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「寝たふりしてるよ」混雑する電車で横になって使う乗客。だが、年配女性が静かにかけた一声

  • 2026.9.24
「寝たふりしてるよ」混雑する電車で横になって使う乗客。だが、年配女性が静かにかけた一声

向かい合わせの席で、男性は横になっていた

仕事帰りの夕方、普通電車に乗った。座席はすでに埋まっていて、私は向かい合わせの4人がけの席のそばで、つり革を握って立った。

その4人がけの席に、スーツ姿の男性が横になっていた。片方の座席に体を伸ばし、革靴を履いた足を向かいの座席に乗せている。4人分の席が、男性1人でふさがっていた。

目は閉じていたが、眠っているようには見えなかった。電車が揺れるたびにまぶたが小さく動き、鞄の持ち手を何度も握り直していたからだ。

駅に停まるたびに乗客が増え、通路は肩が触れ合うほどになった。それでも男性は同じ姿勢のままだった。

私の隣に立っていた学生らしい2人組の片方が、連れに小さな声で言った。

「寝たふりしてるよ」

「しっ、聞こえるって」

「だって、絶対起きてるよ」

周りの乗客も男性をちらちら見ていたが、声をかける人はいなかった。私も言うべきか迷っているうちに、2駅が過ぎていた。

年配の女性は、同じ言葉を2度くり返した

大きな駅に着くと、人がどっと乗り込んできた。

その流れから、70代くらいの女性がまっすぐ4人がけの席の前まで進んできた。杖は持たず、背筋のしゃんとした人だった。

女性は横になった男性を見下ろし、よく通る声で言った。

「すみません、座らせてもらえますか」

男性は動かなかった。まぶたがぴくりとしたのが、立っている私の位置からも見えた。女性は少しも声の調子を変えず、もう一度言った。

「すみません、座らせてもらえますか」

車内の話し声がやんだ。近くの乗客が一斉に男性のほうを向き、さっきの学生たちも黙って席を見ていた。

私もつり革を握ったまま、男性の足元に目を落とした。

男性の目が開いた。女性の顔を見て、それから周りを見回し、自分に向いている視線の多さに気づいたようだった。

口を開きかけたが、何も言わずに閉じた。

男性は黙って足を下ろし、体を起こした。鞄を膝に抱えて窓側の席に座り直すと、外の景色のほうへ顔を向けた。

「ありがとうございます。助かります」

女性はそう言って座り、立っていた乗客に手招きをした。

「お二人も、どうぞ。まだ空いてますよ」

「いいんですか。すみません」

学生の片方と、買い物袋を提げた女性が会釈して座った。空いた3つの席は、すぐに埋まった。

女性は私を見上げて、いたずらっぽく笑った。

「言ってみるものね」

「本当ですね」

窓側の男性は、最後まで外を向いたままだった。4人がけの席には4人が座り、電車は静かに動き出した。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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