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数年前、“胃の手術”をした60代男性→「もう大丈夫」定期受診を止めたところ…“待ち受けていた事態”に「油断しなければよかった」

  • 2026.10.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、麻酔科専門医の松岡雄治です。

「手術から何年も経って元気だし、検査に行かなくてももう大丈夫」―定期受診から足が遠のいたり、最近の立ちくらみや足の違和感を「年齢のせい」「鉄分不足かな」と市販のサプリで済ませて様子を見ていたAさん(60代男性)。

しかし、次第に手足のしびれで服のボタンが留めづらくなり、歩きづらくなって散歩もできなくなって受診したところ、「ビタミンB12欠乏による貧血と神経障害」と判明しました。「油断しなければよかった」といまでも後悔していると語っています。

今回は、胃の手術後などに潜む「ビタミンB12欠乏」が血液や神経にダメージを与えるメカニズムについて解説します。

胃を切ると起きる「血液と神経の材料吸収ストップ」の恐怖

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

胃の細胞が失われると、なぜ数年後になって血液や神経に異常が出始めるのでしょうか。そのメカニズムは以下の通りです。

【血液や神経にダメージが及ぶ悪循環フロー】

  • 「内因子」の消失:胃の切除や強い萎縮性胃炎により、ビタミンB12の吸収に必要な「内因子」というタンパク質が分泌されなくなる。
  • 体内貯蔵の枯渇:ビタミンB12は肝臓に蓄えられているため、術後すぐではなく、4〜5年という時間をかけて徐々に使い果たされる。
  • 血液・神経の障害:材料不足で正常な赤血球が作れなくなり、同時に末梢神経の修復も滞って「しびれ」や「舌炎」が発生するおそれがある。

「市販の鉄分サプリ」では解決しない理由

「貧血気味なら鉄分を補えば治るだろう」と考えるのはごく自然なことです。実際、胃の手術直後は鉄分の吸収が落ちて鉄欠乏性貧血になることも多いため、鉄分を意識されるのは素晴らしい心がけでした。

しかし、胃を切除・損傷してから4〜5年後に訪れる貧血は、鉄分ではなく「ビタミンB12」の不足が原因です。胃切除後には鉄不足とビタミンB12不足が両方同時に起こるケースも少なくありません。いくら鉄分を摂っても、血液や神経の材料であるビタミンB12が全身に届かなければ根本的には改善しません。

また、「胃を全部取ったわけではないから」と安心してしまうのも危険です。胃の全摘手術だけでなく、部分切除やピロリ菌などによる重度の萎縮性胃炎でも、ビタミンB12不足は引き起こされます。

さらに注意すべきは、貧血だけでなく「神経障害」を伴うことです。末梢神経のダメージを長く放置すると、治療を始めても手足のしびれや歩行障害が残ってしまうリスクがあります。「ただの鉄分不足」と甘く見ず、胃の既往歴と向き合うことが大切なのです。

重症化する前に確認すべき3つのサイン

手遅れになる前に、ご自身やご家族で確認していただきたい初期症状や進行のサインは以下の3つです。

1. 手足の先端のしびれ・正座の後のような違和感

足先や指先がピリピリしたり、ボタンが留めづらくなったりする(ビタミンB12不足で末梢神経の修復が滞るため)。 

2. 舌の表面がツルツルになり赤く痛む(ハンター舌炎) 

舌のブツブツが消えて赤く滑らかになり、しょうゆなどがしみる(粘膜細胞の生まれ変わりが止まるため)。

3. 鉄分を摂っても治らない立ちくらみ・だるさ

少し動いただけで息切れや動悸がする(巨大で未熟な赤血球しか作れず、酸素が十分に運べないため)。

違和感や貧血のサインに気がついたら

昔の手術のことがすっかり意識にのぼらなくなっていたり、少しの違和感を「まあ大丈夫だろう」と後回しにするのは無理もないことです。ぜひ今日からできる一番簡単な一歩として、以下の3つの対処法から実践してみてください。

  • 「胃の手術歴(部分切除含む)や重い胃炎」があり、しびれや舌の痛みがあれば、まずは消化器内科を受診する
  • 術後の定期的な血液検査に通い、採血検査などでチェックして早期発見に努める
  • 以前は注射が必要だったが、現在は高用量の飲み薬により、腸の壁から直接吸収させる(受動吸収)ことで手軽に治療できるケースが増えていることを知っておく

    「いつもの貧血」が後悔につながることのないよう、ぜひ日頃から体のSOSに気をつけていきましょう。

※プライバシー保護のため、実際の症例をもとに一部の設定やエピソードを改変・再構成しています。

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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