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「またですね」毎年うちの塀に網戸とマットを干すお隣さん。折れたツツジを見せながら、僕が静かに伝えたお願い

  • 2026.9.29
「またですね」毎年うちの塀に網戸とマットを干すお隣さん。折れたツツジを見せながら、僕が静かに伝えたお願い

年の瀬になると、塀に並ぶ網戸

毎年、年の瀬が近づくと、お隣の奥さんが大掃除を始める。

70代くらいの小柄な人で、ご主人と息子さんとの3人暮らしだ。

外した網戸や玄関マットを運び出すと、なぜか決まって、うちの塀に立てかけて干していく。

お隣にも同じくらいの高さの塀があり、手入れの行き届いた広い庭もある。

それでも、毎年のようにうちの塀が使われていた。

しかも、塀ぎわに植えてあるツツジに網戸の枠が当たり、枝が折れることもあった。

僕はそのたびに、正月前に折れた枝を切りそろえてきた。

秋口のある日、お隣に出入りしている庭師さんが、うちの玄関先を訪ねてきた。

「お隣の松を手入れしたいんですが、はしごを置く場所が狭くて。こちらの庭から掛けさせてもらってもいいでしょうか」

「大丈夫ですよ。足元だけ気をつけてください」

作業中、お隣の奥さんは縁側から庭師さんに声をかけていた。

僕が会釈をしても特に反応はなく、そのまま家の中へ入っていった。

少し引っかかるものはあったが、庭師さんが困っているならと思い、その日はそれ以上気にしなかった。

向かいの家も、同じだった

そして、その年の年末。

朝、雨戸を開けると、塀の向こうから網戸の枠がこすれる音がした。

新聞を取りに外へ出ると、向かいのご主人もちょうど門の前に立っていた。

うちの塀に立てかけられた網戸を見て、ご主人が苦笑いする。

「またですね」

僕がそう言うと、ご主人は小さくうなずいた。

家に戻ると、台所にいた妻が顔を出した。

妻は困ったように眉を寄せた。

「今年は言ったほうがいいんじゃない?」

「うん。僕から話してみるよ」

はしごのこととは、分けて伝えた

庭へ出ると、お隣の奥さんは2枚目の網戸をうちの塀に立てかけようとしていた。

枠の下では、ツツジの枝が大きくしなっている。

僕は塀のそばまで行き、声をかけた。

「おはようございます。すみません、うちの塀に網戸やマットを干すのは、ご遠慮いただけますか」

奥さんの手が止まった。

「ここに立てかけると、ツツジの枝が折れてしまうことがあって。毎年、こちらで切っているんです」

奥さんは何も言わなかった。

僕は続けた。

「庭師さんがうちの庭からはしごを掛けるのは、必要なら今までどおり大丈夫です。ただ、網戸やマットはご自宅のほうでお願いできると助かります」

少し間があってから、奥さんは網戸を抱え直した。

そのまま自分の家の塀へ運び、置いてあったマットも一枚ずつ引き取っていった。

向かいのご主人は、新聞を手にしたまま、その様子を静かに見ていた。

翌年の年末。

雨戸を開けると、網戸とマットはお隣の塀に並んでいた。

うちのツツジは、その年は枝を折られることなく冬を迎えた。

新聞を取りに外へ出た僕に、向かいのご主人が小さく会釈をした。僕も同じように頭を下げた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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