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【60代エンタメ】「何歳からでも挑戦できる!」柚希礼音がダンスで表現する、葛飾北斎90年の「情熱」

  • 2026.10.1

ダンス、演劇、音楽を融合させる新たな舞台作品『PASSION ― 北斎の描く夢 ―』が、2026年10月、横浜赤レンガ倉庫で幕を開けます。描くことで夢を追い続け、約90年の生涯をかけて「まだ見ぬ景色」を求めた葛飾北斎。その人生を、ダンスと演劇、音楽によって描き出す本作。柚希礼音さんが演じるのは北斎を突き動かした「情熱」「理想」です。


宝塚歌劇団の星組トップスターを経て、退団後も舞台を中心に幅広い表現に挑戦してきた柚希さん。今回は本格的なダンスを軸に、言葉や歌だけではない「身体による表現」に挑みます。北斎の生き方に自身を重ねながら、柚希さんが語った、表現への思いとは——。

「もうこれでいい」はない。晩年も向上心を燃やし続けた北斎に、自分自身を重ねて

「ダンス、パフォーマンスで『情熱』を表現するというのが、本当にうれしい機会だなと思いました」
今回のオファーを受けたとき、そう感じたという柚希さん。北斎を演じる大貫勇輔さん、北斎を取り巻く世間や常識、現実の価値観を担うKELOさんという共演者にも、大きな期待を寄せています。
 
「お二人と一緒にできることで、どんな化学反応が生まれるのか。お稽古をしながら刺激を受けて、どんどん高みを目指していけるのではないかと思っています」
柚希さんが北斎について調べるなかで、強く心を動かされたのが、その生涯にわたる向上心でした。
 
「北斎さんは、亡くなる前にも『あと5年、天が命をくれたら、本当の絵師になれたのに』というようなことを言っているんです。いつまでも自分を『もうこれでいい』とはせず、ずっと理想に向かって描き続けた。その姿が、芸事を続けている私たちにも通じるものがあるなと強く思いました」
 
北斎は、決して順風満帆な人生を歩んだわけではありません。浮世絵師として思うように芽が出ず、さまざまな画法に挑み、何度も試行錯誤を重ねました。生活面でも決して器用な人物ではなく、部屋が片付けられなくなると引っ越してしまったという逸話も残っています。
 
「絵を描くことしかできない人なんですよね。でも、そんな人が絵だけを描き続けて、70歳ぐらいになって、ようやく『動植物なら人並みに描けるようになったかな』というところまでいく。簡単にできたものではないと思うと、より感動します。そして、それでも満足しなかったというところも、すごく心にくるんです」
 
失敗や挫折を繰り返しながら、それでも尽きることのない「描きたい」という思いこそが、柚希さんが考える北斎の「情熱」です。
 
「自分自身にもいろんなメッセージをくれそうな作品だと思っています。お稽古をしながら、私もいっぱい勇気をもらうんだろうなって」

なぜダンスで表現するのか?柚希礼音が徹底的に調べ上げた北斎の素顔

北斎の「情熱」を、どのようなパフォーマンスで表現するのか。稽古を前に、柚希さんは北斎という人物を徹底的に研究し、自分の身体に落とし込もうとしています。
 
「ダンスは、お客様の解釈も自由で、何通りもできるものですよね。たとえば『怒り』を表現するとしても、その中にはいろんなものがある。その怒りにどれだけのものを込められるか。北斎の葛藤や苦しみ、いろんなものを理解しないとできないと思うので、とにかく徹底的に調べています」
 
「それを自分の細胞や血、自分自身の何もかもに通して表現できたら、お客様に伝わるんじゃないかと思っています。思いっきり気持ちを込めて身体で表現してみたいですね」

写真右から、柚希礼音さん、大貫勇輔さん、KELOさん。

男役を経てたどり着いた境地——「性別を超え、ひとつの人間を演じ切る」

柚希さんが演じるのは、男性である北斎を突き動かした「情熱」です。男性である北斎の情熱を女性である柚希さんが表現することについて伺うと——。
 
「宝塚で男役をやっているとき、最終的には男も女もなく、人間としての表現なんだということに気がつきました。退団後、女性の役をいただくようになってからは『女性ってどうやって歩くの?』というところから始めましたけど、結局、女性というよりも、演じるのは人間なんです」
 
まもなく始まる稽古に向けて、現在は身体の準備中。
「久しぶりにしっかりと踊るので、バレエやピラティスで身体を整えています。そして、ダンスで表現するには、心が満タンじゃないとダメだと思うんです」
 
柚希さんにとって「心を満タンにするもの」とは、「北斎の欲望とか、悔しさとか、何かを求める気持ち」。
「もういっぱい言いたいことがある状態で、始められればいいなと思っています」
 
かつて宝塚でナポレオンを演じたときにも、同じような思いで役に挑んだ経験があるそうです。
 
「毎日公演しているなかで、ナポレオンが感じている熱い葛藤を、いかに高めていけるかが課題でした。伝えたい思いがあっても、自分が元気じゃないと表現できない。しっかり睡眠をとって、体力もしっかりある状態で、心が言いたいことで満タンになっていることが大切です」

「また高い壁だ」と思うからこそ、その先の景色を見たい

写真右から、柚希礼音さん、大貫勇輔さん、KELOさん。

本作で振付・演出を手掛けるのは、国内外で高い評価を受けるKAORIaliveさん。柚希さんにとって、念願だったというコラボレーションです。
 
「ひとつの作品としてご一緒するのは初めてです。KAORIaliveさんは、舞台上の照明やセットから振り付けまで含めて、全体的な世界観を作ってくださる方。その世界のなかで、どのように私を作ってくださるのか。そのうえで、私はどう表現したいのかを一緒に作っていけたらと思っています」
 
柚希さんにとっては、今回「新しい表現への挑戦」でもあります。
「どの作品も、新しいことに挑戦している感覚で、毎回『また高い壁だ』って思っています。でも、それを超えた先に最高の景色があると思っているから。恐ろしくもあり、楽しみでもあるんです」
 
そんな柚希さんが、稽古前の段階ですでに感じているのが、共演者たちと北斎との共通点。
「大貫さん、KELOさんも、自分が求めるものを夢中になって追求している人のように思います。自分に満足せずに歩んでいる方たちと一緒に、北斎が求め続けた人生を研究できるのがすごく楽しみです」

「好きなもの」と「向いているもの」は違った。宝塚で広がった身体表現の可能性

北斎の人生に重なるように、柚希さん自身にも「まだ見ぬ景色」を追い続けてきました。意外にも、ひとつの習い事を1カ月も続けられないような子どもだったという柚希さん。転機となったのが、9歳で始めたバレエでした。
 
「隣の家の子がバレエをやっていて、『やってみたい』と言ったんです。でも、『あなたはすぐ辞めるから、1年待ちなさい』って言われて(笑)。それでも1年待ってもやりたかったので、9歳のときにやっと習えたんです。『やりたい、やりたい』という気持ちが積もってできたので、初めてバレエだけはものすごく好きになりました」
 
「私はバレリーナになるんだ」と夢中になっていたものの、成長するにつれて身長が高くなり、組む男性がいなくなっていきます。海外に目を向けようとしていたところ、家族から勧められたのが宝塚でした。そして、宝塚に入ったことで、思いがけず自分の身体の個性が生きる場所を見つけます。
 
「若いながらも、そのときに『好きなものと向いているものって違うんだな』と実感しました。私の肩幅も大きな手も宝塚で生かせたんです。バレリーナになりたかった頃は、すごく身を縮めてやっていたけれど、自分が持っているものが全部生きる男役というものに出会えた」
 
さらに、バレエだけではなく、タップ、日舞、モダンダンスなどさまざまな踊りを学び、芝居や歌にも出会ったことで、自分自身への新たな発見がありました。
「私はバレエが好きなんだと思っていたけれど、宝塚でいろんなことを学んで、『私、バレエだけが好きなんじゃなくて、踊ることが好きだったんだ』と気づいたんです」
 
そして、芝居や歌を学んだことが、現在の身体表現にもつながっています。
「踊りの表現って、ただテクニックだけじゃなくて、心を表現するんだということを宝塚で学びました。この『PASSION』で、いまこれを表現できるのも、本当に私がお芝居をしてきたからこそだと思います」

「何歳からでも、やりたいことを見つけていい」柚希礼音が伝えたいメッセージ

舞台となる横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホールは、舞台と客席との距離が非常に近い空間です。
「私が稽古場で感じるダンサーの方々の圧倒的なすごさを、とても近い距離からお客様にも見ていただける空間なのかなと思います。呼吸とか体温とか、もしかしたら汗も飛んでくるぐらい」
 
その空間のなかで北斎の生涯を追うことで、観客に届けたい思いがあります。
「何歳からでも、やりたいことを見つけてもいいんだろうなと思うんです。もう遅いってことがないんだろうなって。北斎さんの舞台を観たら、そう思っていただけるんじゃないかと思います」
 
北斎が生涯をかけて追い続けた「まだ見ぬ景色」。
 
「ダンスをずっと続けてこられたのは、どの芸事もそうですけど、ゴールがないから。ゴールにたどり着かないことが、最高なんだなって思います」
 
満足しないから、また次を目指す。できないからこそ、もう一度挑戦する。
 
それは、約90年の生涯をかけて筆を握り続けた北斎と、舞台の上で新しい表現を追い続ける柚希さんに共通する「PASSION」なのかもしれません。

公演概要

『PASSION― 北斎の描く夢―』 <ストーリー>
なぜ、そこまで描き続けたのか。名声のためか。金のためか。後世に名を残すためか。そう問われるたび、葛飾北斎は答える。「そんなこと、俺に聞かれたってわからねぇ」。幼い頃から、ただ人とは違うものが見えていた。蝶の羽ばたき。波のうねり。人の心の揺らぎ。世界のすべてが、彼には描くべきものだった。破門。貧困。病。幾度もの挫折。それでも北斎は筆を置かなかった。常識に抗い、限界を超え、約90年の生涯をかけて“まだ見ぬ景色”を追い続けた一人の男。これは、世界的絵師・葛飾北斎の物語であり、同時に、誰の胸の中にもある消すことのできない情熱の物語。
ダンスと言葉、音楽で描く、圧倒的な創造の旅が始まる。 公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/passion2026/
公式X:@PASSION_ent90 公演スケジュール 
<神奈川公演> 
期間:2026年10月22日(木)~11月3日(火・祝)
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
主催・企画制作:ホリプロ <大阪公演> 
期間 :2026年11月7日(土)~8日(日)
会場 :サンケイホール _ブリーゼ
主催 :梅田芸術劇場
お問い合わせ 梅田芸術劇場 0570-077-039(10:00~13:00/14:00~18:00) <スタッフ> 
脚本:藤井清美
音楽:森 大輔
振付・演出:KAORIalive
共同演出:元吉庸泰
美術コンセプトデザイン:大巻伸嗣
美術:石原 敬
照明:横原由祐
音響:山本浩一
映像:KENNY
衣裳:ゴウダアツコ
舞台監督:松井啓悟
原案:舞台芸術作品『The Life of HOKUSAI』
オリジナルプロダクションディレクター:サカクラカツミ
企画・宣伝協力:株式会社グローバルビジネスラボ
監修・スーパーバイザー:杉本 伸(グローバルビジネスラボ)
宣伝美術:山下浩介
宣伝スタイリスト:ゴウダアツコ
宣伝ヘアメイク:SUNVALLEY(野﨑文志/なるみ/高畑璃音) <キャスト> 
大貫勇輔 柚希礼音 KELO
黒川賢也 人徳真央 德市暉尚 松下広敬

この記事を書いた人 杉村道子

カルチャー系を中心にインタビュー記事を執筆しています。趣味は歌舞伎、落語、ミュージカル、ストレートプレイに小劇場と、ひたすら雑食舞台鑑賞。年に何本見ているのか、最近は怖くて数えていません。

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