1. トップ
  2. ジュエリージャーナリストの本間恵子が綴る、受け継ぐ宝石の記憶

ジュエリージャーナリストの本間恵子が綴る、受け継ぐ宝石の記憶

  • 2026.11.7
MASANORI AKAO[whiteSTOUT]

「物語」という引力

ジュエリーとはそれ自体に、着想源や技の系譜などの物語が宿るもの。所有して身に着け、次代へと継承することにより、新たな物語が誕生します。

ジュエリージャーナリスト、本間恵子さんが語る

煌めきが秘めるストーリー

文=本間恵子(ジャーナリスト)

パーソナルであるほど深い愛着が湧く、特別な存在

ジュエリーは、その日の装いを完成させるもの。では、ジュエリーはファッションの一部なのでしょうか。服に追随する付属品なのでしょうか──。コスチュームジュエリー(アクセサリー)というジャンルがあるように、そうした捉え方もあるでしょう。ですが私は、ファッションとジュエリーとはまったく別の存在だと思うのです。

身に着ける人の外見を華やかに飾り、気分を明るく浮き立たせること。それは服もジュエリーも同じ。けれど、服にはめまぐるしく移り変わるトレンドがあり、ジュエリーのそれは緩やかです。その分、身に着ける人の心の奥深くまでジュエリーは入り込みます。

誕生石やイニシャルをあしらったり、星座や幸運をもたらすモチーフに願いを込めたり、ラッキーカラーの宝石を選んだり。多くの人が、ジュエリーとの間にパーソナルなつながりを求めます。かつては愛の言葉や人生のモットーを刻んだもの、髪の毛を編み込んだものまでありました。ジュエリーが物語を秘め、個人的なものになればなるほど、人はそれを長く大切にしてきたのです。

ジュエリーは、持ち主の人生とともに時間を重ねていくことができます。若い日に自分のために選んだひと粒の宝石が、年月を経て、その人の人生を物語るものになる。あるいは母から娘へ、やがて孫へと受け継がれ、ひとりの人生を超えて物語が続いていく。そんな時間の流れを体現できることも、ジュエリーの大きな魅力です。

もちろん、ジュエリーには着飾る楽しみがあります。でも、それだけではありません。身に着ける人が自分自身の記憶や思いを重ねることで、ひとつのジュエリーは、かけがえのない宝物になっていくのです。

服が「いま」を楽しむものだとすれば、ジュエリーは「いま」を生きながら過去の記憶を抱え、未来へと受け渡されていくもの。装いの彩りだけではなく、人と時との間に物語を生み出すものです。そこにこそ、ジュエリーの魅力があるのではないでしょうか。

ほんまけいこ●ジュエリー・時計ジャーナリスト。美術大学を卒業してジュエリー企業にてデザイナーとして勤めた後、宝飾誌エディターに転身。現在はフリーランスとなって国内外を取材。美術史を学んだ経験から、アンティークジュエリーにも詳しい。

[BVLGARI|ブルガリ]

晴れやかな色彩とともに、心まで照らす輝き
ネックレス[ターコイズ× ダイヤモンド計13.75ct×タンザナイト 27.07ct×PG]参考商品(<a href="https://www.bulgari.com/ja-jp/" target="_blank" rel="nofollow">ブルガリ</a>/ブルガリ・ジャパン tel.0120-030-142) MASANORI AKAO[whiteSTOUT]

一目で惹きつけられる鮮やかな色使いは、「ブルガリ」のジュエリーを語るうえで特筆すべき点のひとつ。この色彩感覚が確立されたのは、1950年代。貴石と半貴石の色の組み合わせを楽しむという、当時では珍しいスタイルを打ち出しました。27.07カラットのタンザナイトが眩いネックレスは、ターコイズやダイヤモンドとともに描くブルーのグラデーションが象徴的。身に着けたときにぱっと華やぐ気持ちとともに、未来に受け継がれていくことでしょう。

ともに時を重ねるにふさわしいピース

物語を生むジュエリー

装いを彩るジュエリーが、いつしか人生の記憶を刻むものに。選んだ日のときめきや積み重ねた歳月、受け継ぐ思いとともに、その輝きは時を超え、その人だけの価値を深めていきます。

[TIFFANY & CO.|ティファニー]

自然美と職人技が織りなす、唯一無二の造形美
リング〈上から〉[アクアマリン8.06ct× ダイヤモンド計2.76ct×YG×Pt]19,745,000円 [サファイア3.27ct×ダイヤモンド 計0.77ct×YG×Pt]30,030,000円 [ダイヤモンド計2.62ct×ルベライト 6.94ct×YG×Pt]21,450,000円(すべて<a href="https://www.tiffany.co.jp/" target="_blank" rel="nofollow">ティファニー</a>/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク tel.0120-488-712) MASANORI AKAO[whiteSTOUT]

ジャン・シュランバージェの創造性を映す3つのリング。最上段の“フォー フラワー”はアクアマリンをダイヤモンドの花が彩る立体的なデザインです。“パニエ”はどの角度からも楽しめるようダイヤモンドを配した繊細なフォルムの中央に、鮮やかなサファイアをセット。“リーブス”は職人が手作業でねじったゴールドの蔓と葉のダイヤモンドのモチーフが、生命力に溢れる曲線美を表現。クラフトマンシップと自然へのまなざしを礎に、その美意識を未来へとつないでいく存在です。

[HARRY WINSTON|ハリー・ウィンストン]

いつまでも眺めていたくなる、芸術作品のようなみずみずしい美しさ
リング[ダイヤモンド計約7.76ct×Pt]144,870,000円(<a href="https://www.harrywinston.com/ja" target="_blank" rel="nofollow">ハリー・ウィンストン</a> tel.0120-346-376) MASANORI AKAO[whiteSTOUT]

約7.09カラットもの大粒のオーバルシェイプ・ダイヤモンドを主役に据えたソリテールリング。両脇にはテーパード・バゲットカットのダイヤモンドを配して、縦長のセンターストーンを優美に引き立てています。ブランドが追求するのは、4Cなどの数値では測りきれない、本質的な美しさ。澄み渡る水を湛えたような透明感と、その内に宿る光が人々を魅了します。普遍の美しさがあるからこそ、時代を超えて愛され、手にする人の人生とともに新たな価値を育んでいきます。

[BOUCHERON|ブシュロン]

ふたつの文化が交差し紡がれる、輝きの系譜
ブローチ[ダイヤモンド計7.97ct×WG]59,796,000円[予定価格](<a href="https://www.boucheron.com/ja_jp/" target="_blank" rel="nofollow">ブシュロン</a> tel.0120-230-441) MASANORI AKAO[whiteSTOUT]

1920年代、インド・パティアラの藩主から特注を受け、「ブシュロン」が考案した149点ものジュエリーにオマージュを捧げた“ニューマハラジャ”。もとはターバンに飾るインド伝統の装身具として誕生したピースを、ブローチ兼髪飾りへ現代的に再解釈しています。しなやかに広がる線は、まるで羽根飾りのよう。そこに緻密に配される大小異なる516石のダイヤモンドが光を受ける度に眩いばかりの煌めきを放ち、時を超えて新たな物語を紡ぎます。

[GRAFF|グラフ]

幸福な人生へ導く、煌めく色鮮やかな原石の力
リング[イエローダイヤモンド5.07ct×ダイヤモンド計2ct×YG×Pt]429,200,000円(グラフ/グラフダイヤモンズジャパン tel.0120-667-687) MASANORI AKAO[whiteSTOUT]

一つ一つのダイヤモンドが秘める個性を軸に、ジュエリーを創造する「グラフ」。こちらは、5カラットの壮麗なイエローダイヤモンドが主役です。カラーグレードは最上級“ファンシービビッドオレンジィイエロー”に認定され、深く鮮明な色調が印象的。原石の繊細な色彩を生かすため、エメラルドカットを採用しています。その両脇でピュアな輝きを放つのが、ハートシェイプダイヤモンド。太陽のような圧倒的な光が、力を授けるお守り的存在です。

撮影=赤尾昌則(ホワイトスタウト) スタイリング=伊藤美佐季 編集=井田青夏 芦川明代 沼田凜々子(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年12月号より

〇選りすぐりの記事を毎週お届け。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ