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高橋惠子さん・71歳「75歳で新しく生まれ変わる予定」人と比べず、いくつになっても自由に生きる

  • 2026.9.19

高橋惠子さん・71歳「75歳で新しく生まれ変わる予定」人と比べず、いくつになっても自由に生きる

いわゆる“陽キャ”ではなく、陰のある役が多かった高橋惠子さん。でも、本当は喜劇がやりたかったのだとか。ひとつのことを積み上げて権威になることに魅力は感じず、「一か所に根を張ることは苦手」なのだとも。とらわれずに自由に生きたいという思いは年齢を重ねるほどに強くなり、「75歳に向けて、また新たな挑戦を考えている」というその胸の内を聞きました。

Profile

高橋惠子さん 俳優

たかはし・けいこ●1955年、北海道生まれ。70年に最後のニューフェースとして大映に入社。同年、映画『高校生ブルース』で主演デビュー。同年の映画『おさな妻』でゴールデン・アロー賞新人賞受賞。その後、映画、テレビドラマ、舞台とジャンルを問わず活躍。ドラマ「太陽にほえろ!」に女性警官シンコ役でレギュラー出演。2012年、『カミハテ商店』で23年ぶりに映画主演。21年、66歳でミュージカル初主演。11月3日~25日、京都・南座にて爆笑喜劇『三婆』に出演予定。

実は「お笑い」好き。爆笑喜劇に挑戦

15歳のとき映画『高校生ブルース』でデビュー以来、71歳の現在まで女優ひとすじに歩んできた高橋さん。これまで映画、ドラマ、舞台などで、さまざまな役を演じてきた。

「若い頃はずいぶん悲劇的な役が多かったんです」とふり返る。

「プライベートではそんなに悲しい人生でもなかったのに……。これってちょっと割に合わない、損しているのでは? と思いましたね。60歳を過ぎたら喜劇だけやりたい、なんて思ったこともありました。さすがにそれは無理でしたけど(笑)」

喜劇のイメージはほぼない高橋さんだが……。

「そう願っていたら11月に喜劇の舞台に出演することになりました」

京都・南座で上演される爆笑喜劇『三婆』。ときは昭和38年、本妻、愛人、小姑らがひとつ屋根の下で暮らすことになる物語だ。高橋さんは本妻役。

「生活の仕方も、価値観も違う人たちがひとつ屋根の下に集まったら、そりゃあ、もめますよね。でも、そのもめ方がおもしろいんです」

もともと「お笑い」は好きで、子どもの頃からテレビで「笑点」や松竹新喜劇の藤山寛美さんにも親しんでいた。

「でも、喜劇はお芝居の中で一番難しいんです。気持ちだけで演じるものではなく、どう見せるかが大事。間合いやお客さんとの呼吸がぴったり合わないとおもしろくならない」

難題にあえて挑戦することが楽しいという。

「隣の人をたたきながら、涙を流して大笑いしてもらいたい。そして、爆笑の中にも思わずホロリとする舞台にできたら」と抱負を語った。

人は人、私は私。先輩らしく振る舞う必要はない

女優歴56年の高橋さん。大ベテランと言っていいキャリアだが、本人にその意識は薄い。

「若い俳優さんたちと一緒のときは、先輩ではなく友達みたいな関係でいるほうが楽しいです。20代の女優さんたちに『同級生の惠子ちゃんだと思って』なんて言っています(笑)」

最初は困惑気味に「そんなことできません」と言われるが、次第に親しくおしゃべりできる関係になっていくという。

「彼女たちの本音も見えてくるし、若い人が持っている情報も教えてもらえて、先輩面しているより、ずっと得るものが多いんですよ」

「後輩に指導するべき」という考えもない。

「先輩らしくするのが似合う人はやったほうがいいけれど、私はそういうタイプじゃない。仕事ぶりを見て感じてもらえれば、と思っています。押しつけるのは好きじゃないし、私自身も『すごいな』とか『ああいう感じ、いいな』と思った先輩から盗んできました」

「人それぞれでいい」「同じである必要はない」という考え方だ。

「『十人十色』という言葉がすごく好き。せっかく違う顔で違う姿で生まれてきたのだから、同じになる必要はないし、その人らしさを生かすほうがいいんじゃないでしょうか。結果、そのほうがうまくいくと思うんです。自分にないものを求めて苦しい思いをするよりも」

人と比べず時間をかけて自分の色を磨く

今でこそ「人とは比べない」「私は私」と思えるようになった高橋さんだが、以前は人と比べて劣等感を感じるときもあった。

「『あんな風にはできない』とか『自分はそこまで到達していない』と落ち込むこともありました。でも、年齢を重ねると共に『その人のようにはなれなくても、自分らしさを磨いていけば、その人と一緒に仕事ができるくらいにはなれることもある』と思うようになりました」

普通3年かかるものを1か月でマスターできる人が、10年、20年、30年後にも優れているかというと必ずしもそうではない。それを高橋さんは長い間の経験から知った。
「『継続は力なり』と言いますが、ひとつのことを続けることによって輝きが増すとか、その人らしさが生まれることがあるんです。だから、時間がかかっても自分の個性を磨いていくほうがいい、と思います」

「うさぎと亀」の亀でもいい。長い目で見れば、時間がかかることも悪くないのだ。

「では、私の俳優としての『個性』は?と聞かれると、『これ』とひとことで言えないのですが、今までいろんな役を演じる中で、自分にはこういう面がある、こういう面もあるということをひとつひとつ発見してきました。だから、『自分の中のいろんな可能性を発見していける』ことが私の個性と言えるのかもしれません。本当はみんないろんな可能性を持っているのに、一部しか表に出ていないように思うんです。それはもったいない。そして私の中には、まだまだ未知の可能性が眠っているんじゃないか、とひそかに期待しています」

75歳でまた新しく生まれ変わる予定

常に“今”を生きている、という。

「ひとつのことを追求してきたわけではなく、いろんな役をやらせていただきました。たとえばずっと時代劇に出続けていたら、その分野では『誰にも負けない』と言える女優になっていたかもしれません。でも私の場合、毎回、新しい挑戦なので、いつも新人のようにゼロからのスタートなんです」

「前回こうだったから、今回も」という経験則が通用しない分、苦労は多い。でも、違う役に挑戦することはまったく苦ではないという。

「新しい演技に挑戦するたびに、毎回、新しい自分に生まれかわる感じがします。役を通して何百もの異なる人生を生きてきた、とも言えます」

違う人格を演じるたびに、「自分の中にあるトラウマのようなものが癒やされてきた」という高橋さん。そして今、役の上の人生ではなく、自分自身を生きる段階に来ていると感じている。4年後に迎える俳優人生60周年は、ひとつの区切りになるのだろうか?
「生涯現役になれるかどうかわかりません。でも、私の中では『その先もある』予定です。世間では老後と言われる年齢かもしれませんが、何か新しいことを始めたい、俳優以外のこともやれたらいいな、と思っているんです」

俳優以外のことというと?

「今、見つけている最中なんですけど、60周年を迎える75歳頃には見つかっているはずです。お声がかかれば女優は続けますが、それとは別のことをそのあたりから始めたいと思っていて。楽しみにしていてください」

「みんなもっと自由でいいと思うんです」という言葉通り、高橋さんは変わっていくことを恐れない。どこまでも自由でしなやかな人だ。4年後にどんな新しい高橋惠子が現れるのか、これからも目が離せない。

【Information】爆笑喜劇『三婆』

2026年11月3日(火・祝)~25日(水) 京都・南座
昭和38年、金融会社社長の武市浩蔵がぽっくり亡くなり、ひょんなことから本妻の松子、愛人の駒代、妹のタキは本宅で一緒に暮らすことになった。最初は犬猿の仲の三人だったが、やがてお互いのよさを学び、心を開いていく。三人のおばちゃまたちの奇妙な共同生活を描いた、爆笑の中にもホロリと泣ける傑作喜劇。

原作:有吉佐和子
脚本:小幡欣治
演出:齋藤雅文
出演:高橋惠子 川中美幸 山村紅葉 ほか
チケットホン松竹☎0570-000-489 https://www1.ticket-web-shochiku.com/t/

撮影/中村彰男 スタイリング/安野ともこ 構成・文/依田邦代

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