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『踊る大捜査線』1997年の第1回を見てみたら…刑事ドラマの“お約束”覆す名作だった

  • 2026.9.19
『踊る大捜査線』シリーズで青島俊作を演じる織田裕二 クランクイン! 写真:高野広美 width=
『踊る大捜査線』シリーズで青島俊作を演じる織田裕二 クランクイン! 写真:高野広美

どんなにヒットし、どんなに長く続いたシリーズにも必ず「第1回」が存在する。長く続いたシリーズであればあるほど、紆余曲折を経て今の姿があるはず。長い歴史をまだ知らない第1回は、いったいどんな形でスタートを切ったのか? 知られざる名作の第1回を振り返る「第1回はこうだった」。今回は1997年1月期に連続ドラマとしてスタートした織田裕二主演の人気シリーズ『踊る大捜査線』第1回をピックアップ!

【動画】ユースケ・サンタマリアらおなじみのメンバーも集結 『踊る大捜査線 N.E.W.メトロポリスを駆け抜けろ!』予告

『踊る大捜査線』は、主人公の刑事、青島俊作(織田)と仲間たちの物語を、時に熱く、時にユーモアを交えながら描いた人気シリーズ。連続ドラマ終了後も人気は根強く、スペシャルドラマが放送されたほか、劇場版はいずれも大ヒットし、スピンオフ映画もすべて興収10億円を超える。中でも2003年公開の第2作「レインボーブリッジを封鎖せよ!」は、昨年『国宝』に抜かれるまで、22年にもわたって実写邦画歴代興行収入第1位に君臨し続ける空前の大ヒット173億円を記録した。そんな『踊る大捜査線』の主人公・青島が14年ぶりに帰ってくる待望の劇場版第5作、『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』が、いよいよ公開された。そんな『踊る』シリーズのスタートはどんな形でスタートを切ったのか?

■ 青島くんの様子が変?

記念すべきシリーズの第1話では、冒頭から早速、織田演じる青島俊作が登場する。しかし、何やら様子が変である。取調室らしき部屋にて、被疑者らしき男に対して、ブラインドごしに室外を見やりながら、どこかぶっきらぼうに話す青島。くわえタバコで男に向かって「お前がやったってことは全部分かってんだ」「デカなめんじゃねえぞ」とスゴめば、「あんまりおふくろさん悲しませんなよ」などと泣き落としにかかる。

初登場から約30年。これだけ「青島俊作」という軽くてひょうきんなキャラクターが浸透したあとからすれば「青島くんどうしたの?」「体調悪いの?」と視聴者がけげんに思うことだろうが、もちろんこれは“素の青島”ではない。これは湾岸署に配属される前の取り調べ試験のようなもので、刑事(デカ)ドラマへの憧れが強すぎな青島の取り調べは、このあと湾岸署幹部らにこっぴどく叱られる、というオチがつく。

裏を返せばこのシーンは、「太陽にほえろ!」や「西部警察」、あるいは「あぶない刑事」など戦後を彩った名作刑事ドラマの数々の流れを踏襲しつつも、それらはとは一味違う作品である、という高らかな宣言と言えるわけだ。

■理想と現実のギャップに苦悩する青年

第1話では、街のヒーローになるという夢をもって刑事になった青島が、理想と現実のギャップに何度もぶつかる様が描かれる。事件に急行するのにパトカー1台使うのにも書類の申請と上司のハンコがいるし、殺人事件のような凶悪事件は、管内で起きたとしても警視庁=「本店」が主役で「所轄」は小間使い。事件が起きてやっと出番かと現場に急行したら、“容疑者”は未就学児だった…などなど。

その中で、深津絵里演じるすみれや、当時まだ無名だったユースケ・サンタマリア演じ、スピンオフ映画では堂々の主役を飾る真下正義、いかりや長介さん演じる和久さん、そして、少年漫画でいうライバル的なエリート、柳葉敏郎演じる室井管理官など、長きにわたってシリーズを共にするメンバーたちが第1話で早くも登場する。

「なんかサラリーマンみたいだな…」と愚痴る青島に、すみれが「警察はヒーローじゃない。公務員」「警察署はアパッチ砦じゃない。会社」とピシャリと言い放つ。これが、第1話で提示される本作の当初の方向性のように感じられる。実際の警察が本当にこうした場所かは、筆者は警察官になったことはないので分からない。重要なのは、それまでの「太陽へほえろ」を始めとする自由な刑事ドラマを逆手に取り、そうした理想像の中の刑事と現実のギャップに苦悩する等身大の青年=青島を描く。それが何より当時は斬新であり、面白かったというのが、30年が経った今でもひしひしと伝わってくるし、30年経っても文句なく面白いのだ。

ほのぼの脱力系刑事ドラマと思いきや…終盤にゾワッ!

■ほのぼの脱力系刑事ドラマと思いきや…終盤にゾワッ!

そんな中でも、第1話はメインとなるのは殺人という凶悪事件だ。のちに自らも警察官の道を歩むことになる柏木雪乃(水野美紀)の父親がホテルで何者かに殺害される。先述したように、管内で起きた凶悪事件に意気揚々と現場に急行する青島だったが、「本店」の刑事たちに軽くあしらわれてしまい、刑事1日目からさまざまな雑用を押し付けられ、思い描いていた理想の刑事像は早くも崩壊する。

その雑用の一つとして押し付けられる形で、事件とはまるで関係なさそうな男・田中(近藤芳正)の取り調べをする青島。相手が以前の自分と同じサラリーマンということでシンパシーを感じたのか、自分は営業マンとしてマンネリした毎日に耐えられなくなり警察官になったが「ここは前と変わんないよ…」と本音を愚痴るのだった。

その後、殺人事件の容疑者が逮捕される。一件落着と思われたが、連行されていくその男が…田中だったのだ。初見の視聴者なら誰もがゾワッとするこのシーン。青島が思わずつめよると、田中は「本当は僕も毎日刺激なかったんだ…」とポツリ。刺激を求めて空き巣を繰り返し、見つかってしまい誤って相手を殺めてしまったのだ。刺激を求めて警察官になった青島と、刺激を求めて犯罪を繰り返した田中。実は2人はネガとポジの関係にあり、青島が田中のようになっていてもおかしくなかった、と言える。

コメディパートが多く、ほのぼの脱力系刑事ドラマとしても完成しそうだが、こうしたエッジの効いたサスペンス要素も盛り込まれる。これが『踊る大捜査線』が歴史的な大ヒットシリーズになった一因だろう。

■大ヒットがもたらした“皮肉”な展開

先述したとおり、本作はこの連ドラシリーズをきっかけに社会現象的な大ヒットを記録。ユースケや水野美紀など、本作以後に人気俳優となった逸材も少なくないし、またいかりやさんは本作での和久さん役で、コメディアンとしてのみならず俳優としても評価を高めた。

ただ、皮肉なことにシリーズの人気拡大とともに、劇場版などで起きる事件のスケールは拡大していき、青島自身の名ゼリフ「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」「どうして現場に血が流れるんだ!」などが示す通り、青島自身、事件にしっかりと絡んでいくことになる。依然として「本店VS所轄」という対立構造は残すが、当初にあった「ヒーローでない公務員刑事ドラマ」のイメージは瓦解してしまったように思える。

亡くなった和久さんは、第1話当時で定年まで後3ヵ月の60歳。気づけば58歳の青島も織田自身も、もうすぐ和久さんの年齢に追いつくことになる。『踊る』サーガに美しいフィナーレがあるとしたら、青島が和久さんのように、ヒーローになろうと気持ちがはやっている新人刑事を、冷静にいさめつつも引っ張っていく、そんな姿なのかもしれない。

(文:神尾祐介)

『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』は公開中。

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