年、地球規模で気候が大きく変わっています。以下は2021年~2025年にかけて年ごとの世界の異常気象を示す画像です。世界中のあらゆる地域で、異常気象が常態化していることが見て取れます。

出典:気象庁「世界の年ごとの異常気象」

データが示す通り、世界的な高温や熱波をはじめ、極端な大雨や少雨が頻発しています。ここでは、世界の異常気象の現状について詳しく解説します。

世界的な高温と熱波

気象庁のデータによると、世界の年平均気温は長期的には100年あたり0.79℃の割合で上昇を続けています。特に1990年代半ば以降は高温となる年が増加しており、地球規模での気温上昇が近年いっそう加速していることが分かります。

出典:気象庁「世界の年平均気温偏差の経年変化」

上のグラフを見ると、2024年には1891年の統計開始以来で過去最高となる記録的な高温を観測しました。グラフの動きからも、近年の気温上昇がいかに急激であるかが読み取れます。

こうした傾向に伴い、各地で深刻な熱波が多発しています。記憶に新しいところでは、2026年6月下旬にヨーロッパ各地を襲った歴史的な熱波が挙げられます。ハンガリーで国内最高記録となる42.0℃を観測したほか、ドイツやポーランド、デンマークなど計6カ国で国内の最高気温記録が更新されました。

また、アジア圏でも異例の危険な暑さが続いています。近隣の韓国では2026年8月上旬に42.5℃を観測して国内最高記録を塗り替え、中国でも2023年に52.2℃を観測して国内最高記録を更新するなど、世界各地でこれまでの記録を覆す猛暑が相次いでいます。

極端な大雨と少雨

地球温暖化に伴う気温上昇は、大気中に含まれる水蒸気の量を増やし、集中豪雨や長雨による「大雨」と、長期間雨が降らない「少雨(干ばつ)」の二極化が一段と顕著になっています。

近年はヨーロッパやアフリカ、アジアなど広範囲で深刻な豪雨・洪水被害が相次いでいます。

・ヨーロッパ:2024年10月にスペイン東部などで大雨による大規模な洪水が発生し、230人以上の命が奪われたと伝えられました。

・アフリカ:2024年3月〜9月にかけて東アフリカ北部から西アフリカの広範囲で大雨が続き、2,900人以上の命が奪われました。

・アジア:2025年6月〜8月に中国で大雨により190人以上が死亡したほか、同年11月には台風やモンスーンの影響でフィリピンやベトナム、タイ、スリランカなど東南アジア周辺で計2,600人を超える犠牲者が出たと伝えられるなど、広範囲で甚大な浸水被害や土砂災害が発生しています。

その一方で、別の地域では深刻な少雨や干ばつに見舞われています。

2025年1月〜3月および6月にかけてトルコ周辺やセルビアなどのヨーロッパ中部で降水量が極端に少ない状態が続いたほか、ドイツやオランダなどでも2月〜4月頃を中心に顕著な少雨となり、農作物の収穫減少や深刻な水不足を引き起こしています。

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国際防災の日に考える備え

世界各地や日本国内で激化する異常気象により、「いつ・どこで・誰もが」被害に遭ってもおかしくない状況となっています。毎年10月13日の「国際防災の日」は、こうした気候変動に伴うリスクを正しく認識し、自分や家族の命を守る行動を具体化するための絶好の機会です。過去の経験則や「自分だけは大丈夫」という思い込みを一度捨て、現代の気象災害リスクに合わせた具体的な備えを進めていくことが不可欠です。ここでは、日頃から取り組むべき3つの重要なポイントについて解説します。

家庭内の備蓄の見直し

大規模な土砂災害や洪水が起こると、ライフラインの途絶や物流の停滞が長引く恐れがあります。まずは最低3日分、できれば1週間分の水や食料の備蓄を点検しましょう。日常的に多めに食材を買い置きし、古いものから消費して補充する「ローリングストック」の実践が効果的です。

また、浸水や停電、断水といった不測の事態に備え、水や食料だけでなく日用品や衛生用品も併せて確認・準備しておくことが欠かせません。

準備の内容と主な品目
非常持ち出し品
(すぐに持ち出せる準備)
【主な品目】
飲料水、非常食、貴重品、軍手、常備薬、懐中電灯、携帯ラジオ、予備電池、洗面用具
【必要に応じて】
哺乳瓶、紙おむつ(乳幼児がいる家庭など)
※リュックサック等にまとめ、両手が空く状態で即座に持ち出せるよう準備しておきます。
家庭内備蓄
(避難生活・在宅避難への備え)
【水・食料】
飲料水(1人1日3リットル目安)、食料(最低3日分、推奨1週間分)
※古いものから消費して買い足すローリングストック方式が有効です。
【生活用品】
カセットコンロ、下着、トイレットペーパー、携帯トイレ、非常用バッテリーなど

日頃から持ち出し品と備蓄品を分けて整理しておくことで、いざというときにも慌てず対応できます。

避難行動計画の作成とリスクの把握

気象災害から命を守るには、ハザードマップで自宅周辺の浸水や土砂災害リスクを事前に把握しておくことが大切です。危険度に応じて「いつ・誰が・どこへ避難するか」を時系列で整理した「マイ・タイムライン(避難行動計画)」を作成しておきましょう。「警戒レベル3の段階で高齢者や子どもと同伴で避難を開始する」など、行動パターンをあらかじめ家族で共有しておくことが迅速な避難につながります。

防災情報の活用

災害時には、気象庁や自治体が発信する情報を正しく理解し、自主的かつ正確に入手することが重要です。まずは危険度の高まりを視覚的に確認できる「キキクル(危険度分布)」や自治体の避難情報の仕組みを把握しておきましょう。

スマートフォンの防災アプリやLアラート、地域の防災メールなどを事前に設定し、気象状況が悪化する前から自発的に情報を受け取れる環境を整えておくことも大切です。

まとめ

地球沸騰化時代を迎え、世界中で気象災害が激甚化しています。過去の経験則や「自分は大丈夫」という思い込みを捨て、最新の気象情報を取り入れた自発的な行動が重要です。国際防災の日をきっかけに、家庭での備蓄やハザードマップでの危険度確認、避難行動計画(マイ・タイムライン)の作成を行い、日常的な防災対策をアップデートしましょう。

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<執筆者プロフィル>
田頭孝志
気象防災アドバイザー(国土交通大臣委嘱)

田頭気象予報士事務所代表。愛媛の気象予報士・防災士。防災や気象関連の記事執筆をはじめ、テレビ番組の監修、防災教材開発などを行う。BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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