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シャンブル サンカン ドゥの新作香水は、惜しみないブラックチェリーで記憶の奥へ

  • 2026.9.26

仏アワード受賞の代表作が進化。濃度を高めただけではない新作「エクストレ」の全貌

シャンブル サンカン ドゥの代表作「タバコ メモリーズ」に、新たな表現となる「タバコ メモリーズ エクストレ」が登場する。「タバコ メモリーズ」は2025年、仏フレグランス財団の「Best Niche Fragrance 2025」を受賞し、ブランドの顔ともいえる存在に。その受賞から間もなくして生まれた「エクストレ」だが、単純に濃度を高めただけのバリエーションではどうやらなさそうだ。

「タバコ メモリーズ」をより濃密で親密に再解釈した「タバコ メモリーズ エクストレ」(10月7日より伊勢丹 サロン ド パルファン 2026にて先行発売)52ml ¥57,200 courtesy of brand

出発点となったのは、「まだ語れることがあるのではないか」という思いだった、と創業者兼クリエイティブディレクターのニコラ・ドゥウィットは話す。「オリジナルの『タバコ メモリーズ』は、完成させることがとても難しい香りでした。けれど、どこかで制作を終えなければならない。しばらくすると、まだ語れることがあるのではないか、別の香りでもっと感情を表現できるのではないかと考えるようになったんです」。

スプレーした瞬間から広がる、大胆に増量されたブラックチェリーと濃密な余韻

新作で大きく存在感を増したのが、ブラックチェリーだ。サフラン、ジュニパーとともにトップから鮮烈に立ち上がり、ハートではタバコアブソリュートとアイリスにアニマリックなニュアンスが重なる。ラストはオークモス、バニラ、ラブダナムによるアンバー調の余韻へ。「『エクストレ』では、ダークチェリーを大胆に増量しました。オリジナルでは現れるまでにもう少し時間がかかりますが、エクストレはスプレーした瞬間から一気に広がる。その強さを気に入ってもらえたなら、さらに奥へ進み、香りの物語を探りたくなるはずです」。

調香はオリジナルに続き、ドミティーユ・ミシャロンが担当。「ひとつの記憶が途切れることなく続いていく感覚」を思い描き、ブラックチェリーを惜しみなく重ねることで、より濃密に、より長く肌に残る香りを目指したという。

20年以上にわたりフレグランス業界で経験を積み、シャンブル サンカン ドゥを立ち上げた創業者兼クリエイティブディレクター、ニコラ・ドゥウィット。香料ではなく、物語を書くことから香りづくりを始める。 courtesy of brand

映画『インセプション』を思わせる、夢と現実が溶け合う多層的な香り

ドゥウィットが新作を説明する際に挙げたのが、クリストファー・ノーラン監督の映画『インセプション』だ。夢の中にさらに夢が現れ、現実との境界が揺らいでいく。その多層的な構造を、自身の記憶に重ねる。「これは僕にとっての『インセプション』だったのかもしれません。眠りに落ちる直前に夢を見始めると、どこまでが現実で、どこからが夢なのかわからなくなることがあります。目を覚ました後も、夢の中の何が本当だったのか、はっきりしない」。

記憶は、出来事を正確に保存するものではない。「過去に起きたことを覚えていたとしても、そこには必ず自分自身の視点が介在します。よかったことだけを覚えているときもあれば、部屋に差し込んだわずかな光のような、小さなディテールだけが残ることもあります」。時間と視点によって、薄れるものもあれば、逆に鮮明になるものもある。だから「エクストレ」も、過去の忠実な再現というより、同じ記憶へもう一度降りていく試みと捉えられる。

ホテル52号室の記憶から生まれた、創業者ニコラ・ドゥウィットの最もパーソナルな物語

シャンブル サンカン ドゥの香りづくりは、香料ではなく物語から始まる。20年以上フレグランス業界で経験を積んだドゥウィットは、それを映画制作になぞらえる。「最初に物語を書き、その後は映画監督のような立場になります。香料を俳優に見立て、それぞれの持ち味を最大限に引き出しながら、物語に最もふさわしい配役を考えていきます」。

「タバコ メモリーズ」も、先にあったのは香りではなく、約20ページに及ぶ物語だった。そしてこれは、ドゥウィットにとって最もパーソナルな作品でもある。物語を書いたのは、ブラジル・サンパウロで過ごした最後の夜。街からホテルの52号室へ戻り、ひとり過去を振り返りながら文章を書いた。その部屋番号が、後に「52号室」を意味するブランド名の由来となった。「『タバコ メモリーズ』の根底にあるのは、前に進むためには、一度、自分の過去へ戻らなければならないことがある、という考えです。楽しかった時間も、つらかった時間も、改めて見つめて受け入れることができれば、そこから先へ進めるかもしれない」。

courtesy of brand

サンパウロの記憶に着想を得た、鮮烈なアイコンカラー「レッド52」を纏うボトル

ブランドを象徴する色「レッド52」もまた、サンパウロの記憶から生まれた。着想源は、宿泊していたホテルのルーフトップにある、赤いモザイクタイルのプールだ。「この色が実際のプールとまったく同じかはわかりません。後から画像を検索して確かめたわけではなく、これは僕の記憶に残っている色です」。現実の色を忠実に再現するのではなく、自分の記憶に刻まれた色を形にする。通常のボトルではキャップを彩るその赤が、新作ではボトルそのものを覆う。現実を忠実に再現するのではなく、記憶に残った感覚をかたちにする。その姿勢が、香りとヴィジュアルの双方に通底している。

10月7日より伊勢丹 サロン ド パルファンにて先行発売。香りが描く強さと繊細さの美学

濃密なブラックチェリーから、タバコアブソリュートの静かな存在感へ。「タバコ メモリーズ エクストレ」にも、ドゥウィットが大切にする強さと繊細さのコントラストが息づく。「将来、シャンブル サンカン ドゥを思い出してくれる人がいるなら、『強さ』と『繊細さ』、そして香りの美しさを記憶してもらえたらうれしい。僕が大切にしているのは、強さと繊細さのバランスです」。

過去をただ濃縮するのではなく、時間を経た現在からもう一度その記憶へ戻り、そこに残る感情を新たな物語へ変える。「タバコ メモリーズ エクストレ」は、シャンブル サンカン ドゥが香りを通して描いてきた「記憶」というテーマを、さらに深く掘り下げた新作だ。10月7日より伊勢丹 サロン ド パルファン 2026にて先行発売。オリジナルとともに、ひとつの記憶がどう深められたのか、確かめてみたい。

問い合わせ先/エドストローム オフィス 03-6427-5901

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