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「毛が下にも落ちているみたいで」電車内でシェーバーを使う男性。隣の女性が迷った末にかけた一言

  • 2026.9.20
「毛が下にも落ちているみたいで」電車内でシェーバーを使う男性。隣の女性が迷った末にかけた一言

向かいの席から、聞き覚えのない音がした

朝の通勤電車は、座席が半分ほど埋まったところで走り出した。私は長い座席の端に座り、膝の上にかばんを載せていた。

通路をはさんだ向かいの席には、大きなかばんを抱えた男性が座っていた。

しばらくすると、その男性がかばんの中を探り、小さな機械を取り出した。

次の瞬間、ピッ、ピッ、と短い電子音が2度、車内に響いた。

何の音だろうと思って顔を上げると、男性は電動のシェーバーらしきものをあごの下に当てていた。

「…あれ、今ここで使ってますよね?」

隣に座っていた年上の女性が、戸惑ったように小声で話しかけてきた。

「ですよね。私もびっくりしました」

私も声を落として答えた。

男性はそのまま何度かあごの辺りにシェーバーを滑らせている。やがて膝の上を手ではらうと、細かな毛のようなものが足元へ落ちた。

近くの人たちも気づいたようだった。

本から顔を上げる人もいれば、斜め前の人は荷物を膝へ引き寄せて足元を見ている。

私も「すみません」と声をかけようとしたが、知らない人を注意するのは思った以上に勇気がいる。

何と言えばいいのか迷っているうちに、結局そのまま黙ってしまった。

隣の女性が、迷いながら声をかけた

すると隣の女性が、膝の上のかばんを握り直した。

男性のほうを何度か見たあと、少しためらいながら声を出した。

「あの…すみません」

男性は気づかなかったのか、そのまま手を動かしていた。

女性はもう一度、先ほどより少し大きな声で呼びかけた。

「すみません、ちょっといいですか?」

そこで男性が手を止めた。

「はい?」

女性は男性の足元へ視線を落としてから言った。

「毛が下にも落ちているみたいで…ここではやめてもらえませんか?」

男性は一瞬きょとんとした顔をしたあと、自分の膝と足元を見た。

周囲からも視線が向いていることに気づいたらしい。

「あ……すみません」

小さくそう言うと、すぐにシェーバーの電源を切った。

膝の上に残っていた毛を手元の袋へ入れ、道具も一緒にかばんへしまった。それから足元を確認すると、もう一度「すみません」と小さく頭を下げた。

女性も「いえ」と短く返し、それ以上は何も言わなかった。

男性はその後、窓の外へ顔を向けたままだった。

次の駅に着くまで、あの音が鳴ることはなかった。

電車を降りると、隣に座っていた女性も同じ扉からホームへ出てきた。

私は思わず声をかけた。

「さっき、ありがとうございました。私も言ったほうがいいと思ってたんですけど、なかなか言えなくて…」

女性は少し困ったように笑った。

「私も、声かけるか迷いましたよ。でも、足元に落ちてるのを見たら気になっちゃって」

「そうですよね。ちょっとびっくりしました」

「朝から、なかなかないですよね」

女性はそう言って軽く笑い、階段のほうへ歩いていった。

たった数分の出来事だったが、知らない相手に注意するのは簡単ではない。それでも、強い言葉を使わずに伝える方法もあるのだと感じた朝だった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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