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アジア大会が32年ぶりに日本開催へ!JOC常務理事・小谷実可子にインタビュー「この大会がアスリートや地元の方々の誇りになってほしい」

  • 2026.9.19

2026年9月19日(土)~10月4日(日)、愛知・名古屋にて第20回アジア競技大会(以下、アジア大会)が開催される。本大会はアジアの45の国と地域が参加し、空手や武術太極拳、カバディ、セパタクローなど、アジアの地域性を色濃く反映した独自の競技や、まだオリンピック正式競技ではないeスポーツなど、多種多様な競技が実施されることが特徴。

1994年の広島大会以降32年ぶりの自国開催とあって、開催都市の愛知県や名古屋市はもちろん、日本全国が注目する大会になること間違いなしだ。

ウォーカープラス編集部は、アジア大会開幕まで1カ月を切った今、この大会が日本で開催される“すごさ”や日本でのスポーツの価値を、日本のトップスポーツを統括する一大組織・JOC(日本オリンピック委員会)にインタビュー!

ソウル五輪メダリストの小谷実可子さんは現在、JOC常務理事、日本オリンピックミュージアム副館長、オリンピック・ムーブメント推進事業専門部 部会長などを務める
ソウル五輪メダリストの小谷実可子さんは現在、JOC常務理事、日本オリンピックミュージアム副館長、オリンピック・ムーブメント推進事業専門部 部会長などを務める

シンクロナイズドスイミング(現:アーティスティックスイミング)で1988年ソウルオリンピック銅メダリストとなり、現在はJOC常務理事で日本オリンピックミュージアム副館長の小谷実可子さんにお話を伺った。

誰もが名前は知っている「JOC」。アスリートを支えるその役割とは?

――まずは、JOC(日本オリンピック委員会)とはどのような組織なのかを教えてください。

一番わかりやすい取り組みは、オリンピックやアジア大会などの国際的なスポーツ大会に日本代表選手を派遣することです。また、その際は各競技の日本を代表するアスリートたちが最高のパフォーマンスを発揮できるようさまざまなサポートもしていますし、アスリートとともにスポーツの力を多くの方にお伝えし、社会の力としていけるよう国内外で活動を行っています。

また、アスリートと、アスリートを支え、応援する人たちが一体となって盛り上げるためのブランド「TEAM JAPAN」も立ち上げました。日本代表選手もTEAM JAPANの一員ですし、応援してくださる方々も同じく、TEAM JAPANの一人なんです。各競技のアスリートたちの世界での活躍はもちろん、それぞれの挑戦の過程などをSNSなどで発信し、TEAM JAPANを応援していただく取り組みも行っています。

――TEAM JAPANは世界で日本の代表として戦う各競技の日本代表選手などを指す印象がありますが、一般の方もその一員になれるのですか?

はい。私たちは、スポーツをする人、興味を持って応援してくれる人すべてをTEAM JAPANの仲間と考えています。

【写真】小谷実可子さん。ソウル五輪シンクロナイズドスイミングメダリストとして知られる一方、JOC常務理事としても活動する
【写真】小谷実可子さん。ソウル五輪シンクロナイズドスイミングメダリストとして知られる一方、JOC常務理事としても活動する

――TEAM JAPANは具体的にはどんな取り組みをされていますか?

まず、オリンピアンを先生として学校に派遣する「オリンピック教室」という啓発活動を過去15年間で575校5万5000人もの生徒を対象に実施してきました。スポーツの素晴らしさやフェアプレー精神、一生懸命頑張ることなど、オリンピックから学べることを生徒たちに伝える特別授業です。

オリンピック教室で行われた座学の特別授業。講師は、オリンピック東京2020大会 フェンシング男子エペ団体・金メダリストの宇山賢さん (C)JOC
オリンピック教室で行われた座学の特別授業。講師は、オリンピック東京2020大会 フェンシング男子エペ団体・金メダリストの宇山賢さん (C)JOC
オリンピック教室で行われた運動の特別授業。2008年北京オリンピック新体操団体代表の坪井保菜美さんが講師を務めた (C)JOC
オリンピック教室で行われた運動の特別授業。2008年北京オリンピック新体操団体代表の坪井保菜美さんが講師を務めた (C)JOC

また、世界のオリンピック委員会の中で日本だけが行っている催しとして、オリンピックコンサートがあります。これは、生のオーケストラ演奏に合わせてオリンピックの映像を大スクリーンで上映し、さらに、オリンピアンたちが実際に登壇して生の声を届けるというイベントです。

今後は、競技会場などに足を運ぶ機会が少ない子どもたちに向けてハイレベルなオリンピアンやアスリートのパフォーマンスを生で見たり、応援したりできるイベントも始める予定です。

日本オリンピックミュージアムではオリンピックにまつわる展示や映像のほか、企画展を開催。イベント会場としても機能する
日本オリンピックミュージアムではオリンピックにまつわる展示や映像のほか、企画展を開催。イベント会場としても機能する

この(インタビュー会場の)日本オリンピックミュージアムでも、オリンピアンを招いて一般の方々に向けてトークイベントやパブリックビューイングをしたり、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの際は、過去大会の競技ギア、たとえば渡部暁斗選手のスキーや坂本花織選手の衣装などを展示しました。

我々は「オリンピック・ムーブメントの推進」という言い方をするんですけれども、オリンピックの価値を中心に、オリンピックやスポーツの価値を守り、創り、伝えていくことを柱に活動しています。

国立競技場付近に構える日本オリンピックミュージアム。 手前は近代オリンピックの父と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン像
国立競技場付近に構える日本オリンピックミュージアム。 手前は近代オリンピックの父と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン像

――「オリンピックの価値」や「スポーツの価値」と聞くと、少し抽象的に感じるところもあります。小谷さんはどんなところが価値だと考えていますか?

「オリンピック・ムーブメントって何だろう?」と思われるのはとてもよくわかります。アスリートとしてオリンピックに出て、支える側にもなった私からお話すると、やはりオリンピックは世界中のトップアスリートがピークの状態でそこに集まる最高峰の舞台です。

アスリート一人ひとりが人生のすべてをその瞬間にかけているからこそ、見てくださる方々は魅了され、スポーツをしている人たちはそこに憧れ、そうではない方も「頑張ろう」と思える。それこそが、オリンピックやスポーツならではの、かけがえのない魅力であり価値であると思っています。

――ちなみに、小谷さんは選手としても職員としてもJOCに関わっていらっしゃると思います。十数年関わる中で、JOCという組織に変化はありましたか?

かつては強いアスリートを育成し、日本代表としてオリンピックに派遣し、メダル獲得を目指すことがJOCの一番の目的であったのに対し、今はスポーツの力を活かした社会貢献——「アスリートとともに スポーツの力を 社会の力へ」という新たな観点が加わっているのが大きな違いだと思います。競技力はもちろん、“人間力”を備えた選手の育成に力を入れています。

社会や人の心を動かすためには、オリンピックやアスリート個々が持つ魅力があってこそ。その魅力を育み、大きくすることがすなわちオリンピックの価値を作るのです。そしてそれが応援してくださる人々に届くよう、さまざまな形で発信する――そのような循環を作り出すことが、ここ数年のJOCの新たな使命になっていると思います。

名古屋でアジア大会が開催!「アジアのオリンピック」に期待できることとは?

アジア競技大会の意義を語る小谷実可子さん。かたわらには第20回アジア競技大会のマスコット「ホノホン」の姿が
アジア競技大会の意義を語る小谷実可子さん。かたわらには第20回アジア競技大会のマスコット「ホノホン」の姿が

――9月19日からは、愛知・名古屋で「アジア大会」が開催されます。大規模な大会だとはわかるのですが、あらためてどんな位置付けの大会なのでしょうか?

「アジアのオリンピック」と呼ばれるような、アジアのトップアスリートたちが集う国際総合競技大会です。実は、「アジアを制するものは世界を制する」と言われる競技ってすごく多いのです。

たとえばアーティスティックスイミングは、近年のトップは中国で、最近はその中国に日本が勝つこともあり、“アジア=世界トップ”の競技といえます。卓球や柔道、レスリングなどもそうですね。スポーツ競技大会としての価値はとても大きいですし、世界最高峰のアスリートの競技を今回は日本国内で見ることができます。

また、スポーツを軸に地域貢献にもつながる大きな祭典という面もあります。今大会では「ONE ASIA WORLD」という久屋大通公園の名古屋テレビ塔前にメダリストが集まるセレブレーションが行われます。仮に競技の観戦チケットが取れなくても、そこで生のアスリートに声援を送ることができるんです。また周囲では、日本をはじめアジアの文化や食、芸術のフェスティバルのような催しが実施されると聞いています。

ただスポーツを楽しむだけではなく、アジア各国と文化交流が生まれる点も、自国開催の意義の1つだと思います。

――本大会にJOCはどのように関わっていますか?

アジア大会を主催するのはOCA(アジアオリンピック評議会)で、OCAと愛知県や名古屋市が主体となって開催します。JOCはアジア大会に日本代表選手を派遣する立場です。ただ、自国開催ですので開催国のオリンピック委員会として、今回はより責任のある立場として、大会の機運醸成や成功に向けたサポートも行います。

一方で、アジアのさまざまな国や地域から主要な方たちが集まる場ですので、友好関係を深める、アジアの中で日本の存在感を示すため、大会期間中はレセプションや国際交流も行っていくことになります。

――そうした大きな大会が日本で開催されると、私たち市民にとっても、物理的にも時間的にも精神的にもスポーツとの距離が近づきますね。社会に対して大きな意義のある開催だと感じますが、競技者の文脈ではいかがでしょうか?

心強いですよ。時差はないし、食事の心配もないし、本番の雰囲気が想像できるじゃないですか。アスリートにとって本番をイメージできるってすごく大きいんです。日本開催ということで、競技会場自体は初めてでも「名古屋ならこんな気候かな」と、準備がしやすいです。

そして何より地元の大きな声援を受けることができます。2020年の東京オリンピックのときは、(新型コロナウイルス感染症の影響で)残念ながら十分に成し遂げられなかった自国開催ならでは感動を、名古屋で経験できることを楽しみにしている選手は多いと思います。

――「アジアのオリンピック」というフレーズもありましたが、アジア大会ならではの見どころを挙げるなら?

オリンピックには採用されていないものの、アジア大会では実施されるという競技が複数あります。2024年のパリオリンピックで話題になったブレイキンは次のロサンゼルスオリンピックでは採用されなかったのですが、今回のアジア大会では行われますし、カバディ、セパタクローなどアジア大会ならではの競技もあります。そうした競技を見ることができるのはアジア大会ならではの特徴の1つかと思います。

2028年のロサンゼルスオリンピックに向けて、日本のスポーツと社会はどう変わっていく?

――今回のアジア大会が、選手や日本の人々にとってどのような大会になったらうれしいですか?

アスリートにとって、競技によってはオリンピックの予選として位置づけられる大会ですし、自分の力を試す大きな場でもあります。これまでも1998年のバンコクアジア大会の高橋尚子さん(2000年のシドニーオリンピックで金メダル)だったり、2002年の釜山アジア大会で当時の世界新記録を出した北島康介さん(2004年のアテネオリンピックで金メダル)だったり、アジア大会で活躍してそこからいっきにオリンピックの金メダルまでつながる選手ってすごく多いんですね。参加するアスリートの、飛躍のきっかけになる大会になってほしいと思います。

そして地元の方々にとっては、アジア大会が開催されてよかったな、と誇りに思ってもらえる大会になってほしいです。先日も、名古屋で野球をしている息子さんがいる友達から「アジア大会に向けて地元の球場がこんなに立派になった」と写真が送られてきて。そうした変化に触れると、アジア大会がよい影響を与えているんだなと思います。

最高峰の競技を見て、アスリートたちとも近くで触れ合って、アジアの人たちが集まって笑顔でいる様子を見て、自分もスポーツやオリンピック、ほかにも今後、日本で開催する各競技の国際大会に関わってみたいなって感じてくれたらうれしいですね。

オリンピアンとJOC役員、両方の立場を経験する小谷さんが語るスポーツの未来像
オリンピアンとJOC役員、両方の立場を経験する小谷さんが語るスポーツの未来像

――アジア大会の後は、2028年のロサンゼルスオリンピックが控えています。今後、JOCがどのように取り組みを進めていくのか教えてください。

JOCとしてはTEAM JAPANやアスリート、そしてスポーツの価値を、もっともっと高め、伝えていくのが第一です。競技にフォーカスすると、日本は東京2020大会、パリ2024大会ともに世界の金メダル数TOP3に入っています。この競技レベルの高さは本当に誇りですし、この競技力をキープしながらも、アスリート一人ひとりがその価値を社会に貢献できるよう、ともに頑張っていただきたいなと思っています。

――そうした競技力の高さは、社会に対してどんな変化をもたらすと考えていますか?

いちオリンピアンとしてお答えしますと、たとえば野球の大谷選手をはじめ、さまざまなアスリートが世界で活躍することで、海外の方ともその競技やアスリートの話ができたりしますよね。きっと自国のスポーツが強いことで、それを誇りに感じてくださる方は多くいらっしゃると思います。

そして、スポーツはアスリートだけではなく、する、見る、支える、すべての人を巻き込んでいくものだと思っています。応援してくださる一般の人たちもTEAM JAPANの仲間だと思っていますし、アスリートの活躍を見たとき「自分も頑張ろう」「こんな風になりたいな」と生きる活力につながるのならそれはスポーツの社会に対しての大きな力だと思います。皆さんにTEAM JAPANの仲間という意識を持っていただけるような取り組みをどんどん進めていきたいです。

取材=澤田麻依、浅野祐介、国分洋平

文・撮影=国分洋平

編集=澤田麻依

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