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「全部自分で払うんですか?」自転車で赤信号を渡り車と接触した20代男性→相手の保険会社が治療費を払わなかったワケ

  • 2026.10.26
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「え、じゃあ治療費は全部自分で払うんですか?」

契約者のAさん(20代・男性)は、電話口で私にそう聞き返しました。

Aさんが遭ったのは、自転車で走行中に車と接触し、ケガをした事故です。しかし、相手の保険会社は治療費を病院へ直接支払わない方針でした。

その理由の一つが、Aさん自身の過失です。

今回は、以前に損害保険会社で示談を担当していた私が対応した事故をもとに、自転車側の過失が大きいときに治療費をどうするのかを紹介します。

赤信号の横断歩道へ

事故が起きたのは、信号のある交差点です。

Aさんは自転車で歩道を走行し、そのまま横断歩道へ進もうとしていました。歩行者・自転車用の信号は赤でしたが、Aさんは速度を落とさずに横断を始めます。

そこへ、青信号で交差点を左折してきたBさん(40代・女性)の車が接触。自転車は倒れ、Aさんは打撲や捻挫、切り傷などを負いました。

「確かに信号を無視したのは自分です…。すみません」

Aさんはそう言いました。

自転車でも過失が大きくなる理由

自転車と車の事故では、自転車側の被害が大きくなりやすいことなどから、基本の過失割合も自転車側に配慮して設定されています。しかし、自転車側に交通違反があれば、その分は過失として考慮されます。

今回の交差点には歩行者・自転車専用の信号があり、Aさんが横断しようとしたときは赤でした。

過去の裁判例をもとにした基準では、このように自転車側が赤、左折車側が青の場合、基本の過失割合は60:40(自転車:車)とされています。

一方、青信号で左折したBさんにも、横断歩道を渡る歩行者や自転車がいないか確認しながら進む必要がありました。ドライブレコーダーから徐行していたことは確認できましたが、周囲の安全確認が十分ではなかったとして、Bさんにも過失が生じます。

ほかに過失割合を修正する事情はなく、最終的な過失割合は60:40(Aさん:Bさん)となりました。

相手の保険会社が治療費を払わなかった理由

交通事故でケガをした場合、相手の任意保険会社が治療費を病院へ直接支払うことがあります。これを「一括対応」といいます。

しかし今回、Bさんの保険会社は一括対応をしない方針でした。

そのことを伝えると、Aさんはこう話しました。

「自転車は弱い立場だから、相手が治療費を払ってくれると思っていました」

一括対応は、相手の保険会社に法律上義務づけられたものではありません。そのため、ケガをした側の過失が大きい事故などでは、一括対応がおこなわれないことがあります。

今回のケースにおいても、Aさんの過失が60%と大きく、Bさんの保険会社は一括対応をおこなわない判断をしました。

一括対応がないからといって、Bさん側への損害賠償請求や、自賠責保険への請求ができなくなるわけではありません。ただし、実際に支払いを受けるまでには時間がかかることもあり、当面の治療費は自分で立て替える必要がありました。

「当面の費用がかなり厳しいですね」

Aさんはそうつぶやきました。

治療費を支えた自分の保険

そこで確認したのが、Aさん自身の自動車保険でした。

「自動車保険ですか?確かに入ってはいますが…」

Aさんは、人身傷害保険に加入していました。人身傷害保険は、自分や同乗者などが自動車事故でケガをしたときの損害を補償する保険です。

さらにAさんの契約は、車に乗っていないときの事故も補償するタイプでした。そのため、自転車に乗っていて車と接触した今回の事故も補償の対象になります。

人身傷害保険では、自分の過失割合にかかわらず、約款で定められた基準に基づいて保険金が支払われます。Aさんの治療費も、この保険で補償されることになりました。

「自分の自動車保険が使えるとは思っていませんでした。助かりました」

過失割合は「治療費の窓口」にも影響する

過失割合は、最終的に受け取る賠償額だけでなく、相手の保険会社が治療費を一括対応するかどうかにも影響することがあります。

今回のAさんは歩道を自転車で走っていましたが、自転車は車道の左側を通行するのが原則です。標識などで認められているときや、車道を通ることが危険な場合などには歩道を通行できますが、その場合も歩行者を優先しなければなりません。

信号のある横断歩道を渡るときは、自分が従うべき信号を確認することも重要です。赤信号を無視すれば、自転車側にも大きな過失が生じることがあります。

自転車に乗る機会がある人は、こうした交通ルールを守ることに加えて、自分の人身傷害保険が車外での事故まで対象になっているか、一度確認しておくとよいでしょう。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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