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【60代映画】北村匠海×宮沢りえが親子役に。映画『しびれ』が描く愛と憎しみの20年

  • 2026.9.25

北村匠海が主演、その母親役を宮沢りえが演じた映画『しびれ』が9月25日(金)より公開。第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品された作品です。 内山拓也監督の実体験をもとに、構想から15年を経て映画化した渾身の自伝的作品。監督の故郷である、冬の寒さ厳しい新潟を舞台に撮影。母と暮らしながらも苦しい生活を送る、ひとりの少年の20年間を追い、やがて大きな愛を知るまでを描いています。見どころを紹介するとともに、映画ライター・映画ごはん研究家の視点から、作中に登場する『食』の見どころもあわせて紹介します

【ストーリー】無言の少年と母が紡ぐ、切なくも深い絆の物語

日本海沿いの町に暮らす少年・大地は、暴君だった父の影響で言葉を発することができない。母の亜樹と二人暮らしだが夜働く母は不在がちで、貧しい生活を送る。やがて叔母の家に身を寄せるも孤独感は深まるばかり。そんな中、大地は自分を捨てた父の行方を追い、生家を訪ねることを決意。そこから彼の運命は、大きく動き始める。

【見どころ1】厳寒の新潟で描くリアルな孤独―主人公「大地」の成長と心の傷

雨や雪に閉ざされ、空も海も鉛色に染まる冬の新潟。妻や息子に暴力をふるっていた父親(永瀬正敏)は、大地が幼い頃に家を出て行き、少年・大地は、狭くゴミだらけの荒れ果てた部屋で母親(宮沢りえ)と2人暮らし。夜の仕事で何日も家を空ける母と、残された大地の過酷な日常を、ドキュメンタリーのように淡々とカメラが映し出します。

大地は学校に通わず、冬用のコートも持っておらず、靴下は穴だらけ。水道や電気は度々止まり、炊事や洗濯、水くみまでひとりでどうにかこなしています。 父親へのトラウマから声を失ってしまっているので、会話は筆談が中心。そのため聞こえるのは大地の息遣い、波の音、ときどき帰ってくる母の声、そして生活音が中心と静か。それでも大地の置かれた状況、生い立ちから目を逸らすことができず、じっとスクリーンを見つめてしまいます。

幼少期、少年期、思春期と3人の大地を演じたのは、監督が「目が決め手だった」と語る榎本司さん、加藤庵次さん、穐本陽月さん。25歳の大地・北村匠海さんへとつながるお芝居に魅了されます。

【見どころ2】宮沢りえが魅せる熱演―夜の街で働きながら葛藤する母の20年

子どもを学校に通わせず、仕事のためとはいえ何日も家を空け、家事も子ども任せ。そんな母親・亜樹を演じたのは宮沢りえさん。いわゆる育児放棄をしている母親ということになるのですが、大地を愛おしむ気持ちも持ち合わせています。 おそらく自身が育った環境ゆえの無知や男運の悪さもあり、必死で生きた結果こうなっている、という部分がないわけではない。そんなグラデーションのある難役を見事に演じ切っています。 大地役は4人のリレーですが、母親役は宮沢りえさん一人。息子の成長に伴う時間経過をどう表現されているかもぜひご注目ください。

【映画とごはん】物語の切なさを際立たせる「レトルトごはん」の食卓

基本的に食事はひとりでしていることが多い大地。少年時代も大人になってからも、炊き立てのごはんではなく「レトルトごはん」が家庭の味のよう。お金がないので魚の缶詰をほんの一口おかずにして、ちびちび食べています。その様子が何とも切なくて胸を突かれます。母はたまに帰宅してもビールを飲むばかりですが、自分の分も大地に食べさせようという気持ちもあるようで、それもまた切ないわけです。 過酷な現実のなかで麻痺していく心と、それでも消えない母子の絆。言葉を失った少年期から大人へ、痛みを抱えながら懸命に生き抜く大地が受け取った愛の形とは? 冬の静寂の中に灯る温かな光を、ぜひ映画館で受け止めてみてください。

作品情報

『しびれ』
2026年9月25日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開
 
監督・原案・脚本:内山拓也
出演:北村匠海 宮沢りえ
榎本 司 加藤庵次 穐本陽月
赤間麻里子 / 永瀬正敏
配給:NAKACHIKA
(c)2025「しびれ」製作委員会

この記事を書いた人 富田夏子

雑誌ライター歴21年。得意分野はエンタメ、フード、ライフスタイル。映画ライター/映画ごはん研究家として、「映画とごはんをつなぐメディア」をSNSで展開し、映画と食に関連する情報や体験をシェアしている。日本映画ペンクラブ会員。 雑誌やWEBへの映画レビュー連載歴は14年で、俳優や映画監督のインタビューも手がける。料理取材の試食は残さず食べる食いしん坊。

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