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6人が語る、6大ジャンルのドラマ論。〜小柳帝とホームドラマ〜

  • 2026.9.30

NHKが代表する大河、朝ドラ、SF、社会派、青春、ホームドラマの6大ジャンル。それぞれの魅力を6人のドラマ好きがリコメンド作品を紹介します。山田太一脚本の『今朝の秋』など、連綿と続いてきたNHKのホームドラマの系譜。2010年代後半から傑作が増えてきたのも特徴だ。翻訳者、ライターの小柳帝が、その魅力を語る。

illustration: Yoshifumi Takeda / text: Mikado Koyanagi

竹田嘉文 イラスト
BRUTUS

語る人:小柳帝(翻訳者、ライター)

こやなぎ・みかど/1963年福岡県生まれ。主な編・著書に『ひとり ALTOGETHER ALONE』『小柳帝のバビロンノート』、翻訳書に『ぼくの伯父さん』。フランス語教室ROVA主宰。京都の書店・誠光社で不定期にドラマ講座を開催。

“家”という舞台で起きる、人と人との物語に心を動かされる

私はテレビっ子でしたし、親の締めつけもかなり緩く、早く寝ろとも言われませんでしたので、大人の観るドラマを小さい頃から親と一緒に観る習慣がありました。ただ、その頃のホームドラマといえば、NHKより、TBSの「東芝日曜劇場」や「木下恵介アワー」の方が記憶に残っていますね。

NHKもこのジャンルに力を入れていたのは間違いないと思いますけど、むしろ私にとってのNHKのホームドラマは朝ドラというイメージでした。

私が中学生の頃、TBSで山田太一さんが『岸辺のアルバム』という革新的なホームドラマを書かれて、その頃NHKでも「土曜ドラマ」や「ドラマ人間模様」のような作家性の強いドラマシリーズが始まります。

向田邦子さんの『阿修羅のごとく』、山田さんの『シャツの店』、また小津安二郎さんにオマージュを捧げたような笠智衆さん主演の『今朝の秋』など、小津映画が好きになったこともあって食い入るように観ていましたね。

NHKドラマスペシャル 『今朝の秋』
ドラマスペシャル『今朝の秋』  1987年に「ドラマスペシャル」として制作。山田太一が主演に笠智衆を迎えて送る三部作の最後の作品。「息子に先立たれるかもしれない老いた父親の哀切が胸に迫ります。息子役の杉浦直樹さんも素晴らしいです」

ホームドラマの逆襲。2010年代後半の名作

ホームドラマは、どの局も一時低迷していましたけど、コロナ禍以降、また面白いものが増えてきたのは嬉しいですね。『富士ファミリー』はコロナ禍以前の作品ではあるのですが、木皿泉さんの書かれる世界が大好きで。富士山の麓の、コンビニとは名ばかりのよろず屋を営んでいる3姉妹の話なんですけど、小泉今日子さん演じる次女はもう亡くなっているんです。

でも、幽霊としてこの家にいついていて、片桐はいりさん演じるおばあさんにしかその姿が見えないとか、面白いんですよね。さらに、次女の夫がその家でまだ暮らしていたり、住み込みのバイトの子を雇ったり、血縁のない人たちが雑居してるところとか、あの名作『すいか』を思い出させてくれるところもあって。

とにかく、木皿さんの世界は、譬(たと)えて言えば、ものが捨てられないような人たちが集まってできている。どんなものにも大切な思い出や人の思いが宿っていて、それがほんの少し私たちを幸せにしてくれるというようなことを教えてくれるドラマなんです。とにかく、お正月にふさわしいおめでたいホームドラマでした。

NHK新春スペシャルドラマ『富士ファミリー』
新春スペシャルドラマ『富士ファミリー』  2016年に「新春スペシャルドラマ」として制作。木皿泉脚本。2017年の正月にも続編が放映された。「ほかにも、薬師丸ひろ子さん、ミムラさん、仲里依紗さんら、木皿ファミリー勢揃いで最高なんです」©NHK/FCC

最近では、何といっても「かぞかぞ」。岸田奈美さんのエッセイを大九明子さんがドラマ化した『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』ですね。

河合優実さん演じる主人公の七実は、中学生の時に父親が亡くなったり、高校生になると母親が車椅子生活を余儀なくされることになったり、そもそも弟がダウン症だったり、10代のうちに家族を支えなければならない状況になるんですが、いつもポジティブで悲壮感がないんですよね。

もちろん、そんな七実だって落ち込むことはあるし、劇中にも出てきたセリフだと思うんですけど、まさにジェットコースターのように気分が上下したりもする。そんな勢いだけで空回りする七実を、大九さんはコミカルに描いてもいるから、全体がオフビートなコメディタッチなんですけど、そこが良いんですよね。関西弁のノリもいい。どこか『カーネーション』の主人公・糸子とも重なる。

とはいえ、お父さんが生きていた頃の記憶がフラッシュバックすると、七実もお母さんも、へたしたら観ている私たちも辛くなる。でもそんな思い出があるからこそ、それが糧になって、何くそというエネルギーやパワーも湧いてくる。

それにしても、やはり河合さんはすごい。個人的には、これが河合さんの最高傑作だと思っています。とにかく誰もがエンパワーされる新時代のホームドラマです。

NHKプレミアムドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』
プレミアムドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』  2023年に「プレミアムドラマ」として制作。岸田奈美のエッセイを大九明子がドラマ化。「思えば、このドラマでも、錦戸亮さん演じる父親が幽霊になって家にいるんですけど、弟にしか見えないんですよね」©NHK/AOI Pro.
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