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「じゃあね。元気でね」受付の私に何度も野菜をくれた女性 3年後、最後の会計で告げられた言葉

  • 2026.9.20

受付で目が合うと、いつも笑ってくれた

二十代のはじめ、私は小さな歯科で受付をしていました。

その歯科に、長く通っている年配の女性がいました。親戚の方も同じ歯科へ通っていて、二人で来ることもありました。

受付で目が合うと、その方はいつも先に会釈してくれます。

「今日も寒いねえ。あなた、風邪ひいてない?」

「大丈夫です。そちらこそ、足元気をつけてくださいね」

「ありがとう。転ばないようにしないとね」

そんな短いやりとりが、私は好きでした。

診察を待つ間には、畑や孫の話もよく聞かせてくれました。

「今年は白菜が大きくなりすぎちゃって。食べても食べても減らないのよ」

「それは大変ですね」

「ほんとよ。近所にも配ってるくらい」

ある日の帰り際、その方が足元の紙袋を持ち上げました。中には土のついた大根とねぎが入っています。

「これ、よかったら持っていってね。うちじゃ食べきれないから」

「えっ、こんなにいいんですか?」

「いいの、いいの。遠慮しないで」

数か月後には、今度はじゃがいもの入った袋を差し出されました。

「また余っちゃったから、持っていってね」

「前にもいただいたのに…ありがとうございます」

私が頭を下げると、その方は「食べてもらえるほうがうれしいの」と笑いました。

年の暮れには、会計のあとで小さな紙を一枚、私の手に渡そうとしたこともあります。

「これは受け取れませんよ」

「あら、だめ?」

「お気持ちだけいただきます。いつもありがとうございます」

そう言うと、その方は少し残念そうにしながらも、「じゃあ仕方ないね」と笑ってしまいました。

最後の日、何度も「元気でね」と言われた

そんなやりとりが続いて、3年ほど経ったころです。

その方が歯科へ通うのを終える日が来ました。

最後の会計を済ませても、いつものように次の予約を書くことはありません。予約表を閉じたとき、急に寂しさがこみ上げました。

先生も診察室の入り口まで出てきました。

「長い間、ありがとうございました。どうぞお元気で」

「こちらこそ。先生も体に気をつけてね」

そして、その方は私を見ました。

「あなたも元気でね」

「はい。ありがとうございます。そちらもお元気で」

財布をしまってからも、靴を履きながらもう一度振り返ります。

「ほんとに、体には気をつけるんだよ」

「はい。そちらも無理しないでくださいね」

気づけば私は受付を出て、一緒に玄関まで歩いていました。

「ここまで来なくてもいいのに」

「今日くらい、お見送りさせてください」

その方は少し笑って、「ありがとう」と言いました。

自動扉の外へ出て数歩進んだところで、その方はもう一度振り返りました。

「じゃあね。元気でね」

胸の高さで小さく手を振る姿に、私も手を振り返しました。

扉が閉まったあともしばらく、あの声が耳に残っていました。

今でも冬になると、ときどきあの大根やじゃがいもを思い出します。野菜そのものよりも、「持っていってね」「元気でね」と気にかけてくれた言葉のほうが、ずっと心に残っています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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