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マンジャロが肥満マウスの「脂肪を燃やす脂肪」を働かせると判明

  • 2026.9.29
マンジャロが肥満マウスの「脂肪を燃やす脂肪」を働かせると判明
マンジャロが肥満マウスの「脂肪を燃やす脂肪」を働かせると判明 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

「明日から食べる量を減らそう」と決めた夜に限って、冷蔵庫のプリンに呼ばれている気がします。

やせる方法と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは「食べる量を減らすこと」でしょう。

肥満や2型糖尿病の治療に使われている薬「マンジャロ」(一般名チルゼパチド)も、主に食欲を抑えて食べる量を減らすことで体重を落とすと考えられてきました。

しかし、この薬には「食べる量が減ったこと」だけでは説明できない働きがあるのではないか、という手がかりもありました。

そこでバルセロナ大学などの研究チームは、太らせたマウスを使って、その「もう一つの働き」を確かめる実験を行いました。

この薬は体の中で、食欲のほかにどこへ働きかけていたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年1月26日に『Biomedicine & Pharmacotherapy』にて発表されました。

目次

  • 食欲を抑える薬の「本当の力」をどう見分けるか
  • 食べる量をそろえても消えなかった「薬だけの働き」とは?

食欲を抑える薬の「本当の力」をどう見分けるか

食欲を抑える薬の「本当の力」をどう見分けるか
食欲を抑える薬の「本当の力」をどう見分けるか / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

マンジャロは、GIPとGLP-1という2つのホルモンの「受け手」(受容体)に同時に働きかける薬です。

この仕組みで体重を大きく減らせることがありますが、その多くは食べる量が減るためだと考えられています。

ところが、ここには1つ厄介な問題があります。

薬を使ったマウスの体に変化が見つかっても、それが薬そのものの力なのか、単に食べる量が減った結果なのか、区別がつかないのです。

そこで研究チームは、高脂肪のエサで太らせたマウスにこの薬(チルゼパチド)を与えました。

さらに、薬は使わない代わりに、薬を使ったマウスと同じ量だけエサを与えるマウスのグループも用意しました。

こうすれば2つのグループの食べる量がそろうため、違いが出れば、それは薬そのものの働きだと考えられます。

脂肪を場所ごとに細かく調べるこうした分析は、人ではなかなかできないため、マウスが使われています。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(身体に運動したと勘違いさせ脂肪燃焼させる「運動模倣薬」マウス実験に成功!)

ここで知っておきたいのが、体の脂肪には大きく2つの種類があることです。

1つは、脂肪をためこむ役目をもち、肥満になると増えやすい「白色脂肪」です。

もう1つは、エネルギーを使ってカロリーを「燃やす」のが得意な「褐色脂肪」です。

同じ「脂肪」という名前でも、ためる係と燃やす係では、仕事がまるで正反対なのです。

では、食べる量をそろえたとき、薬を使ったマウスの体にはどんな違いが出たのでしょうか。

食べる量をそろえても消えなかった「薬だけの働き」とは?

食べる量をそろえても消えなかった「薬だけの働き」とは?
食べる量をそろえても消えなかった「薬だけの働き」とは? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

まず体重は、薬を使ったマウスも、同じ量だけ食べたマウスも、同じくらい減りました。

ただし、内臓のまわりや皮膚の下の白色脂肪は、薬を使ったマウスのほうがより減る傾向が見られました。

血液中の糖を処理する力は薬を使ったマウスで改善しており、これは食べる量が減ったこととは関係なく起きていました。

一方で、体の炎症が弱まったのは、食べる量が減ったためだと考えられました。

つまり薬の効き目には、「食べる量が減ったおかげ」のものと「薬そのものの力」によるものが混ざっていたのです。

そして、最も目立つ違いが見られたのが褐色脂肪でした。

薬を使ったマウスでは、褐色脂肪の熱を生み出す働きがはっきりと高まっていたのです。

さらに褐色脂肪では、熱を作ることや、栄養を燃やしてエネルギーに変えることにかかわる遺伝子が、より活発に働くようになっていました。

白色脂肪のほうは、主に脂肪の扱い方(脂質の代謝)が変わっており、褐色脂肪とは違う反応を見せました。

これらの変化は薬を使ったマウスだけに見られたもので、食べる量が減ったことでは説明できませんでした。

研究を率いたマリオン・ペイルー氏は、この褐色脂肪の活性化について、エネルギーを燃やす力が高まることや、褐色脂肪が「バトカイン」を作り出すことと関係していると説明しています。バトカインとは、褐色脂肪が作る、代謝によい働きをする分子です。

同氏はまた、活発になった褐色脂肪が体内の糖や脂肪を「燃やす」ことで、体重だけでなく血糖値や血液中の脂肪を下げることにも役立つだろうと述べています。

褐色脂肪を働かせることは、以前から肥満などの治療に役立つかもしれない方法として注目されてきました。

ところが、これまで薬で褐色脂肪を働かせようとする試みは、特に心臓への副作用のために、うまくいかないことが多かったといいます。

ペイルー氏は、チルゼパチドは褐色脂肪を働かせながらもそうした悪い影響がなく、むしろ心臓や血管によい効果を示していると話しています。

ただし今回の結果はあくまで肥満のマウスで得られたもので、人でも同じことが起きるかはまだ確かめられていません。

研究チームは、この結果が今後、人でこの薬の仕組みを確かめる研究に役立つかもしれないとしています。

やせ薬と聞くと「食欲を抑える薬」という印象が強いですが、少なくともマウスでは、それだけでは説明できない働きが隠れていました。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(飯テロされても「食欲を抑えられる」簡単な方法を発見!)

肥満の治療は、食べる量を減らすことと、エネルギーを使う量を増やすことの両方から考える時代に近づいているのかもしれません。

脂肪にも「ためる係」と「燃やす係」がいると知ると、自分のお腹の係決めがどうなっているのか、少し問い詰めたくなりますね。

参考文献

Zepbound and Mounjaro may turn on the body’s calorie-burning brown fat (ScienceDaily)
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/09/260925093210.htm

元論文

Differential effects of the anti-obesity drug tirzepatide on adipose tissues: Brown fat as a key target
https://doi.org/10.1016/j.biopha.2026.119057

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。 好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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